障害者支援機関と連携し知的障害者の職場復帰を図る
- 事業所名
- 有限会社三共企業体
- 所在地
- 徳島県三好市
- 事業内容
- 砂・砂利の採取・販売、自動車整備
- 従業員数
- 10名
- うち障害者数
- 2名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 2 不純物除去、清掃・洗浄、清掃・洗車、メンテナンス補助 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要と障害者雇用の考え
(1)概要
吉野川の砂・砂利の採取販売業で有限会社として昭和61年に設立した当社は、昭和63年に徳島県美馬市に工場を開設、また、平成16年には四国運輸局認証の自動車整備工場開設し、砂・砂利の採取・販売、自動車整備事業を行っている。
(2)障害者雇用の考え
岡典司代表取締役は次のように話す。
「障害者の雇用は会社が有限会社として設立する前から、救護施設の利用者に仕事を依頼していた経験もあり、また、自分自身が子供の頃から、障害者を身近な存在として箸蔵地域の中で見てきていた。
障害の特性についての情報を得ながら、試行錯誤の上、適材適所でその人の能力に合った仕事を探し出したり、創り出すことができた。
障害者の応用力に欠けるところは、指導力でカバーしている。また、支援機関と会社との連携が密に行われ、課題や問題が解決されていることは障害者の就労にとって、なくてはならない事である」
2. 障害者雇用の背景
当社が設立されている地域には、昭和38年に池田学園(知的障害児入所施設)が開設されて以降、箸蔵山荘(知的障害者入所・通所施設)、池田療育センター(知的障害者通園事業)、セルプ箸蔵(知的障害者通所授産施設)障害者支援センターはくあい(身体、知的)、永楽荘等が開設され、9ヶ所のグループホーム、ケアホームは約40人が利用している。平成2年には「箸蔵福祉村」が設立されるなど、古くから地域で障害者と共に歩んできた経緯がある。
箸蔵福祉村は、各種の福祉施設の設置を機会に利用者と住民との積極的な交流を含め、ボランティア活動等も広めながら、福祉の心豊かな郷土をつくるために平成2年に設置された。
このような地域的な環境の中で、障害者を受け入れるにあたって彼らを特別視するのではなく、通勤途上においても、地域の事業所で行う仕事に関しても障害の特性を日常生活の中で理解し合うことにより関係が取れている。このように、地元事業所の障害者雇用に対する不安もかなり軽減され、現在、地域の事業所は、博愛まつり、ふれあいフェスティバル、博愛会後援会活動といった法人行事を通じて地域の障害者雇用に取り組んでいる。
また、平成17年4月に設立した障害者就業・生活支援センター「箸蔵山荘」と連携を取りながら、当社は、現在2人の知的障害のある社員を雇用し、また、今後の雇用に向けて1人の職場適応訓練を行っている。
3. 取り組みの内容
(1)職場実習・ジョブコーチ支援・トライアル雇用の活用
知的障害のあるMさんは、建設業などの経験もあり、地域で一人で生活していたが、年齢とともに就労場所がなくなり、障害者就業・生活支援センター「箸蔵山荘」の相談を経て、地域障害者職業センター及び公共職業安定所からの紹介を受けた。
採用前には、ジョブコーチの支援を受けながら、実習を行った。この時点で勤務上の課題点などを明確にし対応の方向付けを行うとともに、Mさんの仕事に対する不安が解消され、現場スタッフともうちとけるようはたらきかけた。
その後、3ヶ月のトライアル雇用を実施し、本格的な就労に際する見極めを行った上で平成17年に採用し、美馬工場に配属、現在、砂利の不純物の除去作業を任せている。
また、Mさんは自炊が十分ではないことから体調を崩すなど、一人暮らしにも困難な部分が出てきたため、グループホームに住居を移した。当初は、早く出勤し長時間職場の周辺で待つことも、グループホーム入居により改善が図られた。
(2)職務内容の設定
1)砂利の不純物の除去作業
Mさんは主に、コンベアーに乗って流れてくる砂利の中から不純物を除去する作業に従事している。不純物はほとんどが木屑であるため、注意深く確認する事と集中力が必要不可欠であるが、目が疲れ過ぎないよう注意が必要である。
作業手順は、以下のとおり。
①ベルトコンベアーにおいては、ホッパーを開閉し、大きな原石が詰まらずスムーズに流れるよう調整する。流し過ぎと、小石が下に落ちるよう目詰まりを除去することが必要である。
②機械周りに定期的に積みあがった砂を、スコップと一輪車を使い除去する。
③露布の洗浄作業は、布の破れの確認や、高圧ホースを使用した泥の除去を行う。
④ベルトコンベアーの監視、機械のメンテナンス補助、清掃、修理補助も行う。重機など機械を扱い危険を伴う現場での作業であるため、危険回避手段と事前予防について繰り返し説明している。


2)洗車・清掃作業
洗車、ワックスがけ、車内清掃を行っている。
(3)段階的な職務設定
Mさんの能力に合わせ、以下のとおり段階的に職務を設定する。一つの作業ができるようになってから次の作業に移行する。時間をかけ、どの作業にも対応できるように指導している。
なお、作業実施の際には、障害のある社員3人をチームとし、一人が不調の時はカバーし合えるよう、チーム内で仕事を回転している。このことにより、お互いを助け合う気持ちが出てくる。
職務の段階
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(4)支援体制
多様な就労経験がある反面、自分の思い込みで仕事を進めてしまう事があり、現場でトラブルになった事があるMさんに対し、課題が生じたときには事務を担当している社長の奥さんが相談相手となり、Mさんの精神的な支えとなっている。
また、本人が居住するグループホームまでは徒歩5分程度であり、生活面も含めてトラブルや課題が生じた時は、障害者就業・生活支援センター「箸蔵山荘」と連携し問題解決に当たっている。
また、Mさんの送迎や勤務の調整、体調確認を行うTさんは、就業・生活センターやグループホ—ムへの連絡係を担当している。Mさんから信頼を置かれ密に相談を行っている。
現場での業務指示や仕事の調整をしているNさんは、Mさんにとって一番身近な社員であり、父親のような存在である。職場の花見や忘年会などでも積極的にMさんにはたらきかけている。
4. さいごに
障害者が就労を果たすことは決して難しいことではないがそれを継続させていくことは難しく、大きな力を必要とする。
当社の障害者雇用の取り組みは、障害者自立支援法の理念である「障害のある人が普通に暮らせる地域づくり」を実現させるものであり、地域に密着し、地域と協働して障害者を雇用に結びつけている。
松林 真奈美
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