2006年度作成

事業所名 :

金子木工所

所在地 :

高知県土佐市

事業内容 :

パレット・木箱の組立

従業員数 :

21名

うち障害者数:

10名

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	1	木材加工、製品運搬
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	9	木材製品の仕分け、製品運搬
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯、方針と現況
3. 取り組みの内容
4. 今後の課題・展望等

1. 事業所の概要

　当事業所が現在の事業を始めた昭和37年当時は、住居などの材料として木材が多用されていたが、先代が、丸太を製材したときに切り落とされ用途がないため大量に廃棄されていた端材の使い道を考え、ビールや日本酒などを入れる木箱の生産を考案した。当時、県内で木箱生産を行う業者は少なく、取引先は西日本全域に広がり、当社の木箱の生産量は日本一であった。
　その後、先代の事業が現在の金子純久代表に引き継がれた際に、時代は木箱からプラスチック製品へ、またビンから缶へと変容しつつあった。主流がプラスチック製品に変わるまで3年の移行期間があったものの、事業内容は方向転換を余儀なくされた。
　そこで、これまで培ったノウハウを生かし新たに取り組んだのが、輸送や物流などにおいてフォークリフトによる運搬に使う、荷物を載せる台になるパレット（すのこ）の製造である。現在、当事業所の事業内容は、パレット製造が中心となっている。

2. 障害者雇用の経緯、方針と現況

（1）経緯

　先代は、取引先の希望に合わせた長さに部材を切り、20枚ずつ紐で結束する木箱の製造作業に対して、数が数えられ、ビニール紐で束ねることができる軽度の知的障害者を雇用した。
　人手不足解消のための障害者雇用だったが、当初は障害者雇用についてのノウハウは乏しく、彼らが部材を数え間違えて、取引先からクレームがくることもあったが、取引先も少々のことは多めにみてくれた。なにより最初に採用した障害者の勤務態度が良好で、作業能力の向上が見られたことから、その後も障害者を雇用し続けた。
　以後、養護学校から要望を受け、重度の障害者を雇用するなど、障害者の雇用が拡大した。職場内外で様々な問題や課題が発生したが、職場定着推進チームを設置するほか、養護学校や保護者、障害者職業センター、ハローワークなど協力・連携しながら対応を行ってきた。
　現在、彼らは職場に定着し、作業遂行力も向上、事業拡大に貢献している。

（2）方針

　当事業所は、障害の有無にかかわらず全員が労働を通じて社会参加し自立を目指すと同時に、「より良い製品づくり」をモットーに、一致協力して目標達成に向け、地域産業の確立に貢献していくことを目指している。
　基本的に、事業所は、障害者が対応できる仕事があったら、健常者と同様に社会の一員として活躍できるような機会を与えるべき、という考えに基づき、試行錯誤を重ねるうちに、障害者雇用には「障害者それぞれが持つ個性を的確に把握し、障害者を理解することが重要」と考えるようになった。

（3）障害者雇用の状況

　現在、正社員21名のうち、聴覚障害のある社員1名が木材加工やトラックによる製品運搬を、知的障害のある社員9名が各工程における部材の運搬作業や、長さが同じ部材を仕分け、数量を数え結束する仕上げ作業に従事している。他に知的障害者1名を実習生（パート）として雇用している。
　勤務時間は、7:35～16:40で、うち清掃が10分、休憩は昼45分と午前・午後各10分設けている。
　賃金については、日給・月給制の2通りあるが、各々能力に応じて昇給する。
　これまで、家庭事情以外の理由で退職した社員はいない。

3. 取り組みの内容

（1）設備改善

　障害のある社員一人ひとりが特性に適した職務に従事できるよう、「第1種作業施設設置等助成金」を活用し、作業工程の改善や機械機器を導入し、安全対策に配慮しながら職場環境の改善整備を進めている。
　下の写真は、助成金を活用して購入した「木材自動ドブ付け装置」。以前は手作業でカビ止め液を塗布していたが、液の皮膚や衣服への付着を防ぐため購入し、使用している（木材をカビ止め液に浸す）。

（2）採用

　従来から関わりがある養護学校から定期的に実習生を受け入れている。
　採用にあたっては、1～3か月間トライアル雇用を行い、障害者職業センターから派遣されたジョブコーチ等のアドバイスを参考にしながら、本人の適性や意欲を重視し決定する。

（3）職場配置

　運搬作業には力のある男性を配置したり、数を数えることが困難な社員に加工作業を任せるなど、彼らの特性を考慮し職場配置やローテーションを組んでいる。
　また、実際の作業の様子を通して、適性を見極めながら、各社員に必要な支援について判断している。

（4）教育・訓練

　指導員となる社員を配置し、障害のある社員とペアで同じ作業に従事しながら、必要に応じて個別指導、作業チェックやフォローなど担当させることにより、指導員が彼らと同じ立場や目線で同一作業をすることができるため、事故の防止や職場内で一体感を持って取り組む励みにつながっている。

（5）障害者雇用助成金や各種支援制度の活用

　「第1種作業施設設置等助成金」のほか、重度知的障害者の雇用に際し、雇用管理のために業務遂行援助者を配置するにあたって「業務遂行援助者の配置助成金」や、「職業コンサルタントの配置または委嘱助成金」を活用している。

（6）養護学校との連携

　長年のつきあいで関係の深い養護学校から実習生を毎年受け入れている。また、卒業生の社員で職場適応上の問題が生じた場合など、必要に応じて養護学校に連絡、協議し対策を講じることもある。

（7）福利厚生・健康管理

　社員からの積み立てにより、2年に1回職員旅行を行っている。また、年に2回お盆と年末に昼食会を行う。

4. 今後の課題・展望等

　最近はパレットについてもプラスチック製のものが増えているが、プラスチックは焼却すれば有害物質が発生するほか、石油製品はいずれ資源が枯渇して、実際、化石燃料の値段は加速度的に上がってきている状況の中、いずれは木製品が重宝される時代が来ると考えている。
　現在は、「現状にどう対処すべきか模索しながら、新たな需要を開拓してゆくという厳しい努力が要求されている時代であり、その努力を積み重ねなければならない」状況である。
　障害者雇用については、「県内の雇用先があまりにも少ない」なか、「行政が主体となって、障害者が50～100人規模で働けるような場をつくっていくべき」と提言する。
　職場全体で「かれらにできる仕事をみつける、つくる」意識を強く持ち、あらためて周囲の職場を見直してみることが障害者雇用を進める上での第一歩であること、また、彼らの生活の部分に対する社会資源の支援の必要性について、当事業所の取り組みからうかがうことができる。

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