管理職と社会福祉活動の両立を支える
- 事業所名
- 株式会社誠和医科学
- 所在地
- 奈良県奈良市
- 事業内容
- リハビリテーション ・ デイサービス ・ 訪問看護 ・ 居宅介護、有料職業紹介
- 従業員数
- 30名
- うち障害者数
- 2名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 1 事務長 内部障害 1 一般事務 知的障害 0 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要
(1)概要
当社の高の原リハビリセンターは平成11年から事業を開始し、20kmほど離れた場所に設置した訪問看護ステーションあすか田原本と合わせ、県下で事業を展開している。
夕刻の「高の原リハビリセンター」玄関の車寄せには多くの送迎車が待機し、スタッフの介助を受けて、患者さんの送迎が行われる。施設内は、北欧製のトレーニングマシーンが並び、コーチ役の理学療法士や作業療法士、看護師の指導の下、午前10時から午後4時まで、心と体のリハビリトレーニングが行われている。
当センターは「デイサービス」とリハビリテーション・障害予防のための「フィジオセンター・ポシブル」、「訪問看護ステーションあすか」を併設している。
(2)経営の理念
当社は、「スタッフが自慢の会社にしたい」を基本理念としている。身近な人、患者さん、地域の人、この国の人、この世界の人をすべて大切にする。そのためには、先ず自分たちが変わらなければならない。専門性を追求し、プロとして誇りを持って仕事が出来るスタッフ集団でありたい。そのような思いが、この基本理念には込められている。
代表取締役は、現在、畿央大学健康科学部特任教授の職にあり、理学療法・作業療法の研究成果をリハビリテーションという実践の場で社会に還元をしている。
日本のリハビリテーションへの取り組みは遅れているなか、事故や病気で受障した人々が自分らしい生活をいかに送ってゆくことができるのか、言い換えれば自立をしてゆけるのかについて大きな課題を残しており、病院が主体となっているリハビリテーション(訓練)を生活に根ざしたリハビリテーションに繋げてゆきたい展望を持っている。現状は介護保険給付としてのリハビリテーション事業の展開を行っているが、今後は自費でのリハビリテーションへと事業領域を拡げていくことについて現在取り組んでいる。
2. 障害者雇用の経緯と取り組み
(1)経緯
高の原リハビリセンターを開設し間もなく、現事務長の根木慎志さんが当センターへリハビリで通院していたことをきっかけに、障害者雇用の取り組みが始まった。事務長の車いすバスケットボールへの情熱、そして何としてもシドニーパラリンピックへ出場したいという熱い思いで2日に1回、午後7時半から深夜の12時頃までリハビリトレーニングを繰り返した結果、日本代表のキャプテンとして出場することができた。このことを契機にその後、企業として積極的な障害者雇用の取り組みを進めると共に、今迄の雇用で培った経験を生かし、他の社会福祉施設等で働く障害者3人を送り出している。
(2)職場環境の改善
現在、根木事務長と1名の身体障害のある社員が勤務をしているが、障害者雇用を円滑に進めるためには各事業場の設備面で様々な工夫が必要となる。
訪問看護ステーションあすか田原本では、平成14年に第1種作業施設設置等助成金を活用し身体障害者用トイレの増築を行った。また平成15年には、高の原リハビリセンターを新築する際に、身体障害者用トイレとエレベーターの設置にも同助成金を活用した。
今後について、平成19年には宇陀市と奈良市に各々新しい事業場を開設する予定。障害者雇用を見据え、原則として平屋建築の設定をしている。
(3)根木事務長の活動
①就労にあたって
根木事務長は、平成14年1月7日に公共職業安定所の求人に応募し、当社に採用、高の原リハビリセンターに配属となった。当時の求人票によると、仕事の内容は伝票整理、電話応対、帳簿記入、来客応対であったが、この時、既に根木事務長は、その経歴において求人票に記載された仕事の内容には収まりきれない人生を持っていた。
ここで、根木慎志さん自身の経歴書から彼の「人生」と「人となり」を紹介しよう。
『小・中・高では、柔道・水泳・サッカーとスポーツ少年だったが、高校三年生のとき、突然の交通事故により脊髄を損傷。その結果、車いすの生活を余儀なくされ悶々とした生活を送る。失意と絶望の中、あるきっかけから「車いすバスケットボール」と出会い、その後、持ち前のポジティブ精神とリーダーシップで国内トップクラスの車いすバスケットボールプレーヤーとして成長。西暦2000年に開催されたシドニーパラリンピックでは、男子車いすバスケットボール日本代表チームのキャプテンまで務める。度重なる海外遠征の経験や諸外国の選手たちとの交流などを通じて外国と日本の障害者に対する関わり方の大きな違いを感じる。そのころから今後、日本の社会がどのように変化をすれば障害者が楽しく素敵に暮らしていけるのかを真剣に考えはじめ、現在では「出会った人と友達になる」という独自のライフテーマをモットーに人と人との「つながりの環」を通してすべての人たちが友達になり、元気で幸せに生活できるまちづくりを目指す活動を行っている』。(経歴:原文のまま)

②仕事を通じての出会い
職場では、仕事を通じていろいろな人々との出会いがあり、ひとつの出会いが仕事のみならず人生をも変えてしまうことがある。根木事務長の、当社やその職員、患者さんたちとの出会い、併せてスポーツや福祉活動、学校での講演活動等を通じての出会いが縁となり、人生や仕事に大きな効果を与えている。
根木事務長と同期の明道知巳副センター長は、根木事務長について次のように話す。 「根木さんと職場で4年あまりの期間を一緒に過ごし、その間、車いすのハンディがあるにもかかわらず、お会いした当時も今も全然変わっていません。むしろ、変わらされたのは私の方です。様々のことを彼には気付かされ、そして教えられました。 」
③総合学習への取り組み(車いすバスケットボール)
奈良市内にある奈良育英中学校・奈良育英高等学校は、総合学習の一環として、根木事務長を講師に車いすバスケットボールの体験学習を行っている。根木事務長から車いすバスケットボールに使う車いすの特徴や、ルールを説明、デモンストレーションを行った後、慣れない車いすの操作に苦労しながらの実践学習を行う。
根木事務長は、障害者スポーツ支援センターでの活動を始めとして、日常の仕事だけにとどまらず、ボランティア活動を続けている。学校向けの講演も4回目となった。総合学習の場で、車いすバスケットボールを通じて障害のある人々への理解と共感を求める活動を継続的に行っている。


3. さいごに
仕事を覚え、能力を磨いてゆく過程には喜びも苦しみもある。まして障害者の場合には、それらはより一層大きなものとなりうる。一方、企業は業績を伸ばす使命があり、障害者雇用において厳しい選択を迫られる場合もある。
当社の場合は、経営理念に基づいた障害者雇用の取り組みがなされており、それなりの成果となっているが、今後は、身体障害者のみならず知的障害者の雇用にどれだけ取り組めるかが大きな課題である。
本事例は、事業所の取り組みと併せて、事務長を務める障害者についても紹介しているが、障害に関わらず、職務や社会福祉活動に積極的に取り組むことによって、人生に前向きに生きてゆくことができることを示している。
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