事業所名

スーパーサンシ株式会社

所在地

三重県四日市市

事業内容

食料品小売業

従業員数

839名

うち障害者数

16名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	3	宅配のピッキング、買い物カゴ・カート回収、ゴミの分別
肢体不自由	4	商品の計量、ゴミの分別
内部障害	0
知的障害	9	商品の計量、買い物カゴ・カート回収
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯
2. 取り組みの内容
3. 取り組みの効果・今後の展望

事業所外観（本社事務所）

店舗（こもの繁盛店）

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯

（1）概要

　当社は、四日市市に本社を置くスーパーマーケットであり、昭和22年の創業以来、四日市市内に6店舗、その他県内に6店舗を展開している。

（2）障害者雇用の経緯

　本格的に障害者雇用に取り組むことになったのは、法定雇用率未達成であった平成12年である。従来、身体障害者を中心に雇用していた当社は、スーパーマーケットという小売業であるために、商品の陳列や管理のことを考え、内部障害者の採用を中心に取り組んできたが、求職数が少なく、小売業に適していると考えられる人材の採用が困難な状況であったため、障害者の採用枠を広げ知的障害者も採用の対象とし、面接の結果、一定の条件を満たしていれば、可能な限り採用した。
　なお、採用にあたっては、四日市公共職業安定所や三重障害者職業センターを活用し、就職説明会への参加に加えて、養護学校の職場実習の受け入れなど取り組んだ結果、平成18年3月末時点で2％を超える雇用率を達成するまでになった。
　また、障害者雇用が進んだ背景には、最初から多人数を採用するのではなく、まず1人を採用することで、店長や従業員全員が密に関わることができ、お客も含めて障害への理解が深まったこともあげられる。また、彼らの配置先を自宅に可能な限り近い店舗とすることで、家族が常に様子を見に来る事ができることも、継続雇用の要因として考えられている。

（3）障害者雇用の考え方

　当社では、平成6年頃から、社員には役職をつけず「～さん」と呼ぶことにしたことをきっかけに職場の雰囲気が変わった。
　なお、社長は自ら各店舗を週に一度巡回し、社員を含めて一般の従業員と接している。トラブルや苦情、困ったことなどは直接社長に伝わるので、対応は迅速である。
　また各店舗の店長においては、6ヶ月に1回の契約更新の際に彼らと面談し、直接コミュニケーションをとることで、一人ひとりの考えや悩みなどを把握している。
　障害者雇用は「男も女もない、健常者も障害者もない」という機会均等の考えの下で推進している。

2. 取り組みの内容

（1）採用

　採用にあたっては、ジョブコーチ制度、トライアル雇用等を活用した。特にジョブコーチ制度は、生活面を含めたフォローアップがなされるので有効であった。
　実習や雇用のための訓練を受けて雇用した従業員は約80％を占め、その中心は知的障害のある従業員である。実習から雇用へかなりの確率で移行しており、実習の活用が雇用拡大の要因となっている。
　採用の判断は実習等を受け入れた各店舗に任せており、人事企画及び人事課は本人の面接に関する調整や配属について可能な配慮をすることに留めているが、トラブルが生じた場合は、店舗と本部で共に解決を図る体制をとっている。
　面接においては、お客や職場の従業員とのトラブルを起こす可能性の有無で採否を判断している。なお過去には、作業時間中の私語があまりにも多いので採用を見送ったケースがある。
　なお、採用の後に、本人の申告により障害があることを把握したこともあった。
 

（2）労働条件の設定

1）勤務時間
　1時間の休憩をはさみ、概ね5～6時間で設定している。短時間勤務を設定している従業員は、4人以外は8時又は9時から15時までの勤務である。

2）給与
　身体障害のある従業員については、各々額は異なるが、昇給及び昇進を設けている。
　知的障害のある従業員については、当初は最低賃金除外申請を出していた時期もあったが、能力的に問題がないことを理解してからは申請することはなくなった。
 

（3）指導・訓練

　採用後の訓練について、パートナーと呼ばれるパート従業員（主に女性）が障害のある従業員に対し、概ね3ヶ月間、OJTにより指導している。現在までに採用した障害のある従業員については、比較的職業能力は高く人材的に恵まれているが、能力面に加えて職場内の人間関係が良く、トラブルに繋がるような事柄については、店長を含め事業所全体で取り組む姿勢が、彼らの継続雇用に繋がっている。
　また、パートナーの子どもの年齢が、新規採用している知的障害のある従業員の年齢と近いことがあり、障害に注目するのではなく、自分の子どもと同じような態度で接することができるため、彼らと良好な関係が保たれている。
　また、当社の特色のひとつとして、店舗自体をオープンに設計しており、水産や農産部門であっても直接お客と接することができるよう、店舗スペースと作業スペースに仕切りを設けていない。このような職場環境も、彼らの社会性を養う要因となっている。
 

（4）職務内容の設定

　各店舗、部門により異なり、障害のある従業員は全店舗で合計10種にわたる職務に従事している。障害種別では、知的障害と身体障害が各々5種類となっている。
　職務設定については、従来障害のない従業員が行っていた本来業務や周辺業務のうち、適性に応じて設定している。

1）宅配のピッキング作業
　インターネット等で注文を受けた商品を店舗内でピックアップしている。商品の確認はバーコードを通して行うために間違うことはない。
 

商品の金額を確認する

2）農産部門
　主に商品を規定数量ごとに袋詰、計量し、店出しをしている。

3）庶務
　店舗内や駐車場の買い物カゴやカートの回収、資源ゴミの分別などに従事している。
　知的障害の特性に応じた配慮として、採用当初は計量の秤に印をつけていたが、最近では印がなくても計量ができるようになっており、作業上、特段の配慮は必要なくなってきている。
 

（5）障害者雇用助成金の活用

　車いす用トイレや階段昇降機の設置にあたっては、障害者雇用助成金を活用した
 

（6）福祉機関等との連携

1）作業場の提供
　障害者が頻繁に出入りするショッピングセンター型の店舗では、地域のNPO法人みどりの家が運営する作業所に場所を提供することによって、実際に利用者が作業している様子を従業員やお客が見ることのできる環境が、更に障害者雇用を拡大する一要因となっている。

2）リサイクル作業
　現在、地域のNPOと協力しながら、牛乳パックや発泡スチロール、トレーのリサイクルにも取り組んでいる。
 

3. 取り組みの効果・今後の展望

（1）効果

　障害者雇用に積極的に取り組むことによって、従業員の障害に対する見方が変わった。知的障害のある従業員と接する機会がこれまでにあまりなかったため、当初は一歩引いて接する様子が見受けられ、店長においても採用に消極的になる状況があったが、人事課で1名を採用し、職業教育をする中で本人の適性を見極め、次いで農産部門と惣菜部門で試験的に障害者を採用した結果、接客や従業員間でのトラブルがほとんど見られなかったことから、1店舗ずつ採用を拡大していくことに成功している。
 

（2）今後の展望

　今後は、特に知的障害者雇用の拡大を目指している。各店舗における彼らの勤務状況から、戦力として確認することができたことから、現時点で障害のある従業員を配置していない店舗においても順次配置することも考えている。
　またリサイクル作業等においても、当社の理念の一つである地域貢献という観点から、今後も継続して取り組んでいく意向である。このような雇用以外で地域貢献の一環として行う取り組みが、企業と福祉の今後の連携のあり方を示すモデルとなる。