2006年度作成

事業所名 :

有限会社池一菜果園

所在地 :

高知県土佐市

事業内容 :

トマトの栽培・加工・出荷

従業員数 :

21名

うち障害者数:

5名

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	1	園芸部門：種まき、下葉切りや収穫加工部門：箱の組立、ジュースの箱詰め、ラベル貼り
内部障害	0
知的障害	4	園芸部門：種まき、下葉切りや収穫、出荷部門：選別、水気とり、箱組立、パック詰め
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯、方針と現況
3. 取り組みの内容
4. 取り組みの効果

1. 事業所の概要

（1）概要・設立経緯

　元々キュウリの施設栽培を行っていた池社長は、県内の量販店から園芸技術を見込まれ、「お客にいつでもおいしいトマトを提供したい」という依頼を受け、平成9年にフルーツトマトを軸にしたビニールハウスによるトマト栽培に取組み始めた。
　平成14年には農業法人として当社を設立し、「池トマト」のブランド名でフルーツトマトを中心に生産、販売を行っていたが、当時の健康ブームの中、デパートから「日本にないトマトジュースを作ってもらいたい」という依頼を受け、平成16年からはフルーツトマトだけを材料としたトマトジュースの開発に取組み始めた。
　「もともとない物をつくるのが好き。自分の経験から予測して、できなかったものをできるようにするのが好き。絶対にあきらめない。」という強い信念のもと、商品化までにいくつかの山場を乗り越えて、平成17年からトマトジュースの販売を開始した。500ml1本2,500円のジュースを1か月で6,000本ほど出荷している。
　当社は、トマトを栽培する園芸部門とトマトジュースを製造する加工部門、トマトを青果のまま出荷する出荷部門の3つに分かれている。
　作業内容は、農業なので季節ごとに異なる。

（2）企業理念

　相手が求めるものを作るのがモットー。消費者も売る側も安心・安全なものを求めている。そのため、減農薬・土耕有機質発酵栽培でのこだわりトマトやトマトジュースを生産している。また、県外を中心とする量販店等との直接取引により、いつでも安心して買い求められるトマトの安定供給を目指している。

2. 障害者雇用の経緯、方針と現況

（1）経緯

　当社が設立してまもなく、附属養護学校の先生から「障害者も仕事ができる人は、自立させなければならない。本人の生きる目標にもつながる。協力してほしい。」という依頼を受け、平成16年に卒業生を1人雇用したことが、障害者雇用のきっかけとなった。

（2）方針

　障害者の雇用については、「障害の有無にかかわらず、雇用条件が合えば一緒に働いて頂く」「障害者といっても、しっかりと教育・訓練をすれば、健常者と変わらない人もいる。それぞれ特性を持っているため、今後とも、働く意欲がある障害者を受け入れ、その能力を発揮できる機会を提供していきたい」という考えのもと、障害者を各部門に配置している。

（3）障害者雇用の状況

　現在、当社が雇用している障害のある社員21名のうち、知的障害者4名、身体障害者（肢体不自由）1名は、①園芸部門では種まき、下葉切りや収穫などのトマトの世話を行い、②加工部門では箱の組立、ジュースの箱詰め、ラベル貼り、③出荷部門ではトマトの選別、トマトの水気などの拭きとり、箱の組立、パック詰め等の作業に年間通して従事している。
　勤務時間は8:00～17:00であり、休憩は昼1時間、午前・午後各10分としている。
　賃金については、採用時は一律時給650円を設定しているが、勤務状況に応じて変更している。

3. 取り組みの内容

（1）採用

　採用にあたっては、養護学校2年生の時に2週間実習生として受け入れ、実習期間中に本人の意欲、勤務態度など確認した上で採用を決定する。

（2）職場配置

　本人の個性や障害の程度を配慮しながら、適性を見極めた上で各部門に配置している。
　なお、各部門においては、「全部門において、安全には気を付け、無理な稼働はさせないようにして」いる。園芸部門においては概して危険度は低いが、高さ30cmの高下駄を履くような危険が伴う作業を行う場合は、彼らには手の届く範囲の高さの作業を任せている。また、加工部門や出荷部門においては、管理者のもとでハサミや機械を使用した作業を任せている。

（3）教育・訓練

　実習期間においては、ジョブコーチの支援を受けている。雇用後は、上司や先輩から実際の作業を通じたOJTを行っている。その一環として、業務日誌を義務づけているが、毎日書くことで勤勉さが身に付くほか、計算や漢字を覚えるといった効果が目に見えて確認することができる。また、社員は若く面倒見が良い人が多いので、障害のある社員は安心感を持ち、意欲的に仕事に取り組むことができる。
　なお、商品の取り扱いや衛生面については、トマトに傷がつかないよう十分注意することや、ジュース加工においては衛生面から完全防護で作業を行うことが求められるため、社員に対する教育・訓練の徹底に加え、管理者を配置し必要に応じて指導や仕事のチェック、フォローを行う。

（4）障害者雇用助成金の活用

　重度知的障害者の雇用に際して、雇用管理のために業務遂行援助者を配置するにあたって「業務遂行援助者の配置助成金」を活用している。

（5）養護学校・保護者との関係づくり

　当社と関係が深い附属養護学校から定期的に実習生を受け入れている。また、生活面における支援が必要な場合は、学校に協力依頼することが多い。
　保護者も熱心な人が多く、本人が働く様子を見に来社することが日常化している。

（6）福利厚生・健康管理

　福利厚生として、年に2回「お疲れ会」を行っている。
　健康管理は、基本的に個人に任せている。通院等の理由で休む場合は、前もって職場に報告してもらうことで一人ひとりの健康に留意している。

4. 取り組みの効果

　知的障害のある社員や、養護学校から職場実習として受け入れている生徒が働く姿を見ていると、彼らが個々に持っている特性に気づく。「時期により異なる外観の色目に合わせたトマトの収穫が誰よりも優れた人がいる。作業スピードが速くなくても、彼ら一人ひとりに何か優れたところがある。」また、「勤務態度に表裏がなく、素直である程度指導を行うことで意欲的に作業に取り組む姿が印象的。」とのこと。
　彼らの隠れた能力が引き出され、意欲を持って働くことができるよう、当社は取り組み続けている。

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