事業主団体における助成金活用による重度障害者の通勤対策
- 事業所名
- 西胆振心身障害者職親会
- 所在地
- 北海道伊達市
- 事業内容
- 障害者雇用事業所が結成し、障害者の雇用促進と地域生活支援活動を展開
- 従業員数
- ※会員数:正会員73名、特別会員8名
- うち障害者数
- ※会員事業所における障害者数:120名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 120 精神障害 0 - 目次
1. 事業所団体の概要
(1)概要
北海道の湘南と呼ばれる伊達市・・・雪が少なく気候温暖な北海道南西部の町では、気候のみならず人に優しい暖かい町づくりを目指している。
人口3万7千人の小さな町、伊達市では350人を越える知的障害者が就労し、町のど真ん中で堂々と暮らしている。市内の50カ所を越える事業所では150人以上を貴重な労働力として雇用し、企業での就労が困難な高齢の人や障害の重い人は福祉的就労の場である通所施設に通っている。また、彼らは100戸を越える賃貸住宅に仲間や夫婦で暮らしたり一人暮らしをしている。
この人に優しい町伊達市を中心に障害者を雇用している事業所が集まり「西胆振心身障害者職親会」が結成されている。当団体は、雇用主の立場から障害者の雇用を推進するとともに、働きながら暮らす障害者の地域生活を支援することを目的に様々な活動を展開している。
ここでは、当団体の事業内容と「通勤用バス運転従事者の委嘱助成金」を活用した障害者の通勤対策の支援活動を紹介する。
(2)団体結成の経緯
国連は1981年からの10年間を「完全参加と平等」をスローガンとした「国際障害者年」と定め、障害者の社会参加を世界中で推進するよう提唱した。日本もこの呼びかけに呼応し政府、地方自治体、関係領域等の各現場で様々な事業と取り組みがなされた。伊達市でも障害福祉関係者が集まりこの国際障害者年を機として障害者の雇用と社会参加を推進するための支援団体を結成することになった。
当初は伊達市だけの計画であったが近隣市町村も包括していこうということから、北海道の南西部にあたる西胆振6ヵ市町村(伊達市・虻田町・壮瞥町・豊浦町・大滝村・洞爺村、※現在は市町村合併により1市3町)を範囲とし障害者を雇用している事業主や障害者施設、養護学校、関係福祉団体などが加盟し、1981年3月14日に設立総会が伊達市で開かれ当団体が発足した。こういった動きは国際障害者を前後して北海道全域に拡がり、主要都市を含む20以上の地域に地方職親会が設立され、現在23団体の地方職親会が活動している。
また、地方職親会が集まり連合会を組織し、1981年に「社団法人北海道知的障害者職親連合会(法人取得は1988年)」を発足させ、北海道行政から障害者の雇用促進を目的とした事業を受託している。
事業主が支援団体を結成し障害者の雇用促進と社会参加を目的として支援活動を展開しているのは全国でも先駆的な取り組みである。
(3)会員事業所の業種及び主たる事業内容
西胆振地域2市2町の正会員43事業所が、120名の知的障害者を雇用している。その産業別割合では、一次産業が25.7%、二次産業が31.7%、三次産業が42.6%となっている。
(4)当団体の事業概要
年間を通し様々な事業活動を展開しているが、主だった事業は以下のとおり。
①社会自立研修会
管内の就職を目指す障害者施設利用者や高等養護学校の生徒等を対象に、働く上で大切なことや社会人としての遵守事項などを事業主や就職した先輩等から講義してもらう研修会を毎年開催している。
②永年勤続表彰式並びに新規就職者を祝う会
長年にわたり一つの事業所で勤続した方を対象に、永年勤続表彰を授与している。既に三十年表彰者が何名も出ている。
5年を一区切りとし表彰しているため、働く障害者にとって目標や励みとなるほか、事業主にとっても「いろいろ苦労はあったが雇い続けて良かった」と感慨深いものがある。
また、永年勤続表彰式に併せて、養護学校や障害者施設から新規に就職し社会にはばたく人を対象にお祝い会を開催。永年勤続受賞者からはお礼の言葉と新規就職者への激励の言葉が述べられる。毎年この心温まる催しに会員事業主はもちろん市長や市議会議長、社会福祉協議会会長等が臨席し目頭を熱くしている。
③和太鼓サークル「武者太鼓」の育成と支援
当団体の活動方針として、安定した就労を継続するための余暇支援も行っている。和太鼓サークル「武者太鼓」もそのひとつである。当団体の初代会長が中心となり職親会として会員事業所や商店街から寄付を募り、200万円の和太鼓一式を働く障害者のために寄贈した。大太鼓、小太鼓、締め太鼓、ドラ、ホラ貝、鎧甲冑に幟旗・・・今ではサークルのメンバーは男女合わせて約30名となり、武士が開拓した町伊達市の郷土芸能として公共施設の落成式や高速道路の開通式などに演奏し活躍している。
他には、夏季と冬季に管内の働く障害者を対象にレクリエーションも開催している。
④障害者雇用助成金の広報と各種申請事務の援助
事務局では、管内の会員事業所や障害者雇用を検討している事業所を対象に、障害者雇用助成金の具体的活用方法の説明や各種助成金の申請事務を援助するサービスも行っている。
2. 取り組みの内容(通勤手段の確保)
(1)概要
北海道の伊達市を中心とした2市2町における事業所では、150名からの知的障害者を雇用しているが、通勤のための交通網が十分ではない地域では、一般従業員のほとんどが自家用車の通勤となるため、通勤手段の確保ができないと障害者雇用の障壁となる。
当団体では、伊達市郊外や隣接する室蘭市の郊外に立地したバス路線から外れている事業所で働く彼らの通勤手段の確保について、重度障害者等通勤対策助成金(通勤用バス運転従事者の委嘱助成金)を活用し雇用の継続を図った取り組みを行っている。
(2)背景、問題点
伊達市で知的障害者を雇用している50以上の事業所のほとんどが小規模であるが、第一次産業から第三次産業まで多様な業種で幅広く雇用しており、全国から高い評価を受けている。
しかし、通勤手段については、交通網が十分整備されておらず、バス運行が一時間に一本であるなど、通勤手段はほとんど自家用車となっているが、雇用している知的障害者のほとんどは徒歩や自転車により自力で通勤しているのが実情である。バス路線から外れている事業所では、徒歩による通勤には限界があり、バスの運行時間が始業終業時間に合わず適職があっても雇用に結びつかないという事例も多々あり、通勤が彼らにとって雇用の大きな障壁となっている。
(3)取り組みの内容
伊達地方の事業所においては、彼らの通勤手段について、職場の先輩や同僚の自家用車に便乗させてもらったり、出退勤時間を配慮する等で対応してきた。また、5人以上の障害者を継続して雇用している事業所では、3社が通勤用バスの購入助成金や通勤用バス運転従事者の委嘱助成金の活用で対応している。
一方、全従業員が5人以下であり地理的関係から同僚の自家用車の便乗もできない状況で対応に苦慮していた3社については、北海道障害者雇用促進協会から事業所団体でも重度障害者通勤対策助成金の活用が可能との説明を受け、当団体が助成金の申請を行い、通勤手段確保の対応を図り雇用の継続につながった。
①通勤が困難となった事業所事例
国道を民営バスが一時間に一本の割合で運行しており、通勤対策が必要となった事業所3社の状況は以下のとおり。
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②重度障害者等通勤対策助成金の活用
北海道障害者雇用促進協会と相談し、通勤バスの利用者が5人以上になれば事業所団体として重度障害者等通勤対策助成金の申請が可能であるとの説明を受け、障害者120名の雇用実績を持ち四半世紀にわたり障害者の就労支援に活発な事業展開を行ってきた当団体が申請を行うこととした。
活用助成金については、和太鼓サークル「武者太鼓」のメンバーの移送や太鼓の運送用に所有している9人乗りワゴン車を使用し、重度障害者等通勤対策助成金における通勤用バス運転従事者の委嘱助成金を活用することとし、平成17年10月に認定申請書を提出し平成18年1月に受理された。
当団体は法人格を有しない任意団体であるため、特に事業所団体からの申請は全国初とのことであったが、平成17年11月からは、重度障害者等通勤対策助成金制度を活用した通勤バスを使用し、3社で雇用する知的障害者は失職することなく雇用を継続している。




3. さいごに~事業所団体の取り組みの有効性~
通勤のための交通網が十分発達していない地域事情を持っていたり、交通網が整備されていても重い障害のために単独では交通機関を利用できない障害者と、事業所規模が小さく事業所自らが通勤手段の対策を講じることが困難な事業所においては、当団体の取り組みが示した重度障害者等通勤対策助成金を活用し通勤手段を確保する方策は、大変有効であり、今後更に同様の取り組みが増えることが望まれる。
施設長 大垣 勲男
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