じっくりと適性を把握し、障害者の潜在能力を最大限に引き出す
- 事業所名
- 有限会社日新製材所
- 所在地
- 京都府亀岡市
- 事業内容
- 一般製材業、住宅資材製造販売
- 従業員数
- 29名
- うち障害者数
- 12名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 11 機械管理、選別、作業補助、清掃、結束 精神障害 1 機械管理 - 目次

1. 事業所の概要
昭和26年に京都市右京区にて製材業者として設立した当社は、昭和38年に亀岡市に本社、昭和40年に工場を移設。平成2年に亀岡市に小泉工場を設置し現体制となる。
創業以来50年以上、「北洋材製材のパイオニア」として、主にロシアから輸入した北洋材(原木)を製材・乾燥し、住宅資材として国内の住宅メーカー等に販売しており、コンピューター管理によるオプチマイザーシステムを導入し歩取りの効率を高め、また北欧から最新鋭の乾燥機を輸入し品質の向上を図るなど、常に技術革新を行いながら生産性の向上を図っている。
ここ10数年、バブル崩壊や住宅建設減少の影響から多くの同業者が撤退していく中、たゆまず設備投資を行ってきた結果、今日、企業体質の改善や競争力の強化となって成果を上げることができた。ここ数年、景況もどうにか安定してきた中で、従業員の雇用も維持している。

2. 障害者雇用の経緯と現況
(1)経緯
昭和42年頃、亀岡市にある障害者福祉施設「松花苑」の金築寮長から、施設や家庭で生活している知的障害者が少しでも社会に貢献できるよう協力して欲しいとの熱心な依頼に対して前向きに考えた結果、一度引き受けてみようと4人の知的障害者を実習生として受け入れたとこと、各人とも勤労意欲が高く、熱心に仕事に取り組む姿勢が見られたため、3人を採用したことが障害者雇用の始まりである。
その後、昭和52年には「松花苑」から更に3人を採用するほか、その後も八木中学校、丹波養護学校等からの採用も加わり、また、平成に入っても数年ごとに障害者を採用し、障害のある従業員は漸次増加した。
彼らはいずれも2週間の実習期間を通じて適性を見てから採用、採用後は勤務状態をみて、1年ないし2年後に各人の能力や適性に適した職種に配置している。
なお、障害者雇用に取り組みにあたっては、当初から京都府高齢・障害者雇用支援協会とは当初から相談を行い、職業生活相談員2名と職場定着推進チームを設置している。また各種の講習会等にも参加し、障害者の定着・雇用継続には積極的に取り組んでいる。
これらの取り組みにより、平成7年には障害者雇用優良事業所京都府知事表彰を受賞した。
(2)障害者雇用の状況
障害のある従業員12人は全員男性であり、本社工場で2人(知的障害)、小泉工場で10人(知的障害9、精神障害1)を配置している。全従業員の4割以上を占め、現場の主な戦力となっている。定年により退職した従業員はいたが、途中退職した従業員はいない。
1)小泉工場
①Aさん(精神)(勤続26年)
テーブル機械制御。大割されてきた材木を中割する機械の管理
②Bさん(知的)(勤続22年)
自動結束機補助。結束作業の前段の木材の等級選別作業
③Cさん(知的)(勤続14年)
オプチマイザーで製材管理(画像処理)。木材の選定、機械管理を行う
④Dさん(知的:重度)(勤続29年)
板割りされてきた材木を小割りする作業の補助作業、工場内の清掃等雑作業
⑤Eさん(知的:重度)(勤続29年)
結束機補助。結束機にかける前に寸法に応じた製品を揃える作業
⑥Fさん(知的)(勤続14年)
結束機補助。小割りされてきた材木を選別し、結束ラインに流す作業
⑦Gさん(知的)(勤続11年)
自動結束機管理。単独で結束作業に従事
⑧Hさん(知的)(勤続3年)
結束、製機工見習い。結束機で結束作業を行いながら製材機械の操作技能を習得
⑨Iさん(知的)(勤続6ヶ月)
結束機を使用した結束作業
⑩Jさん(知的)(勤続11年)
選別作業
2)本社工場
⑪Kさん(知的)(勤続10年)
工場構内での片付けや清掃作業・雑務
⑫Lさん(知的:重度)(勤続3年)
結束作業、選別・積込作業




3. 取り組みの内容
(1)オプチマイザーの導入
通常、製材業の木取等の作業では、作業者の判断と熟練した技術が必要だが、コンピュータシステム導入の機械を据え付けることによって、知的障害があっても簡単な操作だけで使用できるようにした。オプチマイザーは、裁断する寸法を設定しておけば原木を自動的に判断し、適した木取りを用意し、自動的に所定寸法に切断する画期的なシステムである。

(2)障害者雇用助成金の活用
自動結束機の導入にあたっては、助成金を活用し、障害者の技術的・肉体的な負担を軽減した。
その他、通勤用バス購入や職業コンサルタント配置、また業務遂行援助者配置の際に助成金を活用した。
(3)知的障害者に対する取り組み
1)先輩の仕事ぶりを見てもらう
職場の先輩、特に出身校や施設の先輩の仕事ぶりを見てもらうことで、「自分も努力したら同じ仕事ができるようになる」「くじけないで続けていこう」と頑張る意識が芽生える。
2)じっくりと適性を見極める
障害者を雇用し継続雇用していくには、焦らず仕事に馴染んでもらうことが一番である。採用当初1~2年は様々な作業を経験してもらいながら「慣らし」をすることにより仕事への余裕と、「これくらいのことならできる」という判断ができるようになる。
2年位たつと体力も伴い適応性も高まる。「こんな能力があるのか」と驚くほどの力を見出すこともがあるので、適性を見て多少レベルの高い職種へと本格的に職場配置を行う。
3)障害特性に配慮し配置する
対人関係が不得手な従業員がいるが、相性が合わない従業員とはペアを組ませないことや、一人でいることを好む従業員には単独でできる部署に配置するなど、職場配置には気を遣う。なお、障害のある従業員だけのグループにせず、必ず障害のない従業員を配置することで、業務上のミスを防ぐとともに、技術指導を行う体制を設けている。
障害のない従業員の職場にうまく障害のある従業員が入ることによって、職場のチームワークがよくなり、仕事の能率も上がる効果も見られる。
4)研修旅行により意欲を引き出す
年一回は全員を同業者の現場を訪問する研修旅行を行っている。また2年に1回の割合で5月の連休を利用し、アメリカへ原木の森を見に行くなど海外研修旅行を行っている。このような研修に費用をかけることによって全従業員のやる気を引き出し、意欲と定着率の向上につなげている。
4. さいごに
障害者雇用・定着には焦りは禁物である。葉田吉彦代表取締役社長社長は、採用してから2年間はじっくりと育成・指導し、本人の適性能力を見極めてから、最適の職場に配置することによって、本人の持つ潜在能力を上手に引き出し、立派な技能労働者として育て上げている。今後の障害者雇用における着実な前進が期待できる。

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