店舗の後方支援部署において障害者雇用を進める
- 事業所名
- イギン株式会社
- 所在地
- 岐阜県岐阜市
- 事業内容
- 婦人フォーマルウェア製造販売
- 従業員数
- 965名
- うち障害者数
- 12名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 4 縫製、商品検品、商品管理 肢体不自由 4 事務、販売 内部障害 0 知的障害 4 商品整理、縫製 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要
昭和41年8月に婦人フォーマルウェア「イギンの礼服」を全国にCM発表し、日本で最初に和装から洋装への道を開拓した事業所である当社は、現在ファッション界をリードし、「より厳選された素材、よりマッチしたデザイン、より高度な技術力」をもってお客に提供し、常に満足して頂けるように心掛けているトップメーカーである。
婦人フォーマルウェア(ブラック・カラー)と冠婚葬祭関係のアクセサリーを、東京本社と岐阜支店を核として、全国有名百貨店及び全国チェーンストアの各コーナーで販売している。
また、当社の組織は、東京本社、岐阜支店のほか、大阪支店、札幌・福岡各営業所、岐阜生産物流センターから構成されている。

2. 障害者雇用の経緯
従来から積極的に取り組んできた障害者雇用にあたって一つの大きな課題があった。
従業員965名のうち75%余りの700名強が店頭販売社員(ファッションアドバイザー)で、600店舗以上の各フォーマルコーナーに一店舗に一名を主体に配属しているが、障害者を販売の最前線である店頭販売員として1名で配属する事が難しく、後方支援である社内に配属するしかない状況のなか、平成13年前後の障害者雇用率は0.8%~1%と法定雇用率に達成しておらず、障害者雇用納付金を納めることで、障害者雇用を半ば諦めていた時期があった。
しかし、障害者就職面接会に参加した際、多くの障害者が仕事を探している実態を目にして、もう一度原点に返り「障害者個々の長所に目を向け雇用率UP!」をテーマとして企業の社会貢献に努めた。
従業員の多くが障害者の雇用とその対応に不安を抱いている中、各職場の作業を見直し、彼らが対応可能な仕事を再検討し取り組んだ結果、社内の多くの部署で受け入れ態勢が整い、徐々に障害者雇用が進んだ。
現在では雇用している障害者12人のうち、店舗の後方支援である社内での配置が9人で、障害者雇用率は3.4%まで上げることができた。
3. 障害者の雇用状況
障害のある従業員の職務は、商品検品・商品整理・縫製お直し・商品出荷・事務・店頭販売と幅広く設定しており、他の従業員と同等に雇用管理している。
(1)商品検品
製品(フォーマルウェア)の傷や汚れ、縫製が綺麗に仕上がっているか、また、針などが混入していないかを検針機により確認する等の検査を行う。
作業の中でも一番大切な部署で、立位での仕事に加え目視による検査のため、集中力と根気が求められる。また、製品のデザインも多種にわたるため検品の仕方も異なり、応用力が必要とされる。
この部署には、聴覚障害のある従業員、上肢機能障害のある従業員をそれぞれ配置しているが、検査台の隣にサポート役を配置することで、彼らが対応困難な部分を補っている。

(2)商品整理
でき上がった検品済みの製品を所定の決められた場所に保管することや、出荷しやすいよう品番と号数を整理し、店頭から入れ替えになった製品のハンガーの取り替えや、1枚1枚の製品にナイロンカバーをかける。比較的単純で、全般的にあまり時間に追われることのない反復的な作業である。
一方、作業環境については、階によりブランドと品番を分けており、倉庫は広く上下2段に製品を整理している。作業には脚立が必要で、品番毎に列が異なり迷路のような環境においては、管理者が管理できる範囲が難しいため、階を指定して整理する範囲と製品番号を限定し、継続して作業が持続できる知的障害のある従業員を配置している。彼らは一度覚えた作業は手際よく能率良くこなしている。


(3)縫製お直し
ミシンの経験が必要であり、座位作業であるため、下肢障害のある従業員を配置している。
知的障害のある従業員は、製品の種類と一枚一枚直しが異なり、応用力が必要となる関係上、一部分を限定した簡単な直しやアイロンがけを担当させている。ただし、自分流の判断で物事を進めていくことが多いため、サポートは欠かせない。

4. 取り組みの内容と効果
(1)障害全般への取り組み
1)配慮
障害者用の特別な設備は設けていない。個々に障害特性が異なる従業員に合わせて、必要な物は各部署で手配し、また直せる物は直して、彼らが意欲的に仕事ができるよう心掛けている。
2)課題点
障害のある従業員の勤務態度は全般的に誠実であるが、自身の障害について、周囲の従業員は特別な意識が無くとも、彼らが負い目を感じることで、対応に苦慮することもあった。
3)取り組みと効果
それぞれの職場において彼らとの接し方がぎこちない時期もあり、様々な食い違いがあったが、現在は、ある程度彼らとどの様に付き合っていけばよいか、徐々に職場の仲間が自分なりに勉強し、相談することで理解できている。
今後においても、今までの経験を生かし、彼ら一人ひとりの適性を見つけて、より過ごしやすい職場作りに努める意向である。
(2)知的障害への取り組み
1)課題
職場として知的障害に対する知識を持っていたつもりであったが、実際に雇用すると、どの様に仕事を進めていくかの判断が非常に難しいことに加えて、彼らにも仕事を覚えるのに時間を要する傾向が見られた。
①不安とか心配な事を誰にも言えず自分1人で考え込んでいた。
②急に理由もなく一週間休んでしまうことがあった。
③時には紙飛行機が室内を飛ぶことなど理解に苦しむことがあった。
④朝の「おはよう」から始まり「ありがとう」、「また明日がんばろうね」という、彼らからの挨拶や声掛けがなかった。
⑤指示を受けた作業が終わっても、その場でじっとしている状態が続いた。
2)取り組み
彼らが行う様々な行動に対して、彼らとのコミュニケーションを取ることの大切さが分かり、50代のお母さん的な存在の従業員を指導担当として1人配属した。
①仕事から始まり、家庭での出来事まで何でも相談できるようにして、様々な不安を少しでも解消できるようにした。
②一つの作業を始める時点で、指示した内容を理解しているか復唱してもらい、その作業の終了時には本人から報告してもらい、その場で確認するようにした。
③作業確認に際して、彼らの個々のレベルに合わせて、しっかり遂行されていれば大いに褒め、誤りやできていない時は指導担当から注意する。
3)効果
①職場との信頼関係ができ、元気で明るい性格や作業意欲、集中力が高まり、現在は率先して作業を見つけられる従業員もいる。
②挨拶においては、周囲からも積極的に、彼らに対して声を掛けるようにしたことで、現在は、逆に彼らから元気な挨拶が率先してなされている。
(3)聴覚障害への取り組み
同じ聴覚障害でも個人差があり一概に決めつける事はできないが、過去の雇用事例から、下記のような事例があった。
1)課題
①自己中心的で職場に馴染めず退職した従業員がいた。
②周囲に手話のできる従業員がいないため、コミュニケーションをとることに消極的になり、自身の判断で処理してしまうことがあった。
③職場での手話の使用状況が十分でないため、依然、筆談が中心のコミュニケーションである。
2)対策
現在では同じ職場の従業員が、本人を講師として手話を教わる機会を設けた。
3)効果
手話講習を通じて簡単な挨拶から始まり、少しずつ手話を教えてもらっており、手話が広まりつつある状況に加えて、お互いに親交が深まるきっかけともなっている。
5. 障害者雇用の課題点
(1)課題
雇用している障害のある従業員のうち、店頭配置の比率については、現在2名の肢体不自由のある従業員を店舗に配置しており、全体の0.3%である。
店頭販売については、障害者を対象に募集しても応募は皆無である。仮に採用対象となった段階でも、最終的に他事業所である各店舗での評価が厳しく採用許可が出ない状況である。
彼らが百貨店や商店等の店頭で販売員として単独で勤務することは、社内での雇用と異なり、他社の事業所での勤務であることから、それらの事業所の理解も必要となる。彼らが単独で店頭販売ができるかといった疑問に加えて、店頭販売の事業所の理解が得られるかという課題が存在している。
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