事業所名

株式会社せいらん大志社

所在地

群馬県多野郡吉井町

事業内容

ポリ袋、ゴミ袋、レジ袋等の製袋加工

従業員数

17名

うち障害者数

12名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	11	副工場長兼4tトラック運転手、製袋機オペレーター、荷物運搬、袋詰め
精神障害	1	製袋機オペレーター、荷物運搬、袋詰め

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の状況
3. 取り組みの内容
4. 今後の課題

事業所外観

1. 事業所の概要

（1）事業所の概要

　社会福祉法人青嵐会は、通所授産施設「せいらん学園」（定員52名・職員13名1981年設立）、福祉工場、共生コーポレーション（定員20名、職員4名、2001年設立）、福祉ホーム・なゆたホーム（定員10名、管理人1名、2001年設立）で構成されている。（授産施設は、就業・生活等の能力開発を必要とする要支援者に対して、一般社会と乖離しない生きぬくためのスキルを習得させ、限りなく自立に近づけるよう支援する施設。都道府県・市町村・公益法人などが設置。）
　当社は、社会福祉法人青嵐会のモジュール企業であり、法人職員の「障害者雇用の場を自らの手で構築したい」という志により発足した。
　主な業務は、ポリ袋・市町村指定ごみ袋・OPP防曇袋等の製袋加工であり、設備は製袋機8台（グル－プ全体では18台）、工場面積が430㎡である。

（2）設立の経緯

　平成6年、群馬県内においては福祉工場が認知されていない状況の中、「障害者が運営できる、障害者の就労の場を作ろう」と有限会社を設立した。
　設立の動機は、「せいらん学園」を退所後、いじめや差別、人格を否定されるまでの凌辱を受けることで挫折する人々が相次ぎ、さらに国内経済の停滞により、地域の企業が彼らを受け入れる余裕を次第に喪失していったことが背景にある。
　なお、当社は平成7年に株式会社に改組し、現在に至る。

2. 障害者雇用の状況

　従業員17人のうち、障害のある従業員を12人（知的障害11人、精神障害1人）雇用している。彼らの従事する仕事は、製袋機オペレーター5人、副工場長兼4トントラック運転手1人、荷物の運搬作業3人、袋詰め作業3人である。「やって見せ、やらせて見せる八百回」を能力開発のテーマにしている。
 

袋詰め作業

フィルムのジョイント作業

3. 取り組みの内容

（1）障害のある管理者の育成

　将来的には、当社を「障害者自ら運営することを目標」において、労力をかけて支援し訓練を行っている。現実に人材が育成されつつあり、目標に近づいている。生産計画に加え、「製袋機の調整およびメンテナンス」をはじめ、「ショット数の設定」、「仕上がり時間の見通し」などの工程管理や「検品作業」、県内外物流拠点への「納品」に至るまで、すべて障害のある管理者が行えるようになりつつある。
 

（2）作業日報等による文字の指導

　当社ではオペレータの仕事のため、従業員に記入させている作業日報については、障害のある従業員にも記入をさせている。
　機械操作については理解することができる反面、文字の読み書きや数処理が困難な従業員においては、数十種類ある製品の、新たに目にする文字を作業日報に記載するほか、日々の生産活動を通じて学習成果が現れている。
　なお、作業日報には、終業時に生産数を記入する欄を設けているが、数字が読めず平仮名で数字を記載していた従業員が、2年後には5桁まで読めるようになったこともあった。
 

作業日報を記載する

（3）安全教育

　労働基準監督署担当者とともに研究し、ノウハウの開発を進めている。
　製袋機に「通常以外の非常停止装置」を3箇所設けたほか、「危険箇所の説明」を繰り返し実施すること、「機械を止めてからカット寸法の修正をする」こと、「機械を稼動する際は、スタートしますと大きな声で言い、目視確認する」ことなどを徹底している。
 

（4）健康管理

　定期的な健康診断に加え、精神障害のある従業員に対しては、精神科への通院や医師による問診等のメディカルケアの充実や、就労や生活で発生するフラストレーションを解決するためのカウンセリングを日常的に実施し、モチベーションの維持と向上に努めている。
 

（5）福利厚生制度

　年4回の研修旅行をはじめ、食事会（パーティー）、サッカーの対外試合、演奏会への出演など多彩な活動を実践している。特に演奏会活動は、地元群馬県はもとより東京をはじめ北海道から北九州におよび、中国北京音楽庁では立錐の余地もないまでに聴衆であふれるまでの友好親善に寄与した。
　なお、演奏会活動は、障害者の自立面に大きな影響を与えている。人前に立つことにより、服装・身だしなみ・礼儀など自己管理が可能となっている。多くの聴衆の視線や驚嘆や賛辞を意識することで、生活面においても人としてのプライドや喜びを付与され、生きる力へとつながっている。
 

4. 今後の課題

　障害者雇用に取り組むにあたっては、障害者雇用助成金を活用したが、それだけでは、賄いきれない現状に直面している。工場施設の充実や機械設備への資金調達、受注の安定化が経営基盤の大きな課題である。
　また、「報告・連絡・相談が不得意で、管理者の意思の把握が困難」、「個々の能力の違いから、障害のある人同士のコミュニケーションが取りにくい」、「ひとつの作業への固執性が強く、他の作業への援助が困難で、複数の作業を同時進行できる人が少ない」、「仕事を覚えるのに時間がかかる」といった解決していかねばならない障害者固有の問題点が多く、従業員の精神的ケアとともに、やる気をもってもらうための経済生活支援、「共生」という理念の共有等が課題になっている。
 

吉田久臣代表取締役