2006年度作成

事業所名

有限会社中野工業

所在地

富山県黒部市

事業内容

金属製品製造業（ファスナーの加工・取り付け、アルミ建材の部品加工・組立等）

従業員数

－－－名

うち障害者数

6名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	2	機械加工、工程管理
肢体不自由	3	研削加工、機械加工、組立
内部障害	1	部品のピッキング・梱包
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯
3. 取り組みの背景と内容
4. 取り組みの効果、今後の目標

1. 事業所の概要

（1）事業内容

　金属製品製造業。YKK株式会社及びYKK AP株式会社の協力工場として、ファスナーの加工・取り付けおよびアルミ建材の部品加工・組立が主力。
 

（2）沿革

　昭和30年　　創業　中野製材所を興し製材業を営む
　昭和36年　　吉田工業株式会社（現 YKK株式会社）ファスナー部門との取引開始
　昭和54年　　社名を中野工業に変更
　昭和57年　　吉田工業株式会社建材部門との取引開始
　平成10年　　法人化し、現在の社名に変更

　創業時には従業員5人で製材業を営むかたわら、漁業者向けの「白子（しらす）用おり箱」を製作していたが、その実績を評価されて昭和36年に吉田工業株式会社からファスナーの海外輸出用包装木箱を受注する。その後協力工場として、ファスナーの加工・取り付けおよびアルミ建材の加工・組立も始めた。平成10年にはISO9001を認証取得している。
 

2. 障害者雇用の経緯

　当社が障害者の雇用に本格的に取り組み始めたのは10年前にさかのぼる。当時、中野貴代美社長夫人が地区婦人会の社会福祉活動に携わっていたとき、障害者が自立するための就業機会がたいへん少ない状況であることを知り、協力工場として、YKKグループの企業精神「他人の利益を図らずして自らの繁栄はない」に心を寄せる当社としても、障害者を雇用することができないだろうかと社長に相談した。
　安全面を考慮すると障害者雇用へのためらいもあったが、ハローワーク等関係機関からの助言や援助をお願いし、種々の安全対策を試みながら、先ず身体障害者の雇用から始めた。
　その後、障害者養護施設からの職場体験要請にも協力を惜しまず、施設内作業場に仕事を提供している。

3. 取り組みの背景と内容

（1）背景

　世界の代表企業であるYKKグループの協力工場のひとつとして、「品質および納期の確保」は留意すべき最も大きな責務であり課題である。
　「品質は工程で作り込む」といわれるとおり、障害者を含め、「工程」を担う従業員一人ひとりのスキルやモチベーションの維持・向上を図っていくことを欠かすことはできなかった。
　一方、作業の内容では研削工程や組立工程が多く、仕掛品が工程間を移動する頻度が高いので、障害者の目線で安全面の対策など作業環境の整備に取り組む必要があった。
 

（2）研修・資格取得

　「障害者にやさしい職場」は「障害者以外の従業員にとってもやさしい職場」というコンセプトのもとに、「障害者が自立できる人づくり」、「障害者にやさしい職場づくり」を目指した。
1）人材育成研修によりスキルと責任感の向上を図る
　「企業は人なり」の考えのもとに、人材育成研修を計画的に実施している。平成17年から18年にかけては、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構（当時）の職場活性化研修（生涯現役エキスパート研修のエンプロイアビリティコース）を延べ4回受講した。研修には回を重ねるに従い障害のある従業員も全員受講し、問題点の要因解析や対策について堂々と発言するムードが定着してきた。

2）資格取得の推進
　キャリア形成のため、特に障害のある従業員に対して資格取得を奨励し、取得者には費用補助や賃金に反映する仕組みなどの動機付けを取り入れた。これまで障害のある従業員は、第1種衛生管理者資格、フォークリフト運転者資格、パソコン資格などに挑戦し資格を取得している。
　「障害のある従業員も資格の取得に大いに挑戦して欲しい」と中野社長夫人は話す。
 

（3）バリアフリー・安全衛生

1）バリアフリーの実施
　工場内での安全の確保や製品移動用の台車の円滑な活用を図るため、工場の床面をバリアフリー化するとともに滑り止め処置を施した。

2）安全確保のための設備改善
　各機械設備の突起物部分や回転部分には安全カバーを取り付けて、作動異常やうっかりミスによる危険・災害の防止措置を図った。

3）塵埃の拡散防止措置の改善
　研削工場において、研削による塵埃が拡散しないよう、設備機械それぞれの形状特性に対応した吸塵装置に改善した。定期的に工場内の環境測定を実施し、快適な職場の維持に努めている。

4）3S活動の定着
　工場の始業及び終業時において、3S（整理・整頓・清掃）タイムを設けて3S活動を定着化させ、徹底を図っている。安全・規律の保持、物を大切にするこころを育むことが目的である。
 

5）福利厚生
①休憩室の整備
　従業員の休憩室が小部屋に分散していたが、彼らが一同に会同できるように増改築した。今は従業員研修場所として、あるいは従業員間のコミュニケーションを図る格好の場となっている。

②従業員の誕生日にメッセ－ジを送る
　2年余前から中野社長夫人の発案で、従業員の誕生日には『あなたに会えてよかった。ありがとう…』の感謝と激励のメッセージをお祝いの花に添えて自宅に送り届けている。
　多いときは1ヶ月に十数人に及ぶこともあるが、メッセージはすべて社長夫人が直筆でしたためている。「微力かもしれないが、感謝のこころ、人を思いやるこころが育まれれば」と願って始めたことであるが、障害のある従業員たちからは、「今年はどんなことを書いたメッセージをもらえるのか楽しみにしている」とか、彼らの親からは「おかげさまで娘から初めて『ありがとう』と言ってもらった」といったお礼の手紙を多数もらっている。
 

4. 取り組みの効果、今後の目標

（1）取り組みの効果

　障害のある従業員のモチベーションが向上し、担当する仕事に誇りを持つことに加え、従業員研修やインフォーマルな行事にも積極的に参加するようになった。最近2年間の出勤率はほぼ100％である。
　障害のある従業員を含めた全従業員への資格取得奨励活動の成果が出て、多能工化が進展している。工程間の負荷の変化に柔軟に対応できるようになり、納期遅延ゼロ達成に寄与している。
　工場内の整理整頓が行き届き、規律が徹底し、工場では2年間労働災害ゼロを継続している。
 

（2）今後の目標

　現在は知的障害者養護施設へ作業を供給しているが、将来は知的障害者が働ける仕事を社内に取り入れ、彼らの雇用の場をさらに広げたいと計画しており、用地を確保するなど地道な準備を進めている。
 

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