半自動製造ラインの導入と併せて知的障害者を雇用
1. 事業所の概要
農家出資を主体とする株式会社として設立以来30年を超えた当社は、青森県津軽平野の岩木山麓の豊かな自然に囲まれた県内有数のりんごの産地にあり、地域の意欲ある約200名の会員農家の出資のもとにりんごジュースの生産、販売を行っている。
本社敷地には冷蔵倉庫とジュース加工センターを併設しており、加工センターは障害者7名の職場となっている。また、弘前市内には営業所を開設している。
彼らは、近隣の障害者就労支援施設の通勤寮やグループホームから通勤しており、雇用・就業についてのケアが十分になされている。
2. 障害者雇用の経緯
障害者雇用に取り組む以前から、同じ地域ということで近隣の知的障害者更生施設職員とはレクリエーション等を通じて交流があり、障害者雇用が時折話題になっていたが、平成元年にあらためて障害者雇用の要請を受け、初めて知的障害者を2名雇用した。
当初は障害者の雇用については経験がなかったので多少の不安もあったが、本人達の就業意欲と真面目さが雇用の定着につながった要因であると分析している。
加工センターの新設に伴い、半自動紙パック製造ラインの機械を導入したことが、彼らの雇用を推し進めるきっかけとなり、その後も雇用の流れに弾みをつけることになったと竹谷社長は語る。
製品の需要が年々増加し順調な業務拡大の中、更なる製造ラインの増強の一環として、平成4年10月と、平成8年1月に第一種作業施設設置等助成金を活用して導入した紙パック自動充填機、冷凍機等により、製造数が時間当たり600本から1200本へとアップし、更なる障害者雇用に結びついた。
一時は13名の障害者を雇用していたが、現在は定年による退職等で7名となっている。なお、現在雇用している障害者はみな10年以上勤続している。
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3. 取り組みの内容
障害のある社員が従事する製造ラインの機械操作は、複雑な操作を担当させているわけではなく、彼らが対応できる範囲の操作を事前に説明し、何度も根気よく指導することで、十分習熟している。また、作業状況を良く観察しながら、必要に応じて適宜休憩時間を設けている、と直接彼らと過ごす時間が多く、管理責任を担う笠原加工センター長は明るい表情で話す。
加工センターは、飲料生産の工程が彼らの勤務により順調に稼働しており、半自動生産ラインが障害者雇用に結びついている実態がうかがわれる。
4. さいごに
竹谷社長の「職場で共に作業していく上で健常者とは違う障害者を雇用したのだという意識が大事だ」という話は、彼らを特別な枠にはめるのではなく、彼らに必要な対応や配慮すべきことは何かを常に念頭に置くことが障害者雇用に取り組む上で大切な点であることを伝えており、社長の淡々とした表情の裏に潜む強い信念を感じさせる。
平成元年に2名を雇用し、その後10数年間で、最大13名、現在7名の知的障害者雇用の取り組みを振り返ると、彼らを温情的に雇用したのではなく、配慮をしつつも職場で担うべき職務を果たしてもらう意識をもって作業を担当させてきたが、作業の持続性に課題が見られ、結果として適応できず退職した障害者も何人かいた。
彼ら一人ひとりの適性と企業が求める期待のマッチングはそう簡単ではないことを知らされるが、半自動生産ラインの導入と障害者雇用を結びつけたことが、結果、高年齢の障害者も含めた比較的在職年数の長い雇用状況につながっているといえる。
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