青果物卸売業での知的障害者の雇用の取り組み
~障害特性を生かした職場配置~

1. 事業所の概要
青果物卸売業である当社は、昭和39年に個人商店として創業、事業の拡大に伴い従業員も増加し、昭和45年に有限会社として設立。国道と鉄道が交わる交通の要衝であるほか、肥沃な丘陵による野菜やみかんの特産地において青果物移出、卸売業を展開しており、県内外に2ヶ所(島原市・佐賀県杵島郡)営業所を設置している。販路は主に北海道・東北など全国の量販店及び青果市場で、他に長崎県学校給食会に納めている。
社長の信念「仕事は地域に貢献すべきだ」に基づき、長崎県と佐賀県で生産される農産物を中心として取り扱い、地元産業への貢献や事業を通じた雇用創出を図っている。
なお、青果物の取り扱いは出荷シーズンにより仕事量が大きく変動するため、季節労働者や臨時の人手を要することが多い。
主な設備
みかん選果機、玉ねぎ選果機、冷蔵庫3室、計量秤、30トントラックスケード、ラインをつなぐコンベアー、4トントラック2台、3トントラック4台、フォークリフト2台
作業工程
引き取り搬入、青果物のベルトコンベアー投入、選別、計量、ダンボール詰め、ホットメルト(接着剤)止め、商品のパレット載せ、搬出
2. 障害者雇用の経緯
ハローワークに一般求人を出した折り、障害者担当職員から障害者雇用の依頼を受けた。多少の不安もあったが、ボランティアで家族ともども彼らと接した経験があったことから、社長の新しいものへ挑戦したいという気持ちで、KさんとSさんの2人の知的障害者を面接し、採用を判断した。
Kさんについては、初めての障害者雇用であった。平成12年に採用と併せてハローワークから職場適応指導を受けた際、知的障害の特性などの説明を受け大変参考になった。また、本人も激励を受けながら上司や周りの従業員への対応を学んだ。
Sさんについては、公共職業安定所の障害者担当の同行紹介により面接を行った。その折り本人の行動特性や、対応方法について詳しく説明を受けた。簿記3級、普通自動車運転免許などの資格を有しているが、遂行能力に課題があることを理解したうえで、平成13年に採用した。時間をかけて指導していけば、フォークリフトの運転免許も取れる可能性があると、将来の成長に期待しながらも、無理はさせないよう状況をみて対応している。
2人の雇用以降は、知的障害者の潜在能力を見出すべく、社会で共に暮らしていけるよう願いを込め福祉施設や養護学校から職場実習を受け入れている。
3. 取り組みの内容
(1)職場配置と職務設定
営業所では取り扱いが多品目にわたり作業内容が目まぐるしく変わるため、障害特性を考慮し、Kさん、Sさんともに本社選果場に配置している。
職務については、比較的取り扱いの単純なみかん・馬鈴薯・玉ねぎの3品目を組み合わせ、作業が途切れないようにする。
玉ねぎ | 人参 | 大根 | みかん | 馬鈴薯 | 白菜 | びわ | レタス | ホウレン草 | |
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1月 | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ||||
2月 | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ||
3月 | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | |||
4月 | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | |||
5月 | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ||||
6月 | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ||||
7月 | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | |||||
8月 | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | |||||
9月 | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ||||
10月 | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ||||
11月 | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ||||
12月 | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ | ↓ |
(2)2名の勤務状況
1)Kさん
性格が明るく皆とコミュニケーションをとるのが得意なKさんは、協同作業を行う作業場に配置し、主にフォークリフトで運ばれてきたパレットの青果物をベルトコンベアーに載せる作業を担当させている。

2)Sさん
コミュニケーションが不得意なSさんは、単独で遂行できる作業場に配置し、主にベルトコンベアーで流れてくるダンボールに入れた商品をホットメルトで止め、どこから見ても商品の等階級欄が一目で分かるようにパレットに載せる作業を担当させている。他の従業員が行うと安易に載せてしまうことがあるが、Sさんは非常に正確な仕事を黙々と行う。

(3)保護者との関係づくり
現在、2人とも父親を中心に連絡を取っているので心配はないが、今後については、親御さんがいなくなってからの将来について不安や責任感を感じている。
(4)就労支援機関との連携
職場内外の問題を当社だけで解決することは難しい場合があるため、社会福祉法人障害者就業・生活支援センターの担当者と生活面について相談している。
勤務上の問題が生じた折りには、公共職業安定所や長崎障害者職業センターに連絡し解決する。
4. 取り組みの効果
2人とも取り組みが早く仕事ぶりはまじめで、常に作業に集中している。
当初と較べ、時が経つにつれ仕事に対して関心を持つようになったほか、予定表をよく見ており、当日の作業を考えて自分から段取りをするなど、作業意欲が感じられる。
なお、青果のサイズや品質を等階級別に選別する作業については、当初困難と考えていたが、実際に任せてみると非常に正確に作業できることが確認できた。
また、Kさんは機械が故障して停止した際には、今までの経験から原因を判断し対処できるようになってきた。
5. さいごに
社長は自身の障害者感について、次のように話す。
「彼らの隠れた能力を発見することが多い。今では彼らはその能力をパーフェクトに発揮している。その人の持つ特性を活かす方法を考えると、他の従業員と変わらず期待に応えた作業をする。作業手順は、教えたとおりのマニュアルをきちんと守り、たとえミスをしても正直に認め「人のせいにしない」素直さがある。指導したとおりに成長していく楽しみがある。忙しい時期には残業もしてもらう。労働条件について他の従業員との区別はない。」
社長の言葉(信念)「人は、仕事に関心を持つこと、それが意欲につながる」が企業経営に反映され、その気持ちを受け止めている障害のある従業員の個性をうまく引き出している。
仕事上、障害の有無にかかわらない雇用管理の頼もしい姿勢がうかがわれる。
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