2006年度作成

事業所名

株式会社岡本鉄工

所在地

山口県下関市

事業内容

船舶用部品製造

従業員数

45名

うち障害者数

6名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	5	溶接、組立、仕上
肢体不自由	1	溶接
内部障害	0
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯等
2. 能力給制度の導入と適任部署への配置等
3. 聴覚障害に対する取り組み
4. 下肢機能障害に対する取り組み
5. 今後の展望

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯等

（1）概要

　昔から海上交通の要として栄えてきた下関市の南端に位置する、面積約11平方キロメートルの彦島において、林立する造船や水産関係の工場の中に当社は設立している。
　当社は、船舶用部品製造業として昭和28年に創業、船舶用の扉、ハッチ、通風筒、マンホール等の製造に携わってきた。平成16年にベトナム社会主義共和国に工場を建設したことから、現在、ベトナムからの研修生を数名受け入れ、実地指導を進めている。
 

（2）障害者雇用の経緯と現況

　当社の工場では、従業員が鉄板の切断、溶接、組立、塗装などの各工程に従事しており、障害のある従業員6人を雇用している。全員、下関市内の家庭から自家用車で通勤している。
　会長が障害者雇用に理解があり、取り組みの歴史は長く、既に退職した従業員もいる。
　当社は障害者職業生活相談員を配置し、現在もハローワークに障害者雇用の求人登録をしている。また、これまでも地元の知的障害養護学校の高等部生徒を職場実習生として受け入れている。
 

2. 能力給制度の導入と適任部署への配置

　岡本智恵子総務部長は「給与については、10年以上前より“能力給制度”を導入しています。勤続給を低く設定していますので、障害者や新入社員にも昇級のチャンスがあります」と話す。
　年に2回（1月・7月）実施する人事査定に基づき、必要であれば配置替えも実施する。この取り組みによって、適材適所の職場が実現し、従業員の勤務意欲を高めることにつながっている。
　聴覚障害2級のAさんは、以前、船舶用マンホールの製造部門において、鉄板の切断から製造に至る一連の工程を任されていたが、作業工程の理解に困難があることが次第に把握され、人事査定に基づいた検討を通し、ベトナムとの間での輸出入や加工作業に携わる輸出・輸入部門に転属した。その結果、現在Aさんはベトナムで製造し当社に搬入した製品の加工作業に実力を発揮し、昇給も実現している。

3. 聴覚障害に対する取り組み

（1）手話の活用と配慮

　岡本総務部長は、手話を1年間勉強し、聴覚障害のある従業員との会話に手話を活用してきた。彼らへの特別な対応はできるだけ控えたいという思いから、彼らが希望した場合に手話を用いている。
 

（2）視覚情報の併用

　給与額にも反映される査定結果の報告の際には、図表プリント等の視覚情報による資料を用意し、必要に応じ岡本総務部長が手話を併用し、説明している。
　また、視覚情報の併用に関しては、社内に数箇所設置しているホワイトボードに文字・数字等を記しながら、必要なプリント類を添付し、重要な情報を正確に伝える取り組みも成果を上げている。
 

（3）リーダー的相談役の配置

　船舶用扉の製造部門のリーダーとして仕事に従事している、聴覚障害4級のBさんは、周囲への面倒見も良く、聴覚障害のある従業員からの悩み相談にも誠実に応じる人柄から、彼らのリーダー的存在ともなっている。
　仕事上の悩みなどを聞き、解決に向けた方策を提案するBさんは、当社にとっても心強い存在であり、聴覚障害のある従業員を雇用した際には、まずBさんのもとに配属させ、円滑なコミュニケーションが維持されるよう配慮している。
　同じ障害のある人同士で悩みを話し合い、アドバイスする「ピア・カウンセリング」をBさんは担っている。
 

（4）障害者雇用助成金の活用

　聴覚障害2級のCさんは、鉄板の切断部門に配属している。Cさんの仕事を支えているのは、第一種作業施設設置等助成金を活用して購入した図形モジュール・コンピューターである。
　CADデータ（コンピューター用の図面データ）が入力されたフロッピーを、モジュール・コンピューターに挿入しスイッチを入れると、巨大な切断機がデータの指示通りに鉄板を切断する。助成金の活用がCさんの作業遂行に大きな効果を発揮した。
 

　フロッピーは、2階の事務室で勤務するデータ作成担当者からCさんに届けられるが、受け渡しのたびに階段を上り下りする必要がないよう、フロッピーや指示書類をカゴに入れ、2階からヒモでゆっくり降ろしCさんに渡す。カゴを降ろす際には、Cさんに携帯メールにより伝える。このやりとりは、日に2～3回行っている。
 

（5）海外研修生との交流

　ベトナムから受け入れている研修生の研修期間は3年間であるが、彼らの大半は、来日時には、挨拶程度の日本語しか話せない。
　「ベトナムからの研修生たちは、聴覚障害のある従業員たちと、心が通じ合っている様子です。研修生たちを、聴覚障害者が働く部署に配属させると、互いにとても良い効果があることが最近わかりました。」と岡本総務部長は話す。
　コミュニケーションに困難を感じることのある人同士に“共感”が生まれ、心が通じ合う。
 

4. 下肢機能障害に対する取り組み

　幼少時の小児麻痺によって右足機能に障害が残り、歩行には松葉杖を使用している下肢機能障害2級のDさんは、昭和42年から雇用しており溶接一筋の人生を歩んでいる。
　Dさんは、立ち作業は困難なため座位で作業しているが、鉄製やステン製の船舶部品を反転する時などには、かなりの重量が腕にかかり、腕の靱帯を切断し約1ヶ月間の療養生活を余儀なくされたこともあった。
　そのため、重量物の反転や移動等の作業を安全に行えるよう、第一種作業施設設置等助成金を活用し、ハンドリングロボット（バランサーマシン）を導入することによって、Dさんは座位姿勢のままで製品反転や移動を円滑に進められるようになり、負担は大幅に軽減した。
　「Dさんは、当社に長くお勤めいただいている方です。Dさんのために、この機械の導入を決めました。」と岡本総務部長は話す。
 

5. 今後の展望

　現在の厳しい経済事情において全国の事業所は独自の営業戦略を打ち立て、未来を切り開いていかねばならない状況のなか、当社は障害者雇用を今後も推進していく意向である。

　障害者の「働きたい」という熱い願いを叶えることを通し、企業の社会的責任を果たしつつ、に業績も上げていく企業経営を今日も続けている。

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