社内全体に聴覚障害の理解が醸成された
- 事業所名 :
- 株式会社ジョー・コーポレーション
- 所在地 :
- 愛媛県松山市
- 事業内容 :
- 総合建設業・不動産業
- 従業員数 :
- 574名
- うち障害者数:
- 6名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 1 情報システム管理 肢体不自由 0 内部障害 5 総務事務、営業、現場作業員 知的障害 0 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯
(1)概要
当社は、昭和25年に愛媛県喜多郡で創業。昭和39年に株式会社中岡組を設立し、平成12年には創業50周年を機に社名を現在の「株式会社ジョー・コーポレーション」(JOW)に変更した。
創業当時は公共工事も請け負っていたが、1988年から民間の事業へのシフトにあたって法人中心に顧客開拓を行い、1991年頃からは民間の個人顧客への営業展開をスタートした。
JOWとは“Japan Overseas architectural Works”の頭文字をとったものであり、「日本から世界を目指す建築総合メーカー」の大志が込められている。ジョー独自の経営方針により当社は急成長を続けており、愛媛県の建設業界のリーダー的な存在となっている。
社訓は、「誠実であれ 謙虚であれ 勇敢であれ」。
経営理念は、「わがグループは、お客様と社員が誇りと喜びを共創できる立派な会社を目指します。」
(2)障害者雇用の経緯
「障害者法定雇用率をクリアしたい」というトップの意向により、本格的に障害者雇用を始めたのは平成17年からである。以前から雇用していた障害のある社員は、中途障害であったため、障害者としての採用ではなかった。平成18年7月現在の雇用率は2.03%である。
当社が初めて採用した、聴覚に障害のある澤田衣里さんは、就職活動の際、求人票から当社の募集を知り、その経営方針や業務内容を確認し入社を希望、ハローワーク松山に相談をした。
採用にあたっては、澤田さんが職務内容をより把握しやすくするよう、愛媛障害者職業センターのジョブコーチ支援事業を活用し、3ヶ月間のトライアル雇用を経て正式採用した。

2. 聴覚障害への取り組みの内容
(1)障害理解のための講習会の開催
澤田さんの雇用に際しては、愛媛障害者職業センターの雇用管理サポート事業を活用し、本社の管理部門の社員全員が聴覚障害について講習を受けるほか、聴覚障害についての学習の場を設けることにより、障害の理解を図った。
なお、平成18年においても、本社管理部門の新入社員と希望者全員を対象とした講習会を開き、聴覚障害についての基礎知識や簡単な日常会話に使われる手話の勉強をするなど職場全体での支援体制が整えられている。
聴覚障害のある社員は現在のところ澤田さんだけであるが、会議や打ち合わせなどで伝達事項がある時には、事前に会議で話される内容が書かれた資料を渡しておいたり、会議中は重要な内容についてはホワイトボードを使い、目で見てわかる対応をとっている。


(2)伝達内容の理解度を把握する
当社は、雇用後1年間は先輩社員が後輩の指導や面倒を見るための「ペアコーチ制」を取り入れており、お互いのキャリアアップにつなげている。澤田さんについては、職務中のやり取りは基本的に口の読み取りやジェスチャーで行うが、彼女がどの程度理解して仕事を進めているかよく分からない時があるため、定期的に理解度を測る試験を行うことにより、澤田さんの理解の状況を先輩社員が把握でき、より適切かつ具体的にアドバイスができるようにしている。
3. 取り組みの効果
澤田さんの雇用後は、職場全体が相手に伝える重要性を強く意識し始めるようになった。
毎朝仕事を始める前の朝礼や、課内や部内でのミーティングなど様々なコミュニケーションの場を設定しているが、彼女の雇用前は、聞いていることを前提に話をしていたが、彼女の雇用をきっかけに、聞いていることを前提に話すのではなく、伝えることを目的に話すよう心がけるようになった。相手のことを考えて確実に伝えることを学んだことが一番の成果である。
また、周りの社員が障害のある社員に対して特別扱いをせず、自然に仲間として接することができるようになったこともポイントである。澤田さんが勤務するフロアにおいて、彼女の障害のことを知らないビジネスパートナーが入口近くにいた彼女に声をかけるような場面においては、近くの社員が自然にカバーすることができるようになった。
澤田さんへの支援は、一見すると彼女だけに対するもののように思われがちだが、他の社員にとっても支援になっているところが多い。会議では、口頭での伝達が中心だったものが、板書することにより周知の徹底を図ることができるようになったほか、声を大きくハッキリと話すことにより、自然と活気がある雰囲気に変わってきた。また、目をしっかり見て話すことも相手との確実な意思疎通が図られる要因となった。これらを現在は意識的ではなく会話の中で自然に取り入れることができるようになったことが最も大きな変化である。
なお、澤田さんのペアコーチである豊田さんは、澤田さんの入社から現在までの成長について、次のように話す。
「ジョー・コーポレーションに入社して1年3ヵ月を迎える澤田さんは、配属先の経理部情報システム課で責任ある業務を任されている。主な業務内容はパソコン設定・メンテナンス、管理表の更新、受取書などの書類のチェック、システムの応答速度の調査など多岐に渡る。
入社当時、文書入力としてパソコンを利用していた経験はあるものの、パソコンの設定やメンテナンスは経験がなく、ゼロの状態からのスタートだった。ペアコーチや仲間の協力のもと業務の一つひとつを大切にこなし、経験から知識をつけ、現在では情報システム課の大きな戦力となっている。
澤田さんの素直な気持ちと向上心は、止まることはなく、現在プリンタなどのマニュアル作りに挑戦し、自分の知識を活かす業務に取組んでいる。澤田さんの成長は、情報システム課の一翼となり皆を支えているのである。
また、ジョー・コーポレーションでは毎月読書した内容や考えをレポートにまとめる自己啓発を行っている。澤田さんも毎月自己啓発に努め、入社当時は4、5行までしか書けなかった文書が今ではしっかりと自分の考えをまとめ、レポート用紙いっぱいにまで書けるようになった。
澤田さんは仕事を通して目標を達成する力を身につけ、自己啓発を通して柔軟な考え方を伸ばし、日々成長し続けている。」

4. 今後の展望と課題等
(1)課題と展望
当社は、企業として成長して行っても、引き続き法定雇用率をクリアしていくことを目標としている。現在、建設業では30%の除外率が設けられているが、将来的には除外率がどんどん引き下げられていくということが決定している。今後、除外率制度が撤廃された際に、余裕をもって法定雇用率をクリアできるよう積極的な障害者雇用を進める意向である。
また、建設業界はなかなか障害者が就職するのが難しい業種でもあるので、個々に適した職務内容を設定し、仕事と趣味や好きなことのマッチングを図っていくことも重要なことだと考えている。当社は雇用後に勉強をして資格を取得するために、試験前には社内で模擬試験を行ったり、社外で研修なども行うといった、日々向上に対する支援体制が構築されているので、社員は一日一日成長することができる。今後も従来のシステムの活用を図りながら、改善の必要のあるところは斬新な発想で転換し、全ての社員にとってより働きやすい環境を設定していく意向を持っている。
(2)当社の取り組みから感じられること
澤田さんの当社における勤務ぶりからは、毎日充実した生活がうかがわれる。彼女は底抜けに明るく常に笑顔で、周囲の社員をパッと明るい雰囲気に変えた。そして、体中から「毎日楽しい!この会社に就職することができて本当によかった!」という雰囲気をかもしだしている。
当社は、徹底した社員教育を行っている。それは、お客に対する最高のパフォーマンスを提供するためだけではなく、社員自身が成長するためにも行っている。障害の有無にかかわらず、共に仲間として働くことでより一層質の高いサービスを提供することができていることが、当社の取り組みからうかがうことができる。
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