知的障害者一人ひとりの長所を生かし、職場定着を図る
1. 事業所の概要
（1）概要
奈良県のほぼ中心部、畝傍山、天の香具山、耳成山のいわゆる大和三山に囲まれた橿原市において、当社は昭和48年に貸しおしぼりのリース業として創業し、昭和59年には株式会社として法人化した。
現在の取扱商品はおしぼりのリースのみにとどまらず、清掃や洗浄関連商品を含めて、総合リース業としての着実な歩みを進めている。
（2）企業理念・経営理念
「汝のせられんと欲することを人に施せ」を具体的な行動基準として具現化されたものが次の経営理念となっている。
①私達は、常により良い商品と充実したサービスで、清潔・快適を提案し、地域社会に貢献できる会社を目指します。
②私達は常に時代を先取りし、ブランドとしてあてにされる、企業革新に挑戦し続けます。
③私達は、常に自己研さんに励み、自主性と創造性を発揮し、より豊かな生活と働きがいのもてる会社を目指します。
2. 障害者雇用の経緯
雇用のきっかけは約19年前、昭和から平成に年号が変わる年に、地元に近い吉野郡大淀町の養護学校の先生からの働きかけにより、重度の知的障害者を雇用し、現在も本人は継続就労している。
当社はその後も現在に至るまで、少しずつではあるが障害者雇用に継続して取り組んでおり、「気付き」「きっかけ」「感謝のこころ」そして「継続」という4つのキーワードがその原動力となっている。
社長は、障害者雇用に取り組むようになったきっかけについて、次のように語っている。
「創業から10年ほどは苦労の連続であった。会社の経営、事業経営を軌道に乗せることが第一の目標だった。清潔で安くて良いものを市場に提供してゆくことが継続できれば、いつかはその領域でナンバーワンとなれるに違いないという信念があった。そして一定の目処がつき、将来に確信が持てるようになった時には、自分たちの努力の結果だと思っていた。心の余裕がなく自分たちの頑張りしか見えていなかった。障害者雇用に前向きに取り組もうとしたのがちょうどこの頃であった。障害者の方を雇用し、人を育て、教え・導く事に正面から向き合った時に、家族や周囲の人たちの支えがあってこその自分たちであると実感をし、“お陰様で”と思えるようになった」
なお当社は、平成17年度には障害者雇用優良事業所として奈良県障害者雇用促進協会長表彰を受賞している。
3. 取り組みの内容
（1）指導方法
障害者雇用には時として思いもよらないアクシデントが生じる。複数の障害者が勤務をしているので、その中の1人が何かのきっかけで大声を出すことも起こる。それが情緒が不安定な時期に重なると他の障害者へ大きな影響を及ぼしてしまう。こんな時には一人一人の心身の状況や体調を注意深く見守り、家庭とも連絡を取りあいながら、個々に応じた慎重なケアが欠かせない。
採用当時にはできなかった作業が、ていねいな指導や援助を行うことによってできるようになり、知的障害のハンディキャップを徐々にではあるが克服していく支援をしている。
知的障害の場合は、特に他者とのコミュニケーションがとれるようにすることが指導の要点となる。指導の機会はOJTのみならず、実効性を上げるためOFF－JTも含め、始業前や終業後、さらには社員旅行等の行事などの機会を通して「意義のある仕事をすること」、「感謝の心を持つこと」について、本人達にはたらきかけている。
（2）安全への配慮
障害の程度や各人の特性に合わせ、おしぼりの自動整列機を扱う部署、おしぼりを梱包する部署、清掃担当の部署などに配置し、それぞれの部署で他の従業員と共に作業を任せている。
工場内の1階では、おしぼりを洗浄する容積120kgのウオッシャー（洗濯機）2基及び50kgのウオッシャー4基、また大型乾燥機4基が常時稼働をしている。また、2階には12基の自動整列機と自動包装機を設置し、顧客先の要望に合わせて、現在4種類のおしぼりを、合計1日平均65，000本程度配達可能な体制となっている。
障害のある従業員には、大型洗濯機におしぼりを入れる作業を任せているが、機械の操作は他の従業員が行う。彼らが誤って機械を操作したり、触れるなどして事故を起こさないよう、日頃から目配りと気配りが欠かさず、安全については万全の配慮を行っている。
4. 今後の課題
障害のある従業員一人ひとりの良いところを生かし、それぞれの個性を大切にする。あえて一つの枠にはめず、伸び伸び生き生きと仕事の喜びを体験させたいと考えている。
「縁」という言葉があるが、人間だれしもどこかで誰かとつながっている。そのつながりを意識し、これからも強めてゆく。我々は廻りの人に支えられていると同時に、廻りの人を支えており、助けられる時もあれば助ける時もある。人はすべて助け合いの輪の中にいると言っても過言ではない。
人は一人では生きられない。人が生きるということは家族や周囲の人々のおかげである。事業を支えるのはまさしく人である。人と人のつながりを大切にして行く事こそが企業に求められ、それが事業継続の根本となる。障害者雇用の原点もおなじであり、「人を大切にする」理念はこれからも不変であり、確実に次代へ受け継いでいきたいと考えている。
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