事業所名

株式会社ソーシャル・エイド・リサーチ

所在地

北海道札幌市

事業内容

企業部門：重度障害者に対する働く場の提供（コンピュータソフトの企画・開発・販売、コンピュータグラフィックデザイン）
能力開発センター：知的障害者に対する自立支援

従業員数

16名

うち障害者数

2名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	2	電子機器・システム開発、Web製作
内部障害	0
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯（小規模作業所との連携）
3. 取り組みの内容
4. 障害者の雇用状況
5. 障害者雇用の効果と課題

1. 事業所の概要

（1）概要

　2001年1月に創設した当社は、本社が岩見沢市にあり、札幌に営業所を設置している。
　当社は、電子製品開発（製品開発、ASIC開発、基板設計、プロダクトマネージメントなど）、システム開発（アプリケーションの設計開発、既存エンジンでのシステム設計など）、コンテンツ制作（3DCGを利用したコンシューマゲーム用コンテンツ制作、遊戯機器用コンテンツ制作）、コンサルティング業務の4部門から成り立っている。上記4部門はそれぞれに密接に関連しあいそのシナジーがソーシャル・エイド・リサーチのアドバンテージである。従って、従業員は専門知識や技能を求められる一方で様々な分野や事業に関心をもち、提案する力が求められる。

（2）業種

①デジタルコンテンツ制作
②映像・音楽制作及びオーサリング
③Webコンテンツ企画制作等
④アーカイブ・ローカライゼーション（GIS関連の開発・制作、コンピュータ関連技術文書執筆・翻訳、福祉アライアンス）

（3）主たる事業内容

①Web制作
②全文検索NOSY開発・販売
③入札公開システム開発・販売
④RFDIユニット開発・販売
⑤汎用LAI　ASIC開発

（4）経営理念

　当社の使命は、事業活動を通じて環境と生活の質の向上を図り、企業市民として社会の進展に寄与することである。情報技術を通して「人と人」、「人と地域」、「地域と地域」を結び社会の活性化に貢献している。当社が提供する仕組みを通して人のもつ意思や可能性を形にする。

（5）経営方針

1）信頼と責任
　当社の経営の基本は、創造と技術を追求し、企業価値を最大化することである。市場に受け入れていただく製品とコンテンツを提供するため、当社の組織、事業、社員そして経営の全てに関わる。これは、経営の指針であると同時に社員の指針でもある。
　①常に現状の技術に満足せず市場をよく学び社会に提案する。
　②企業市民として地域社会に貢献する。
　③社員に創造と挑戦の場を提供する。

2）コーポレートガバナンス（企業の健全な運営）
　事業活動を通して利益を追求し会社価値を高めることのみに満足せず、お客様の満足を最大限に追求している。経営の透明性を高めるため取締役会や株主総会などで説明の義務を果たすことのみならず社員や関連機関にも報告や意見交流の場を提供する。コーポレートガバナンスを重視した経営を進めることとする。また、全ての事業分野と業務領域における課題や問題を発見したときは、速やかにそれらの解決に取り組まなければならない。

3）創造の推進
　競争力を高めるために重要な「創造力」の改革について、当社が追求する「創造力」は、「社会やお客様に満足いただける商品を提供すること」であり、製品の研究、開発、生産、販売、サービスに携わる者全員が一体感を持って、安全で、創造的な商品作りに常にチャレンジすることである。

2. 障害者雇用の経緯（小規模作業所との連携）

　近藤道夫代表は、前職で小規模作業所に勤務していた際に、障害者の職業意識や能力の高さについて職務を通して把握し、障害者雇用に取り組む意向を持っていたが、札幌市においても優秀な人材は不足しており、人材を育成し企業が要求するスキルの習得を図る必要性の感じていたことから、当社の創業時から小規模作業所「あかり家」を開設し、パソコンに関する技術指導や支援、人材の育成について当社から提供するとともに、当社への就労を希望する利用者に対しては雇用することもあるなど、業務面でのパートナーシップを結ぶことで、人材をじっくりと養成したうえでの雇用及び事業の展開を図ってきた。
　また、当社は、「あかり家」で技術習得した利用者を他社へ紹介する支援も行っている。

3. 取り組みの内容

（1）概要

　障害者雇用にあたり、小規模作業所「あかり家」との提携を積極的に利用している。企業活動を正常に行うためには求められた品質を約束された期日までに実行しなければならないこと。業務遂行には予想外の問題や理不尽さも時にはあり、それらの問題から逃げ出すことなく丹念に取り組むことが大事であることを指導している。
　当社のお客には従業員が障害者であることを説明しておらず、電話やインターネットなどで叱責されることもあるが、先輩従業員は彼らに対して厳しく愛情をもって指導するとともに、意欲がなければ成長が見込めないことについても繰り返し説明している（もちろん、全従業員に対しても同様に指導を行っている）。
　当社は、企業市民として機能していることを障害者雇用の場を通して、お客から評価を受けている。従って、企業理念との整合と信頼というブランドのシナジー効果が当社の経営や価値の増大に貢献している。
 

（2）職場環境

　当社が入居するオフィスビルは、3箇所の出入口がすべてフラットまたは斜度の低いスロープとなっている。トイレは障害者専用のものが設置されていることは勿論のこと、一般トイレにおいても広い開口部と室内空間を保っており、全てがシャワートイレで標準化されている。
　ビル管理会社も障害者に対する意識が高く、障害者が利用しやすいよう提案をしてもらっているため、施設改造の必要性は極めて少ない。
 

（3）機器の導入

　コンサルティング業務においては市内の同業者ホップの協力をいただき再教育、訓練をお願いした。
　下肢機能障害がある社員においては、印刷、入力、電話など多様な実務をこなしてもらうため、パソコン本体、印刷複合機の購入にあたって、障害者雇用助成金を活用した。
 

4. 障害者の雇用状況

　雇用している2人は、電子機器開発、システム開発、コンサルティングの三部門で勤務している。
 

（1）Aさん（22才）：電子機器開発、システム開発

　勤務する部門では高度な技術力が求められ、開発言語の学習、汎用LSIに関する基礎技術、回路設計技術とそれらの基盤となる高度な数学を学習している。
　先輩研究員がマンツーマンで教育し、業務時間は勿論のこと日常においても手を休めずに学習に取り組んでいる。現在、行政に向けたシステム開発とASICの一部分において納品実績を上げている。
 

Aさんの勤務の様子

（2）Bさん（21才）：Web制作

　HTML作業からイラスト、ロゴを含むデザイン制作までトータル的な業務をこなしている。プログラムの技術ばかりでなく、デザイン等の高いセンスが要求される職務であり、Aさん同様、日常においても情報収集、デザインの学習の手を休めることはない。
 

Bさんの勤務の様子

5. 障害者雇用の効果と課題

（1）効果

　障害者就労は業務の獲得、環境整備において当社の営利活動においても良い成果をあげている。
　Aさん、Bさんは会社の経営理念に添った勤務により、大いに当社の利潤に貢献している。技術や経験には終点はないが、自己を研鑽する意思と能力は期待以上である。
　今後は打ち合わせや営業、指導などで外部との接点が増えることも想定しているが、十分なポテンシャルをもって挑んでくれるものと確信している。
 

（2）課題

　AさんBさんは、現在、居宅介護支援（派遣ヘルパーの介助）を受けながら社宅にて共同生活を営んでいるが、下肢機能障害により単独通勤は困難な状況で、先輩社員がボランティアとして2人を車乗せて通勤している。現状の居宅介護支援では通勤は対象とならないため、制度の見直しを強く望んでいる。
 

（3）最後に

　障害者雇用は当社の企業市民としての責任を果たすと同時に、取引業からの信頼獲得に貢献している。また、彼らにとって働きやすい環境は他の従業員にとっても同様である。
　企業にとって、実績とノウハウの集積は最重要である。従業員あっての営利活動である。障害者雇用の様々な取り組みが、当社の基盤を強固にするものと確信している。