事業所名

一ノ関バイオ株式会社水沢営業所

所在地

岩手県奥州市

事業内容

生椎茸の生産・販売と人工ほだ木の製造

従業員数

36名

うち障害者数

3名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	1	商品の検品、コンテナ運搬
内部障害	0
知的障害	2	コンテナ洗浄、商品のライン供給
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯・考え
3. 取り組みの内容
4. 今後の課題・展望

事業所外観

1. 事業所の概要

　当社の前身は、人工ほだ木製造のために16年前に設立された岩手県しいたけ生産事業協同組合である。
　平成17年12月、当組合で製造したほだ木が取り引き業者を経て納められており、また、当組合の生産工場のリースのオーナーが社長である生椎茸生産・販売業の一ノ関バイオ株式会社（本社・一関市）と合併し、当社水沢事業所として再出発、ほだ木と生椎茸が一貫して生産できるようになり、生産コストを下げることに成功した。
　当社におけるほだ木の製造方法も従業員も、組合時代から変動はなく、生産数は年々増加しており、現在は年間約260万本を製造、また、生椎茸の生産量は、年間1200トンであり、全国における生椎茸市場のシェアの拡大は当社の経営方針でもある。
 

生椎茸を培養するほだ木

2. 障害者雇用の経緯・考え

（1）経緯

　岩手県しいたけ生産事業協同組合時代の10年前、当時の理事長が水沢区内の社会福祉法人（障害者授産施設）の専務理事を兼務していたのが縁で、「うちの工場でも障害者が働ける場があるのではないか」と自閉的傾向を伴う知的障害のあるAさんを実習生として迎えたのが始まりである。
　ほだ木を入れるコンテナの洗浄や運搬といった簡単な仕事をつきっきりで教えたところ、1週間ほどで完璧にこなすことができたAさんを平成9年に正式採用した。
　その後も、平成14年に知的障害のあるBさん、平成18年に身体障害のあるCさんを採用した。「最初に採用した障害者が自閉症で、後の2人よりも重度だったので、逆に後の2人については私も他の社員も受け入れやすかった」と岩渕浩二所長は話す。
　生産工場では、常にコンテナを積んだパレットの運搬が行われている。ぼんやり立っていたりふらふら歩き回っていたりすると危ないため、「与えられた仕事をきちんとこなせること」のほかに、「周囲の動きに気を配ること」「落ち着きのない行動をとらないこと」なども採用の必須条件となっている。

（2）障害者雇用に対する考え

　障害者の授産施設の中には、生椎茸を栽培しているところが少なくない。施設に出向いて栽培方法などを教える機会が多く、障害者に深い理解があり対応にも慣れていた所長の姿勢が、障害者雇用を10年間継続していることにつながっている。
　なお、当社の障害者雇用の理念は、仕事を通じて「自立」「脱・障害者」を進めることである。
　また、「3人の障害者のうち2人の知的障害者の場合は、一般社員よりも生産性が高い、という面がある」と所長は話す。一般社員は彼らを「障害者」としてではなく普通に接している。特にBさんはすっかり当社に溶け込み、他の社員とおしゃべりをしたり、宴会時には二次会にも参加する。「私たちは障害者としてみていないんですよ」という所長の言葉から「障害者を雇用している」という意識や気負いがないことがうかがえ、雇用を後押ししている。

3. 取り組みの内容

（1）具体的な内容

　当社の製造ラインは、原料混合→充填（ほだ木の成型）→殺菌→冷却→植菌→第一段階の培養→第二段階の培養→第三段階の培養→出荷、という流れになっている。生きた菌を扱っていること、大きな機械を使うこともあることから、障害者が担当できる仕事は、ほだ木を入れるコンテナや商品の運搬、コンテナの洗浄、一部検品などに限定し、実習時から社員がつきっきりで指導し、間違いはその場で注意した。
　採用した3人とも皆労働意欲があり、差はあるものの比較的理解度も高いので、指導する社員も基本的に健常者と同様に接している。
 

（2）障害者雇用の状況

　現在雇用している3人はそれぞれ、植菌と第一段階の培養の工程の間でコンテナの洗浄、第一段階の培養と第二段階の培養の工程の間で検品作業・コンテナ運搬、最後の工程で商品の出荷ラインへの供給を担当している。
 

ほだ木成型の製造ライン

洗浄したコンテナの積み上げ

第一段階の培養が完了したほだ木を、別の環境で培養させるため、袋を切り取る

　最初に採用したAさんは、機嫌が悪くなると突然外に出て、大きな声で叫んでいた。当初周囲の社員たちもとまどったが、今では彼の個性ととらえている。冗談が通じないことで機嫌が悪くなることがあるので、その点は配慮している。
　Bさん、Cさんには、冗談を言ってコミュニケーションをとっている。当社では新年会や芋の子会など親睦会が多く、交流を深めるのに奏功している。
 

4. 今後の課題・展望

　今後は打ち合わせや営業、指導などで外部との接点が増えることも想定しているが、十分なポテンシャルをもって挑んでくれるものと確信している。　ここ数年、輸入が増加する一方である中国産の生椎茸に対抗するためにも、膜のかかった良質の生椎茸がたくさん採れるほだ木の製造が重要である。そのため、菌の栄養体やほだ木の内部の環境を変えるなどの工夫もしている。
　今後はこうした取り組みにより規模を拡大し、「最低でもあと5人の障害者を雇用し、各部門に配置したい」と所長は話す。