事業所名

デンソー太陽株式会社（株式会社デンソーの特例子会社）

所在地

愛知県蒲郡市

事業内容

自動車用コンビネーションメーターの組立及び関連部品加工

従業員数

75名

うち障害者数

69名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	6	部品製造(4)、生産管理(4)
内部障害	59	部品製造(50)、生産管理(9)
知的障害	4	部品製造(2)、生産管理(1)、事務(1)
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 事業所の特徴～福祉機関との一体的な支援体制～
3. 取り組みの内容
4. さいごに

事業所外観

1. 事業所の概要

（1）設立の経緯

　当社は、1984年3月に株式会社デンソーと社会福祉法人太陽の家が共同で出資し、愛知県蒲郡市に設立した特例子会社である。
　当時、蒲郡市で繊維製品の製造業を営んでいた故 明石六郎氏が、社会福祉法人太陽の家創立者である故 中村裕博士の活動に共鳴し、中村氏に対して同市への進出を強く要望する一方、自動車部品メーカーの株式会社デンソーの協力を得て設立した。

（2）概要

　2005年の実績は売上額47億円で、自動車用コンビネーションメーター74万7千台、フューエルセンダ（ガソリン残量の計測装置）229万台を生産している当社は、株式会社デンソーの有力な協力工場となっている。

2. 事業所の特徴～福祉機関との一体的な支援体制～

　特例子会社制度の特徴は、障害があっても従事しやすい作業種目や働きやすい環境を備えることにより、障害者を雇用しやすくすることである。その結果、特例子会社が雇用した障害者は親会社が雇用したものとみなされることで、法定義務の障害者雇用率を達成しやすくするといったメリットがある。
　ところが、当社では単に雇用率を達成するだけにとどまらない、独特な形態で事業を運営している。

（1）職業生活の自立に向けた一体的支援

　生産面はデンソー太陽株式会社が担当し、生産の効率アップをハード及びソフトの両面から支えている。
　一方で、同じ敷地内には太陽の家愛知事業本部が寮等の施設を備えており、生活の自立支援や健康管理を行っている。就労継続のためには生活面の安定も欠かすことができない。暮らしの問題点を早期に発見、解決し、集中して対応できる環境を創業以来重要視していることは、昨今の障害のある人たちの自立支援の先駆けとも言える。障害者自立支援法の精神が既にこの場で実践されている。
　しかしながら、このような職場と生活における一体的な支援ができる環境の中にあっても、退寮して近隣のアパートやマンションから通勤している社員が非常に多いが、この現象もまた自立支援の効果であり、周辺住民の当社に対する理解が進んでいる結果であると言える。

（2）福祉的就労からのステップアップ

　同社工場内には、身体障害者授産施設（定員50人）と福祉工場（定員100人）を備えている。これらは社会福祉法人太陽の家の所属であるが、作業内容は、自動車部品の製造であり、当社が作業の支援を行っている。これらの福祉施設でスキルアップした利用者は、授産施設から福祉工場へ、福祉工場から当社へとステップアップしていくことができ、彼らにとって大きな目標となっている。一方、障害の状態や健康状態などが悪化し、作業強度を低下せざるを得ない状態になったときは、その逆の方向を辿ることも可能であり、一般企業と福祉事業のコラボレーションが産んだ成果と言える。

3. 取り組みの内容

（1）作業環境

　工場内は、徹底的にバリアフリー化が施されている。
創業以来、生産の主力となっている自動車用コンビネーションメーターは、座った状態で組み立てることができるよう環境設定している。
 

座位でコンビネーションメーターの組立作業を行う

　加えて、障害のある社員が作業しやすいよう、独自に装置・治工具類を開発し現場に取り入れており、自動車部品メーカーの得意とする工夫が、彼らのために十分に生かされている。
 

当社で考案・製作した治工具類

不良品発生件数（左）と「品質方針」を掲示

　一方で、彼ら一人ひとりに対する生産者としての責任追求は、他の一般企業と全く異なったところはない。当日の生産状況をリアルタイムで工場内に電光掲示したり、不良品発生件数を掲示板に張り出したりして意識づけを行っている。
　加えて、「デンソー太陽株式会社品質方針」を社内に掲示し、常に社員に対して品質の維持向上をアピールしている。そこには「障害があるから…」といった甘い考えはみじんも感じられない。

「デンソー太陽株式会社　品質方針」
【モットー】　良い品質が我らの仕事を確保する　良い品質で信頼されるデンソー太陽を！
《基本行動》
　①やるべきことは「キチンと決める」
　②決められたことは「キチンと守る」
　③問題があれば「キチンと是正処置する」
　④やった結果を決められた通り「キチンと記録する」

《品質に関する基本方針》
　1．「品質第一主義」の徹底
　2．源流段階まで遡った「未然防止・再発防止」の徹底
　3．「迅速な異常報告」と5ゲン(現場・現物・現実・原理・原則)に基く「的確な処置」の徹底
　4．「トップの強力なリーダシップ」と「全員参加による品質保証活動」の推進
　　　　当社は、モットー・基本行動及び品質に関する基本方針を上記のように定め次のことを実行する。
　　①従業員一人一人が技能、知識と品質意識の継続的向上を図り、お客様に満足して頂ける製品作りをとおして社会に役立つように行動する。
　　②品質マネジメントシステムを確立し、要求事項への適合を確実にするとともに、品質マネジメントシステムの有効性を継続的に改善する。
 

4. さいごに

　当社は、創業者らの思いがそのまま事業全体に反映され、一般企業と福祉事業がうまく融合し障害者の自立を促す大変ユニークな形態をとっていることが障害者の自立支援を促す要因となっている。
 

親会社及び社会福祉法人との関連図