2006年度作成

事業所名 :

農事組合法人根占（ねじめ）生産組合

所在地 :

鹿児島県肝属郡南大隅町

事業内容 :

農場・畜産の管理・運営、販売

従業員数 :

30名

うち障害者数:

17名

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	17	茶・大豆生産、豚・牛等の世話
精神障害	0

目次

1. 事業所の設立・障害者雇用の経緯
2. 障害者の雇用状況
3. 取り組みの内容・効果

1. 事業所の設立・障害者雇用の経緯

　社会福祉法人白鳩（しらはと）会が運営する当事業所は、鹿児島県大隅半島の南端の南大隅町に位置している。典型的な高齢で過疎の町で、強力な基幹産業に乏しいことから、障害者の雇用環境も脆弱であると言わざるを得ない状況の中、町内で知的障害者福祉施設を運営する当白鳩会が利用者の就職へのニーズに対応しようにも雇用先の確保が殆ど存在しない中、自らが障害者雇用の場を創設する以外に道は無いと決断し、当事業所の設立に至った。
　白鳩会が当事業所を設立した理由は、町内で取り組みやすい業種が農畜産業であることに尽きる。当時は社会福祉法人の土地取得に関する規制が非常に厳しく、民間の金融機関からの融資を受けることが困難であったため、集団農業を行うための農地取得を実現するため、農事組合法人として機能するようにした。従来山林が中心であった土地を整備し、現在では248,000m²（東京ドーム約5.3個分）もの規模の農場を運営している。

　立地場所から名付けられた「花の木農場」と呼ばれる農場は当事業所と白鳩会の共同ブランドである。農地内では当事業所が茶畑、大豆畑、牛舎、食堂などを、白鳩会が通所福祉施設や各種作業棟（食肉加工や天然酵母パン）、グループホームなどを運営・管理している。「花の木農場」自体に法人格はないが、そのロゴ&マークを商標登録し、生産される農産物や加工品を「花の木農場」ブランドで販売している。

　人と人との関わり合いにおいて、その人の個性（人格）を理解することが、先ず求められる。当事業所は知的障害者雇用を目的に設立されているため、様々な専門的な方法で非常に高い理解力を生み出しており、経営課題は「障害への配慮」ではなく、「障害者雇用のための利益追求」である。

2. 障害者の雇用状況

　平成18年12月現在、17名の知的障害者を雇用しているが、作業能力が最低賃金の基準に達していない知的障害者については、白鳩会と当事業所との労務委託契約により「実習」として農作業に従事してもらい毎月作業工賃を支払っている。なお彼らの雇用に際しては、白鳩会の職員の支援を受けることが必要不可欠であり、それゆえ安定した障害者雇用が維持できている。

　従業員のSさんは、小さい頃から病弱なため、両親は厳しい運動や肉体労働はさせないようにしており、白鳩会経営の「セルプおおすみ」に入所していた。
　温厚であるが、こつこつと努力を積み上げていくタイプのSさんの、ゆっくりとだが確実に作業能力が高まったことを評価し、平成元年に雇用した。現在は白鳩会経営のグループホームで生活し、食肉加工部門で精肉やハム・ソーセージ造りに従事している。15年ほど経験を積んだベテランで、一緒に働く職員やパートタイマーからも厚く信頼されている。
　「これからも学んでいきたいことはたくさんあります。肉（を切る仕事）にしてもハム（を造る仕事）にしても、嫌な仕事でも進んでやりたいなあと思います。」また将来の生活については、「まだまだ長い年月があるので、（グループホームを出て生活することも）やってみたいなあと思います。」とSさんは話す。

3. 取り組みの内容・効果

（1）生活の場の確保

　他の知的障害のある従業員も、Sさんと同じように労働や人生そのものについて非常に純粋な考えを持っている。彼らの夢や希望がかなうためには、就業の場と同様、生活の場の確保も重要である。平成16年に重度障害者通勤対策助成金（住宅の新築等）を活用し、4名の従業員に生活の場を確保した。過疎地において障害者のための住居を探すことは、物理的な点だけでなく地域住民の意識の点からもなかなか難しいのが現状である。しかし実際に地域生活を始めてみると、住民も少しずつ彼らを受け入れつつある。

（2）取り組みの効果

　社会資源が不足している場所であっても、障害者の地域生活への移行は進めなければならない。30年以上事業を行ってきた当事業所と白鳩会は障害者の地域生活の実現に取り組み実証してきた。各組織が担当する事業を別個に行うのではなく、お茶、ハム・ソーセージ、豆腐といった収穫物を活用した高付加価値な製品造りと、アンテナショップでの販売、食堂の運営と、第一次～第三次産業を複合した福祉型観光農園である。農場内のあらゆる場面で障害者がスタッフと共に活動し、地域住民も福祉を特別意識することなく出入りする時間と空間、雰囲気が当事業所と白鳩会の取り組みにより醸し出されている。
　「花の木農場」をさらに、地域の人々と共に豊かで文化的な職場環境、地域社会へ発展させていく意向である。

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