職場実習を通じて障害を理解し、障害者雇用を図る
- 事業所名
- 清水食品株式会社 東北事業部福島工場
- 所在地
- 福島県伊達市
- 事業内容
- 食品加工業(レトルト食品:スープ、ゼリー、ベビーフード、ドレッシング、介護食・高齢者食等)
- 従業員数
- 115名
- うち障害者数
- 7名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 1 製品検査 内部障害 0 知的障害 6 レトルト食品袋の殺菌作業、製品検査 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要
当事業所は、静岡市に本社がある清水食品株式会社(SSK)が、昭和28年に福島県農産加工農業共同組合連合会から土地と建物の提供を受け、福島県特産の桃加工・製造販売する契約で、県の誘致工場として操業を開始した「清水食品株式会社福島工場」が前身である。
その後、昭和50年に、昭和34年に設立された清水食品株式会社喜多方工場とともに、清水食品株式会社から分離独立し、東北SSK食品株式会社福島工場・喜多方工場を設立、工場の建替えを重ね、平成17年4月に清水食品株式会社と再び合併し、現在に至っている。
当事業所の業務内容は、当初の福島県特産の農産品加工から、レトルト食品主体の生産へ移行し、現在はスープ、カレー・シチュー、デザートゼリー、ベビーフード、ドレッシング、介護食・高齢者食等の食品製造であるが、最新の生産設備と時代のニーズに対応した生産システムを導入し、現在では清水食品株式会社グループの主力工場に発展している。
2.障害者雇用の方針と現況
(1)方針
当事業所は、平成3(1991)年に障害者雇用の取り組みを開始したが、その背景には歴代の社長と上層部の一貫した障害者理解に基づく経営方針がある。
加えて、近隣の養護学校やハローワークからの実習生を積極的に受け入れ、障害のある生徒や障害者の実習先としても地域社会に貢献している。
(2)雇用状況
当事業所は、平成18年度現在、派遣社員を含めた130人の従業員のうち、障害者を7人(男性4人、女性3人。うち重度障害者4人)雇用している。年齢は26歳から44歳までで、で平均年齢は32歳。また、彼らの雇用年数は勤続3年から16年までで、平均雇用年数は10年となっている。
なお、通勤については、彼らはバスや電車の定期券を自分で購入しているほか、中には自動車運転免許を取得した従業員もいるなど、社会生活において自立が十分に達成されている。
工場内では、障害のある従業員を含め、全員がそれぞれ生産ラインの作業に取り組んでいるが、一見したところでは障害の有無は分からない。障害のある従業員は各自の仕事に誇りと自信を持って取り組んでいる。作業能率や仕事量は他の従業員と同等であり、単純作業ではむしろ彼らの方が優れていて生産効率も高く、彼らの勤務態度は社内に般化している。
|
障害のある従業員の職務内容については、以下のとおり。
①製造ライン
食品をレトルトパウチ(袋)に充填した後、殺菌釜に入れるトレイに並べる作業
②包装ライン
レトルトパウチ(袋)の外観検査及び製品のラベル貼り作業
レトルト食品の殺菌処理後の製品取り出し作業


3. 取り組みの内容
(1)特別視しない職場が一体となった対応
職種や仕事の内容は基本的に他の従業員と同様に設定しており、障害があることに対し特段の配慮はしてない、むしろ「障害者だから」と気を遣うことを嫌がっている、と武田孝次長は話す。単純作業に強い面やこだわりがあることを彼らの個性(長所)と捉えて、その特性をうまく取り入れて活かしている。毎日社旗の降納を任せている従業員もいる。
また社内のレクリエーション大会(ソフトボールやボーリング)や忘年会、懇親会といった行事にも積極的に参加してもらうことで、彼らも他の従業員と打ち解けている。このように職場ぐるみの細やかな配慮や彼らを温かく見守り受け入れる社内の雰囲気が、障害者の職場定着を可能にしている。
(2)衛生・安全管理
食品工場という性格から衛生管理を徹底しており、白衣・マスク等の着用はもちろん、至る場所で二重三重に消毒・除菌を行えるよう設定している。加えて生産ラインでは機械を使う作業が多いため、安全管理も徹底している。
なお、安全管理に関しては、障害の程度や特性を考慮し、危険な工程には障害のある従業員を配置しないよう施すほか、他の従業員とペアを組んで班単位で作業に取り組むよう設定している。
このような衛生管理の徹底や安全への配慮により、彼らが安心して安全に作業に取り組むことを可能にしている。
(2)相談役の設定
障害者雇用に取り組んだ当初は、対人関係やコミュニケーションの取り方で結構問題が生じた。彼らに対し、身近に気軽に相談に応ずることのできる相談相手の存在が不可欠であると判断し、社内に「班長」を置き、悩み事の相談やアドバイス等を行ってきた結果、最近はほとんどこれらの問題は無くなった。
4. 今後の課題等
(1)社会生活技能の必要性と学校教育への要望
武田次長は、知的障害者雇用のポイントとして、知的能力よりはむしろ、挨拶といった基本的生活習慣の確立、気力や体力の重要性を挙げる。社会生活を営んでいく上で重要な対人関係や社会生活技能(ソーシャルスキル)を獲得するためには、養護学校が家庭と連携の上で、早期から指導を徹底しておく必要がある、と話す。
また、養護学校に対しては、彼らができないことを無理して習得させようとするのではなく、できること(長所)をもっと伸ばす教育が必要であり、その点から、基本的生活習慣や対人関係、人間関係、コミュニケーションスキルの向上を目指した教育にもっと力点をおくべきであるとともに、障害者雇用の現場からスキルの習熟度をフィードバックし教育を見直していく必要があり、そういう意味から「百聞は一見に如かず」で、学校教育関係者に障害者雇用の現場をもっと知ってもらう必要がある、と話す。
(2)当事業所における課題
障害のある従業員が抱える悩みとして、年齢的に結婚適齢期を迎えており、男女交際や結婚といった生活設計に関する内容が出てきている。また、将来的に高齢化を迎えた時の対応がこれからの課題となる。
(3)さいごに
武田次長は障害のある従業員に対して「普通に接しています」という言葉を何度も繰り返す。もちろん障害を配慮して対応しなければならない時もあるが、「障害者」という見方や対応が結果的に彼らの心を傷つけていることに気づかないことが多い。彼らを特別視するのではなく、普通に、当たり前に対応することが、彼らの社会参加と自立の促進を可能としていく。このことが当事業所の取り組みを通じて確認することができる。
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。