業務遂行援助者を配置し、知的障害者の定着を図る
1. 事業所の概要
平成8年2月1日に設立した当社は、陸舶用タービン並びにポンプ等の製品を製造し、事業も順調に伸んでいる。
平成17年に障害者雇用優良事業所として、社団法人福岡県障害者雇用促進協会会長の表彰を受けた。
2. 障害者雇用の経緯
左半身の上下肢に脳性まひがあり衣服の着脱も困難な友人と、高校生活、寮で一緒に過ごしバスケットやサッカーをやってきた社長は、周りに障害者が居る環境の中で過ごしてきた。
事業所設立にあたって、障害を持って生まれ、また中途で障害を持った人たちに、“何か自分にできることがないか”、“彼らにもできる仕事があるのではないか”、“今は両親がいるが、両親や身内がいなくなったとき、自分達で自立し生活ができるように”との思いから、平成8年2月に障害者の雇用に踏み切った。
3. 特性に応じた対応
字の読み書きが困難で、言葉は“おはよう”という朝の挨拶ができる程度の重度の知的障害者の場合は、任された作業をせずに工場内に段ボール箱で自分の居るスペースを作り、そこにじーっと佇むことが3年程続いた。彼は、自宅から片道8キロメートルの距離を自転車通勤しており、一度も欠勤、遅刻はない。恐らく、どう作業を取り組んでいいのか分からず、不安な自分の気持ちを言葉で表現することが困難であるため、じっと段ボールの中で堪え忍んでいたと思われる。彼に対し丁寧に指導するとともに、一つの仕事が終わったら上司に必ず次の作業を聴くよう習慣づけを行った。
また、年に2回程度、理由もなく何日も欠勤が続き、他の従業員が電話してくれるのを待っている様子が窺える知的障害者に対しては、欠勤を責めるのではなく、仕事する楽しさを教えることにより対応した。
4. 取り組みの具体的な内容
彼らが扱う部材は一つ2トン程と非常に大きいが、作業内容は細かく正確さが厳しく求められ失敗が許されないことから、ジョブコーチの支援をお願いした。
3ヶ月の支援期間では、バリ取り作業において、電動工具を使うとバリが取れない部分があるため、手作業のバリ取りに重点をおいて支援した。
作業のほかに、清掃や片付け等、臨機応変さが求められる部署への配置について、障害者職業センターの職業評価に基づいたアドバイスを受け適応部署に配置するとともに、業務遂行援助者を配置し対応した。
5. 障害者への配慮
入社初日の朝礼の時、社長が全従業員に対して彼らを紹介し、当社の方針で障害のある方でも本人の努力と周囲の理解で十分な戦力になる旨説明を行い、従業員の理解を求めた。
作業指導には、配置した業務遂行援助者が、彼らに目標を設定し、作業が終わると次の作業の指示を必ず仰ぐよう指導するとともに、彼らの作業状況を含め現在の状態を上司に逐一伝えている。
また併せて、家庭への働きかけも行っている、当初は障害のある方を4名雇用したが、本人が行きたくないからと親が代弁し退職した従業員がいた。本人の意向よりも親の考え方が影響しているので、家庭では“やればできる”と励ましを期待している。
彼らの作業ぶりを見ていると、初めは色々な問題があっても現在は立派にやっていることが沢山あることを痛切に感じている。こうしたことを親に伝え、家庭と職場の連携を深め就業意欲を高めている。
6. 取り組みの効果
通勤については、自宅からバス・JRを利用し通勤している従業員、また片道8キロメートルの距離を自転車で通勤している従業員がいるが、それぞれ通勤は自立しており欠勤もほとんど無い。
作業については、部材・製品の移動作業、手や電動工具等を使用したバリ取り作業は几帳面さを発揮し完璧に遂行している。加えて真面目で粘り強く作業も早いことから、彼らがいないと他の従業員も困るほど作業チームの一員として位置づけられている。
彼らを雇用する以前は、一人の従業員が作業の準備から加工・バリ取り清掃等を行っていたが、現在は作業の段取りや作業工程が早くなり、作業の効率化が図られた。
7. 今後の課題・展望
将来的に、障害のある方の雇用を増やしていきたいと考えている。また障害の有無で分け隔てなく、職務に見合った給料を支払うというのが当社の障害者雇用の基本姿勢である。
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてユミルリンク株式会社提供のCuenote(R)を使用しております。
