職場環境を整えることによって、障害者の職場定着を図る
- 事業所名
- コニカミノルタオプトプロダクト株式会社
- 所在地
- 山梨県笛吹市
- 事業内容
- 光学機器用レンズ・産業用レンズその他光学素子、光学関連機器組立品の製造・販売
- 従業員数
- 316名
- うち障害者数
- 7名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 3 検査(工程、出荷) 内部障害 3 検査(工程、出荷)、管理 知的障害 1 選別、運搬 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要
株式会社甲府コニカと株式会社山梨コニカが2002年に合併し、コニカオプト株式会社(現コニカミノルタオプト株式会社)の国内生産会社として発足した当社は、2003年には、現在の社名に改称し現在に至っている。
当社は、新しい時代をより強くよりたくましく生き抜き発展するために、ヘキサノンレンズ、デジタルカメラ用撮影レンズ、携帯電話に用いられるマイクロカメラ用レンズ等に代表される旧株式会社甲府コニカのレンズ技術及びコニカカメラ、MOドライブ等に代表される旧株式会社山梨コニカの精密組立技術など、両社がこれまで培ってきた高い生産技術力を武器に、コニカミノルタオプト製品の高い競争力に貢献すると共に、国内製造会社として自立出来る企業体質の構築を目指している。
(1)取り扱い製品
光ディスク用レンズ、レーザービームプリンター用レンズ、眼鏡用レンズ、ガラス製光学素子、プラスチック製光学素子、デジタルカメラ用レンズユニット、ビデオカメラ用レンズユニット、コンパクトカメラ用レンズユニット、3.5型MOドライブユニット、その他各種撮影システムレンズユニット


(2)経営方針・経営理念(2006年4月現在)
「オプト事業の国内生産拠点としてのミッションの遂行と国内製造業として自立出来る事業構造への転換」
①永続的に顧客に喜ばれる商品を創出し連結利益を上げ続けることを目指す
②高付加価値PLの生産」及び「高機能の自動化による高精度組立品の生産」を経営の柱とし、このための生産技術力を重点強化する
③DSCユニット事業、ガラスレンズ事業をオプトグループ全体の事業としてとらえ期待される機能役割を果たしていく
④透明性と公平性を重視し、オプトグループの一体感と従業員のヤリガイ感を高め、活力ある職場集団を構築する。
(3)組織構成
当社は、以下の部署から構成されている。
山梨サイト・事業推進室・工場企画室・品質保証部・技術部・管理部・総務部・第一製造部・第二製造部・第三製造部
2. 障害者雇用の理念・経緯
(1)理念
コニカミノルタグループは行動憲章を掲げ、その中で企業としての社会的責任(CSR)を果たし、コンプライアンス(法令遵守)を守り行動することを全従業員が約束している。
当社は、地域に密着した企業の社会的責任として、障害者雇用率を遵守すべく積極的な障害者雇用に取り組んできており、障害のある従業員に対しては、能力に応じた適切な作業を設定し責任を持った作業を任せることにより、障害のない従業員との意識の差を持つことなく一社員としての誇りをもって作業に従事してもらっている。
今後もコニカミノルタグループの行動憲章に基づき障害者雇用に取り組んで行く意向である。
(2)経緯・背景・きっかけ
1972年あたりで聴覚障害のある人を採用したのが始まりであり、その後定年まで活躍してもらった。
障害者雇用率の達成はもとより、社会的責任を果たし、地域に貢献する取り組みを行うことを目的として障害者雇用に取り組んでいる。地元の自治体からの紹介で採用することもある。
また、交通事故や傷病などにより中途で受障した従業員の雇用を確保することも非常に重要と捉えており、障害者雇用においては中途障害の従業員の割合が高くなっており、今後もその傾向は続くと予測される。
なお、障害者雇用に際しては、障害者雇用をコスト面でバックアップする障害者雇用調整金を受給しながら取り組んでいる。

3. 取り組みの内容
(1)労働条件
労働条件については、基本的には障害のない従業員と同様のものとしている。
①雇用期間:限定した雇用期間は設けていない
②勤務場所:工場内
③勤務時間:原則フルタイム。なお労働時間については、障害者特性や健康維持に配慮し管理している(知的障害者については残業の強制はなく、透析等の治療時間が必要な従業員は交代勤務のシフトに組み入れず昼間のみの通常勤務としている)
④賃金:原則月給制。時給で雇用するのではなく、仕事の評価に応じた賃金を設定している
(2)職務内容
ほとんどが座位で、肉体的な負担は軽い作業である。
①マイクロレンズユニット完成品の検査
②プラスチックレンズの工程検査
③プラスチックレンズ品質保証の出荷検査
④協力工場からの部品の受け入れ検査
⑤成形機清掃作業




(3)労務管理
当社の労務管理の工夫については、以下の三つのポイントを基本としている。
①世話を焼きすぎない
「無視せず無視する」が極意であり、決して特別扱いをしない。
②労働時間設定の配慮をする
勤務シフトを含め、診療や健康管理に必要な時間の配慮を行い、安心して働けるようにする。
③同じ従業員としての意識を持たせる
同じ職場の一員として、仕事に対して責任を持たせる。
障害のある従業員に対しては、係長が相談役として、相談や指導を行っている。
また、試行錯誤の中から、「世話を焼きすぎない」手法を周囲が体得し円滑に業務を遂行している。無視することなく、干渉し過ぎることなく対応することから「無視せず無視する」と言い換えているが、ごく自然にこの対応ができるようになるまで一年程を要した。
さらに、二年、三年と経過する中で、一度に複数の指示を与えることによりパニックを起こし、十分に力を発揮できなくなることがあり、「一度にいくつも指示を与えない」ということも確立した。作業の内容を変更するとしても、年というスパンで考えることが望ましいと考えている。
なお、彼らが万一失敗した場合には、教えた側に責任があることを担当者に徹底している。
1)雇用管理面
①中途障害
中途障害の従業員に対しては、特に工夫をすることはなかったが、強いて挙げると、雇用の維持・確保を前提として、座位作業など体力的に厳しくない職務を設定するなど配慮している。また、診療時間を確保するため、4直2交替制(4班を2パターンに振り分ける)のシフトから外すなど、労働時間における配慮を徹底している。これは、労働時間の短縮の推進を図ることを目的とし2006年度から施行された労働時間等設定改善法にもつながる考え方である。心臓に障害のある従業員の場合は、自動車による出張は控えるよう配慮している。
②知的障害
学校から知的障害者の職場実習の要請を受け、本人や先生の話を伺い、一ヶ月間の受け入れを決定した。実習時にルーティンワーク(固定的な仕事)に対し集中して取り組み、他の従業員に劣らない実績を残し、後日求職の申し込みのあった本人に対し、適した職務があるか、また周囲に溶け込めるか等不安もあったが、経営理念並びに雇用理念に基づき、検討の結果、採用を決定した。

なお、数年前に相談役が従業員に声を掛け、障害のある従業員が使いやすいタイヤが大きい専用の台車を作成し、本人の名字をもらい「○○号」として5、6年活躍した。現在は役目を終えたが、本人も大いに喜び、結果として従業員同士の信頼感や結びつきの一層の向上につながった。
事業所上部からの強制ではなく、従業員から自発的な動きが起きたことは、障害のある従業員を受け入れる暖かい雰囲気があることを証明している。彼らが生き生きと働ける職場は、他の従業員にとっても働きやすい職場である。
また、優しさと思いやりの溢れた職場の雰囲気に関しては、10年ほど前に社員旅行への強い参加希望を持っていた歩行が困難な従業員に対して、職場の仲間が皆で一緒に行くことを決め、電車を使い、本人の移動を全員で介助しながら旅行をしたことがあり、非常に楽しい旅の思い出になったというエピソードも持っている。
2)設備・職場環境について
肢体不自由の障害がある従業員が、身体面で負担がかからず安全で快適に職業生活を送れるよう、基本的な部分での整備を心掛けている。
①歩行に負担がかからないよう、あらゆる段差にスロープを設置
②全ての階段に手すりを設置
③エレベータを設置
④和式のトイレを洋式に改造
⑤透明の自動ドアを設置






4. 取り組みの効果
障害者雇用に取り組むことにより、従業員においては意識することなく協調性や思いやりの気持ちが培われている。また、職場環境や雰囲気の改善は、障害のある従業員のためだけではなく事業所全体の定着率や働きやすさなどの魅力や、当社に対する信頼感や安心感の向上につながり、事業の活性化が促進される。
また対外的には、地域に貢献する企業としての社会的責任を果たし、コンプライアンスを守って行動することを証明している。
(1)作業効率の向上
固定化した作業をしっかりとこなしてもらえるので、作業全体の流れを非常にスムースに運ぶことができる。障害のある従業員が休むと仕事の流れに支障が生じるほどに、いなくてはならない存在となっており、業務の潤滑油的な役割を担っている。
また、職場の雰囲気について、職場においては「障害」に対する特別な意識は持っていないが、台車の作成など思いやりの心としてごく普通に定着している。
(2)職場環境の改善
バリアフリーの取り組みについて、障害のある従業員が作業しやすいような職場環境の整備は、彼らだけではなく高年齢者や女性にとっても、作業を容易にすることにつながり、職場全体を働きやすい環境にすることになる。
(3)労働力の確保
中途で受障しても継続して活躍してもらうことは、労使双方にとって非常にメリットが大きい。事業所としては高度な技能や能力、経験を有する従業員を失わず、本人にとってもキャリアを中断することなく職業生活を送ることができる。有能な人材の確保と併せて当社に対する信頼感やロイヤルティー(忠誠、愛社精神)の向上が自然と図られる。
また、2007年問題(長年企業において大型汎用機などの基幹系システムを開発・保守してきたベテランが引退してしまい、今まで培ってきた技術やノウハウなどが継承されず、基幹系システムの維持が困難になる現象)や、少子高齢化による労働力不足が確実視される中、戦力として十分に活躍できる職務がある限り、障害者雇用は重要な労働力確保施策の一つであり、企業にとっては必要不可欠と考えている。
5. 今後の課題と対策等
(1)課題
将来的な経営戦略に則した人材活用において、可能な限り障害者雇用を継続していく意向であるが、激しいグローバル競争やフラット化が進む中、今後、障害のある従業員の能力に適した職務が存在するかどうかが課題となってくる。
(2)対策・展望
障害者雇用は労使双方にとってメリットが大きく、社会的責任を果たすためにも、非常に意義のあることだと考えている。
やりがい感の向上という考えに基づき、障害のある従業員が自分の能力を発揮し、張り合いや働きがいを感じることのできる職場づくりを目指す意向であり、地元の学校からの職場実習の要請にも積極的に受け入れたいと考えている。
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