障害特性に応じた生産方式・作業環境の構築に取り組む
- 事業所名
- 株式会社折原製作所(栃木工場)
- 所在地
- 栃木県さくら市
- 事業内容
- トイレサニタリー製品の開発・製造・販売
- 従業員数
- 46名
- うち障害者数
- 2名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 2 製造、梱包補助等 精神障害 0 - 目次

1.事業所の概要と障害者雇用の経緯
(1)事業所の概要
東京都に本社を持つ当社は、昭和13年の創業以来、トイレサニタリー及び水廻り製品の提供を続け、これからも「経営理念の実践」を大切に、ユニークで人に優しい製品を提供していきたいと考えている。
当社の経営方針は、次のとおり。
「オンリーワン企業を目指し、社会に貢献する。」を基本理念とし、以下5点を経営理念として実践に取り組んでいる。
①創意工夫の心で、未来を目指します。
②技術の心で、お客様との信頼を築きます。
③感謝の心で、お客様に接します。
④和の心で、お互いを尊重します。
⑤垂範実践の心で、自らを高めます。
(2)障害者雇用の経緯
障害者雇用のきっかけとしては、福祉施設サイドからのアプローチもあったが、当社のユニバーサルデザインの思想(あらゆる体格、年齢、障害の有無に関わらず 、だれでも利用できる製品・環境を創造する)とノーマライゼーションの考えについて、経営トップが強いリーダーシップを発揮し障害者雇用を全社的テーマとして掲げることにより効果が発揮できるよう取り組んでいる。また併せて、障害者雇用についてはコーポレートコミュニケーション(企業が社会との相互コミュニケーションを成立させるものとして、結果として「良い評価」「良いイメージ」が培われることを目的とする活動)をテーマとして企業イメージを強化する取り組みも行っている。
2.セル生産方式への移行
かつて、少品種大量生産時代にあっては、作業者の個性や能力の較差は相殺されあまり目立つことはなかったが、多品種少量生産への移り変わりとともに、ライン型の生産方式では最も低いレベルの作業者に合わせざるを得ない傾向にあることが、大きなマイナス要因となった。このため当工場においては、「受注ロットが減少する中では、従来型では対応が困難」と判断し、多品種・少量生産の需要に柔軟に対応する必要性が生じてきていたことから、セル生産方式への移行は、当社の生命線と言うべき生産体制の改革であった。
(注)セル生産方式:作業者と作業者の間の仕掛品がなくなり、作業者の習熟度に応じてムダなく生産に活かす方法。1人生産方式とも呼ばれる。
なお、セル生産方式への移行については、一般的に導入されているような多能工向けのものではなく、主たる作業者である中高年・障害者が対応可能なものを目指し、高齢・障害・求職者雇用支援機構研究部門との共同研究で新生産手法の開発に挑むことにした。
具体的には、大学の研究者らの協力を得て、女性パート従業員らの作業実態や疲労度を測定。これらのデータに基づき、人間工学的な観点から「セル台」を開発、設置した。
なお、「セル台」については設置の翌年に、作業中に疑問が出ても簡単に必要な情報を取れるよう、タッチパネルで当日の作業指示や事項、製品ごとの部品種類や保管場所などが指示できる電子マニュアル化を行った。
1)研究の内容
①作業内容・作業時間・作業姿勢の観察
(1秒毎の直接観察法を使用)
②疲労自覚症状の調査
(日本産業衛生学会産業疲労研究2002年作成の自覚症状調べを使用)
③上体傾斜角度の測定
(傾斜角度計を使用し上体の曲げ角度を測定)
④ヒアリング
(移行後に、個別面接式による作業者への聞き取り)
2)結果
従来のライン生産では、作業者によって、どの作業者がどの作業まで行うのかという作業区分が遵守されず、隣り合った2名の作業者が、自分の作業待ちの時間に互いの作業を手伝い、結果的に作業内容や進捗状況を確認しあう様子がしばしば観察されていたが、セル生産方式への移行により、次のとおり改善された。
①高齢者や障害者の個性が十分に発揮できるようになった
②作業時間が33%短縮された
・無駄な確認作業の消滅
・作業待ち時間の減少
・作業者が明確なため、再確認の際のフォローがし易く作業ロスが減少
③製品によっては半数の人員で生産できるようになった
④各作業員における責任感やモラルの向上が見られた
また、組立部門に一部IT化したタイプを含め6台配備した「セル台」による効果は、以下のとおり。
①座位や立位を問わず作業姿勢の自由度が大幅に高まった
②台の高さを調整できることで個々人が作業しやすい環境ができあがった
③IT化により作業性アップにつながり始めた。「人対人の指導では癖が出る」ことから電子マニュアルによる標準化を推進している(成形部門への導入や営業部門への活用を計画中)。

これら一連のシステムによって、生産効率を3割以上向上させていく意向である。
3. 知的障害に対する取り組み
(1)全社員の役割分担の設定
障害者雇用に対する全社員の取り組みとして、下表のように全員が各々の役割を担い、きちんと責任を果たしている。
|
(2)指示・説明方法の配慮
知的障害の特性に合った日常の接し方や作業上での注意点を工夫することで、本人が作業し易く、ミスのないようにしている。
さらに、作業に使用する器具や道具等にも本人の作業能力を踏まえ、より使い易い道具(治具)の改良に努めている。
①作業内容の提示の方法
口頭のみでの提示ではなく、作業日報を用いて説明を行う。
作業においては、完成品を目の前に置きながら取りくんでもらう。
②数量かぞえ
数えが苦手な従業員に対し、「10の束を1として、10の山ですよ」と、単位による数えを説明する。
③作業指示書の作成
障害のある従業員用に作成。ふりがなを付けるとともに、終了時にコメントを書く。「よくやったね!」
④作業中の声かけ
疎外感の回避、仲間意識の向上を図るため、彼らの傍を通る時に一声かける。
⑤業手順書の修正
彼らに分かりにくい部分については、理解できるような表現に修正する。
⑥時間管理
アナログ時計を専用に持たせるほか、「あと何分で終わるよ」と声かけする。
⑦昼食・休憩時間の対応
前日の出来事を聞くなど、コミュニケーションを図る。
⑧挨拶のはたらきかけ
社員から積極的に声をかけ、挨拶の必要性を認識してもらう。
4. さいごに
生産効率の向上を常に意識した改革は、結果的に、年齢や性別、障害の有無に関係なく、人に優しく働きやすい労働環境になっていくことを、当社の取り組みは示している。
現在、多品種少量生産が求められる傾向において、このような生産手法がますます広がっていく可能性が高く、ひいては障害者雇用の促進に繋がることが期待される。
地域福祉課主査 松田 昭夫
アンケートのお願い
皆さまのお役に立てるホームページにしたいと考えていますので、アンケートへのご協力をお願いします。
なお、事例掲載企業、執筆者等へのお問い合わせや、事例掲載企業の採用情報に関するご質問をいただいても回答できませんので、あらかじめご了承ください。
※アンケートページは、外部サービスとしてMicrosoft社提供のMicrosoft Formsを使用しております。