意欲がありながら就労が困難な障害者への職域の創設に取り組む
- 事業所名
- 株式会社パソナハートフル(株式会社パソナの特例子会社)
- 所在地
- 東京都千代田区
- 事業内容
- 親会社からの業務受託(総務、マッサージ、印刷、名刺作成)、障害者向けイベント等の企画・運営、障害者用研修の請負、障害者雇用に関するコンサルティング、「アート村工房」・福利厚生農場運営
- 従業員数
- --名
- うち障害者数
- --名
障害 人数 従事業務 視覚障害 -- 名刺作成、ヘルスキーパー 聴覚障害 -- 印刷、アート商品作成補助 肢体不自由 -- 会員管理、パソコン入力 内部障害 -- 経理、営業、企画運営 知的障害 -- 郵便、園芸、アート商品の作成・販売 精神障害 0 - 目次
1. 株式会社パソナ(親会社)の障害者雇用の経緯
当社の親会社である株式会社パソナは、「社会の問題点を解決する」という企業理念のもと、障害者雇用については「才能に障害はない」をコンセプトに、企業内就労に留まらず、「働く意欲がありながら就職が困難な障害者の就労分野の拡大」と、「障害者の社会的自立を応援する」ため、様々なシーンでの障害者の能力開発に取り組み、社会参加と雇用の場の提供に取り組んできた。
1990年 「ハートフルセミナー」開始
障害者のネットワーク作りや能力発見の場としてさまざまなイベントや講座を開催
1992年 「アート村プロジェクト」設立
「才能に障害はない」をコンセプトに、アート(芸術活動)による就労分野の拡大を目的とする。
1999年 日本初の障害者の人材派遣をスタート
雇用のミスマッチ解消のため障害者のためのインターンシッププログラムを提案
2003年 当社設立
企業内就労だけではなく、障害者特性を考慮した新たな障害者の就労場所、新たな雇用形態を目指す目的で設立
2005年 「アート村工房」を開設
アート村プロジェクト設立依頼目指していたアートによる才能を活かし、絵を描くことを主たる業務として働く新たな雇用を行う為、武蔵野東学園内に「アート村工房」を設立
2006年 「農業プロジェクト」により福利厚生農場「ゆめファーム」を開設
新たな取り組みとして、千葉県八千代市の社会福祉法人実りの会ビックハートの農業地を借り共同で、農業による知的障害者の雇用に取り組み、今後他の地域への拡大を目指している。開所式には千葉県知事代理、八千代市長、ロータリークラブから祝辞を賜った。
2. 特例子会社設立の経緯
株式会社パソナは、事業を「社会貢献」「文化創造」「社会福祉」の3分野に分け、それぞれが明確なテーマを持って積極的な事業展開を行ってきた。中でも「社会福祉」事業は、障害者など社会的なバックアップが必要な人々を支援し、その活躍を応援することを基本的な考えとしている。
このような理念のもとに、異なったハンディを持つ一人でも多くの障害者の働ける場としての職域を開発するため、障害のある社員自身が能力開発や雇用促進を目的とした様々な活動を行うことで、障害者個人の意思を尊重しながら、健常者と共に社会参加できる「共生」の場を創り出してきた。
そこで、① 「就労の意欲がありながら就職が困難な障害者の就労分野の拡大」と②「障害者雇用を検討している企業への積極的な情報とノウハウの提供」という2つの活動をより強力に推進するために、2003年4月に当社を設立した。
3. 事業所の概要
(1)事業内容
1)親会社から、各種オフィス業務、産業マッサージの受託
印刷、製本及び配送の業務、郵便物の受発送及びダイレクトメールの発送業務、
ワープロによる社内文書作成、ファイリング整理の補助業務、マッサージ業務 等


2)障害者向けのイベント、セミナーの企画・立案・運営
3)障害者の教育並びに研修業務の請負
障害者の能力開発、人材育成に関する教育事業、研修業務 等
4)障害者雇用に関する企業向けのコンサルティング
採用コンサルティング業務 等
5)「アート村工房」の運営

6)「ゆめファーム」の運営


(2)組織構成
障害特性を生かした業務配置により組織を構成している。
視覚障害者 産業マッサージ
聴覚障害者 印刷業務、データエントリー業務
上下肢障害 データエントリー業務、電話対応等を含む営業補助業務、ファイリング業務
知的障害者 郵便糊付け封緘業務、社内メール便集配業務、ファイリング業務、社内観葉植物管理業務、農作業、アート村工房における商品の作成・販売
(3)勤務条件
1)雇用形態
当初は契約社員として雇用し、半年から1年を目処に正社員に登用する制度を設けている。
2)給与待遇
業務内容における経験や能力を考慮のうえ当社給与規定により支給する。
(正社員)昇給1・賞与2、交通費支給、各種社会保険、カフェテリアプラン
3)勤務時間
9:00~17:30(障害部位により勤務時間を考慮している。)
4)勤務地
東京本社及び全国各拠点、「アート村工房」、「ゆめファーム」
(4)募集活動・採用
基本的には、ハローワーク経由にて募集採用活動を行っているが、自社ホームページにおいても募集している。
知的障害者については、養護学校等在学中の「職場実習」、「インターンシップ」を行い採用している。
また、社会福祉法人や授産施設とも直接連携を取りながら、就労を目指して訓練している人の職場実習を行い採用している。
健康診断は年1回、例年10月に実施しているが、障害のある従業員が殆どなので、健康管理や安全衛生には常日頃から注意を払い、疾病によっては、病院、親等と連携し対処している。
また、殆どの社員がマイカー通勤であり、通勤災害等の発生がないように体調と併せて安全の管理にも心がけている。
4. 取り組みの内容
(1)職場配置
障害特性を生かし、ストレスが無く、かつ業務効率の上がる職場配置を実践している。一方、個々人のレベルに合わせた目的意識を持たせ、ビジネスマナー、パソコン等のスキルアップ研修を行い、より高いレベルの業務にチャレンジできるよう意識付けを行っている。
各々の異なったハンディキャップを障害者同士が互いに理解し合うことで、自然と得意な業務と苦手な業務を補完しあうような業務遂行を実践できるように配慮している。
また、固定した一業務に留まらせず、職場及び業務のローテーションを心がけ、障害のない社員と関わりを持たせることで、両者の相互理解を深めるようにしている。
(2)作業内容・作業工程
入社時に一連の工程を全て経験させるなかで、業務の遂行度や完成度を確認するとともに、それらの度合いが低い場合は、障害によるものか性格によるものかを判断したうえで、本人との相談や研修の積み重ねを経て、より本人に適した業務に配置している。
また業務については、必ずチェック機能が働くよう、1次作業者、2次チェックと一人完結しないよう工程を組み、間違ったときには一人の責任では無く皆の責任になることを徹底して指導し、迷惑をかけないよう業務を行うことを指導している。
(3)給与
賃金については、経験や勤務年数は加味するが、基本的には、従事業務への対価として賃金を考えている。そのために、本人の意思ややる気を引き出すような実習(パソコン研修)、親会社における職場実習を取り入れ、本人のスキルアップを図り、賃金アップに結びつくプログラムを実践している。
一方、業務の成果としては、上司の指示に従い、早さよりも間違わずに正確に行うことを目指させている。
(4)研修・訓練
①定期的なビジネスマナー研修の実施
②パソコンスキルアップの研修
③親会社での職場実習訓練
④他業務を習得するための業務ローテーション
⑤外部講師によるアート講座(アート村工房)
(5)人的支援、社内体制
必用部署には適宜、親会社の出向社員を受け入れ指導・支援している。なお、職場実習、中途採用時には当社で配置している社内ジョブコーチが支援を行う。
(6)福利厚生、健康管理
親会社の福利厚生に準じている。健康管理については、体調の悪い時には休みを取るように厳しく指導している(無理して働くことで障害が悪化し長期休暇に入ることは、本人が一番困り、また他の社員にも迷惑と心配をかけることになる)。
また、体調面の定期的な面談及び、定期健康診断を実施している。
(7)家族・関係機関との連携
家族や関係機関との問題解決が必要な場合には、原則文面ではなく、電話連絡、対話等直接連絡を行うことで問題点を洗い出し、早期に解決策を講じている。
特に知的障害者の場合には、家庭でのトラブルが業務に尾を引くことがあるので、日常と異なる業務態度が見られた時などは、電話連絡等により原因究明に努めている。
また、文化祭、運動会等の職場の企画にも、積極的に家族と一緒に参加していただくことで社員と家族の交流を深めている。
2006年9月30日に「アート村工房」が設置されている武蔵野東学園地下1Fにて「第一回パソナハートフル文化祭」を開催した。当日は親会社の社員、保護者、養護学校、就労支援センターなど500名以上が参加し、大変な盛り上がりを見せた。

(8)その他障害者の雇用管理に関する考え方
障害者雇用は、「何が出来ない」「これが出来ない」といった業務における消去法ではなく、「障害特性を生かし何の業務を与えられるか」を考え行っている。
5. 取り組みの効果、今後の課題
(1)取り組みの効果
多くの障害者を雇用したことで、親会社の社員及びグループ会社社員の彼らに対する見方や接し方の違和感が払拭でき、相互理解が深まった。
更に、彼らが文化祭や運動会に参加し、ピアノ演奏やスポーツ等で新たな一面を披露することで、相互理解もさらに深まるとともに余暇活動への参加も進み、親会社が求めている様々な場面での「共生」が実践されている。
また、「アート村工房」や「ゆめファーム」といった新たな職域開拓を行うことで、社会福祉施設や養護学校等との意見交換や交流ができるようになった。
(2)今後の課題
企業内で働ける障害者は限りがある中、障害者自立支援法の目指す「福祉から就労へ」を実践するには、彼らが働ける多数のステージを作っていく必要がある。それが「アート村工房」や「ゆめファーム」であり、今後はこの二つのステージを全国地域に広める意向である。
また、更に多くの新たなステージを作り障害者雇用を進めるためには、「企業」「官公庁」「社会福祉法人」「養護学校」の力を合わせて、一人でも多くの就労を作り出すことが課題だと考えている。
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