設備の改善や管理体制を強化し、障害者の職域拡大を図る
- 事業所名
- 株式会社アスコ
- 所在地
- 富山県中新川郡
- 事業内容
- 業務用青果物卸売業
- 従業員数
- 92名
- うち障害者数
- 12名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 2 洗浄 肢体不自由 2 設備保全、計量、投入 内部障害 1 計量、投入 知的障害 6 洗浄、計量、前処理、品揃え 精神障害 1 材料搬入 - 目次
1. 事業所の概要
(1)事業内容
業務用青果物卸売業。外食産業、給食センター、惣菜会社、その他食品加工メーカー又は食品販売事業所へ業務用として、カット野菜、一般青果物を、客先の用途・仕様に合わせた形状又は包装加工して、北陸地方を主体に約150余の事業所へ供給している。
(2)沿革
当社の設立は昭和57年。富山市内に開業し、当初は豆もやしやカット野菜、惣菜等を主に製造・販売していたが、平成5年に惣菜部を発展的に解消し、業務をカット野菜及び一般青果物の業務用販売に特化した。
平成13年に現在の11,000㎡の土地を取得し新社屋を完成させ、富山市から本社及び工場を移設した。
当社の社是は、「金儲けより 人に役立つことを考え 世の中に必要とされる企業を目指す」である。
2. 障害者雇用の経緯
当社が障害者の雇用に取り組み始めたのは20年前。富山市の精神障害者施設から「施設外作業場」として要請を受けたことがきっかけである。仕事の性質上、包丁などを使用する部署もあり、障害者雇用には安全衛生上不安はあったが、ライオンズクラブで社会福祉活動にも携わっていた当時の社長(南雲俊吉代表取締役社長の実父)が「人(社会)に役立つために…」と決断し、障害者雇用に力を注いだ。
現所在地である中新川郡への移転の際、通勤の都合上、障害のある従業員は離職を余儀なくされたが、一部の従業員は富山市内の関連会社で継続雇用した。
移転後も新たに障害者雇用を進め、現在、障害のある従業員を12人雇用している。
「障害者でも十分できる仕事がある」と南雲社長は話す。

3. 取り組みの背景と内容
(1)背景
当社商品の生産に当たっては、特別高度な技術・技能を必要とするものではないが、食品の安全及び衛生面の配慮や管理は第一の不可欠要件である。
また、野菜等の千切り機や包装機械、あるいは包丁などの作業機器を使用する場合に、障害特性を踏まえ配慮しなければならない危険防止措置等が求められる。
さらに、商品の種類や形状、注文量などは多種多量であり、日ごとの受注量(生産量)が一定していない状況下で、品質・納期・価格を適切に維持・確保していかねばならない。
障害者にもやさしい職場をめざし、かつ生産性を向上していくために取組むべき課題が多くあった。
障害者雇用に対する問題点の改善は、障害者以外の従業員に対する問題点の改善に共通する内容もある。同時に改善を図ることにより、障害者の職域を広げることに留意した。
(2)設備改善
1)機械にパトライトや安全カバーを取り付け、オペレーターの危険防止を図る
野菜千切り機や野菜カットマシン、真空包装機等の操作中における機械停止など、稼動中における異常について聴覚障害のある従業員が検知できるよう、パトライトを敷設した。
また、各マシンのオンオフ切り替えボタンや加工物投入口以外の全ての突起物部分には安全カバーを取り付け、異常動作時の危険防止を図っている。
この改善にあたっては、社団法人富山県障害者雇用促進協会から助言を受け、障害者作業施設設置等助成金を活用した。

2)冷蔵庫・格納庫の扉開閉を容易にする
原料保存用のプレハブ冷蔵庫・格納庫については、素材や仕掛品、完成品の出し入れを頻繁に行う必要性があったが、大型扉は手動の両引スライドによる開閉であり、肢体不自由のある従業員の対応が困難であったため、容易に扉の開閉ができるよう、自動リニアスライドドアに改造し、彼らの負担軽減を図った。
この改善資金の一部は、社団法人富山県障害者雇用促進協会の指導により、障害者作業施設設置等助成金を活用した。
3)計測機器類のデジタル表示化
素材、仕掛品、商品の計量において、重量表示の計測器は、原則デジタル表示化した。
(3)管理体制の強化
1)設備のメンテナンス要員を障害者で確保
日常必要とされる機械や備品の保全・修理は外部業者に委託していたが、ハローワークの紹介により機械加工・組立経験を持つ障害のある従業員を雇用するとともに、保全室を設け、修理や改善がリアルタイムに実施できるようにした。
2)配置に係わる基本的考えに係るコンセンサス
「仕事の質を高めながら、障害者が社会人として自立できるようにサポートしたい」という方針のもと、障害について以下の考え方を企業風土として定着させ、障害のある従業員との円滑な連携作業を図った。
①複雑な作業はできなくとも、比較的簡単な作業であれば根気よく続けられる。
②作業内容によっては繰り返し作業することにより、作業スピードが向上することは健常者と変わらない。
3)1時間間隔の「衛生チェックタイム」の実施でクレームゼロを維持する
特に厳重な衛生管理が必要であり、商品の中に毛髪1本でも混入することは許されない。手、指、手袋、エプロン、白衣、まな板、包丁等の殺菌または異物(毛髪等)除去のための薬品や流水による洗浄方法について、職種ごとのマニュアルを作成し、「衛生チェックタイム」を1時間ごとに全社に放送することで、全社一斉に衛生チェックを実施している。
なお、衛生チェックは、リーダーまたはサブリーダーのもとで行うため、以前雇用していた障害のある従業員に見られた「手抜き」の防止に役立っている。
4)掲示板による作業管理
当日の生産計画、進捗状況、冷蔵庫の温度管理等の管理項目は、必要に応じて掲示板又はホワイトボードに掲示し、誰もが何時でも進行状況が把握できるよう「目で見る管理」を徹底している。
5)刃物類の管理
包丁・はさみ等刃物類は、安全・衛生上その品質及び員数の管理を徹底する必要性から、刃物ごとに番号を付し、管理室の番号に対応した場所で保管している。
なお、当然のことながら、工場内は3S(整理・整頓・清掃)は徹底されている。
4. 取り組みの効果
(1)障害者が働ける職域の拡大
安全及び衛生管理を強化する諸対策を進めた結果、障害者が係ることができる職域が広がった。作業工程および障害者の配置状況は下表のとおり、どの工程にも満遍なく配置できるようになった。
表:全工程における障害者の配置状況
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(注:工程の掛け持ちがあること)

(2)コミュニケーション体制の強化
「衛生チェック」の一斉実施により、障害のある従業員とリーダー、他の従業員とのコミュニケーションやコンビネーションが強化された。
なお、異物混入など発生しない「不良ゼロ」は、現在継続中である。
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