事業所名 :

株式会社あわしま堂

所在地 :

愛媛県八幡浜市

事業内容 :

和洋菓子の製造・販売

従業員数 :

683名

うち障害者数:

8名

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	5	和洋菓子製造ライン
肢体不自由	2	製造現場事務、和洋菓子製造ライン
内部障害	0
知的障害	1	和洋菓子製造ライン
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯
2. 取り組みの内容
3. 取り組みの効果
4. 今後の展望と課題等

事業所外観

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯

（1）概要

　当社は、昭和2年に個人営業として八幡浜市で和菓子の製造、小売を開始した。
　昭和43年に株式会社あわしま堂製菓を設立し、「日本一おいしいお菓子を、日本一安く」をキャッチフレーズに、北は京都、南は鹿児島まで支店を置き、日々顧客に豊かで楽しい生活を提供できるような、喜ばれるお菓子作りに取り組んでいる。

（2）障害者雇用の経緯

　当初は障害者の雇用について検討は進めていなかったが、保護者や学校側の強い要請があり、聴覚障害者を雇用したことがきっかけで、以来、地域に根ざした企業作りとして、地域で生活する障害者の雇用を進め、今後も可能な限り雇用を進めるための取り組みがなされている。
　職務内容に関しては、彼らが作業遂行するにあたって部分的に配慮はしているが、障害によって内容を変えるといった特別な配慮はなされていない。それは彼らを含め、従業員全員が自然体でいられるようにという思いからである。ノーマライゼーションにつながる取り組みは、従業員の仕事ぶりのみならず、職場の良好な人間関係にも反映されている。

作業風景

作業風景

2. 取り組みの内容

（1）職場定着体制の整備

　障害のある従業員の職場定着の推進を目的に、当社では、仕事上の悩みに対応できるよう、職場定着推進チームを設置するほか、従業員を職業生活相談員として任命している。

（2）聴覚障害への取り組み

　聴覚障害のある従業員が勤務する製造部門では、作業時はみな大きなマスクを着用している。作業中の伝達はジェスチャーを使うほか、一時的にマスクを外すことを許可している。また、重要な内容については筆談により伝える。彼らはみな真面目で、自身のハンディを気にすることがあるが、その時は周囲の従業員が話を聞き、お互いが理解し合えるようにしている。

（3）知的障害への取り組み

　知的障害のある従業員に対しては、彼らが理解しやすい作業内容を設定している。中でも、パックに決められた数の和菓子を詰める作業は、手順が決まっている単純作業なので覚えやすく正確に作業できている。
　なお、現在雇用している彼らに関しては、就労し始める時期がちょうど大人としての自意識が芽生え始める時期でもあるので、彼らの悩みを汲み取りながら相談し解決していくことが課題となる。

（4）肢体不自由への取り組み

　肢体不自由のある従業員2名のうち、先天的な障害がある1名は、雇用当初から事務職に配置した。他の1名は、製造現場で作業中に事故により受障したため、本人の状態に適した部署への転属を検討し、職務を作業現場において事務的な仕事に変更した。

　当社の取り組みは、全体的に「障害があるから」という理由で特に区別はしておらず、自然体で雇用しているが、配慮が必要な際にはそれぞれ障害特性に応じた配置転換やコミュニケーション方法をとっており、ノーマライゼーションの精神が働いていることがうかがわれる。

3. 取り組みの効果

　障害者を雇用することにより、社員一人ひとりが「伝える」ことの重要性を再認識することができた。
　障害者雇用に取り組む以前は、大筋での伝達により、受け手が自分なりに理解し作業を進める状況であったが、聴覚障害のある従業員を雇用し同じ社員として働くようになってからは、細かく内容を伝えるようになったり、また、知的障害のある従業員を雇用してからは、具体的に内容を伝えるようになり、彼らのみならず周囲の従業員にも分かりやすく正確な情報を伝えるようになった。そしてこれらの変化が、作業のより円滑な遂行と全体としての士気の高揚につながっている。
　彼らに対する対応が職場全体へと反映されることにより、指導をする側の意識にも変化が見られ、「人に優しい企業」のへの新たな一歩が踏み出された。

4. 今後の展望と課題等

（1）課題と展望

　現在、法定雇用率1.8%を達成し、今後もできる限り障害者雇用に取り組む意向の当社は、目標数値である2.3%を余裕を持って達成できるようにしたい希望を持つ。
　また、現在は知的障害者の雇用が1名にとどまっているが、将来的には特例子会社の設立等も視野に入れながら、知的障害者及び精神障害者を雇用する体制を整える必要があると考えている。彼らを雇用することにより、地域に根ざした企業と障害者に優しい企業への更なる改革を進めていく方針である。
　なお、製造部門では、現在は彼らが機械のメンテナンスに完全に対応できるまでには至っていないが、機械操作の機会を設けることで自身の目で見て徐々に把握してもらうよう取り組んでいる。
　近年、多くの企業においてIT化が進み、OA機器の操作経験に乏しい障害のない人にとって負荷がかかることが多くなってきているのが現状である。障害のある従業員に対してもOA機器等への対応についてはしっかりと指導し、時代の波に乗ることができるようにするということも課題のひとつである。
　また、彼らに対する精神的なフォローも重要な課題である。自分の障害を悩んだり、また真面目ゆえに仕事がはかどらないことに対して苦に思ったりする彼らに対して、いかに精神面で支えとなることができるかについて検討することが今後重要になる。

（2）当社から教えられるもの

　現場はとても明るい雰囲気で、みないきいきと勤務している。職場の人たちがそれぞれの個性を認め合い職業生活を共有しているからなのであろう。
　「彼らが入ったことで職場が変わった」と話す従業員もいる。人はみな、他者との関わりの中で生活している。人との関わりにより生活の質が向上していく。障害の垣根を取り払ったときにノーマライゼーションの精神が生まれる。人との関わりの中から生まれてくるものを大切にすることにより、人はより人として生活することができるのだということを、当社の取り組みはあらためて教えてくれる。