事業所名

学校法人高松高等予備校

所在地

香川県高松市

事業内容

専修学校

従業員数

135名

うち障害者数

6名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	2	教師
内部障害	0
知的障害	4	清掃
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯・背景
3. 知的障害に対する取り組み
4. さいごに

事業所外観

1. 事業所の概要

　当法人は、昭和37年に大学受験予備校「高松予備校」として開校、各種学校として設置認定を受けた。昭和51年に丸亀校舎を開校、その後、校舎の新築や直営寮を開設するなどし、平成18年には各種学校から専修学校に変更した。
　現在、4つの校舎と9つの直営寮を持ち、予備校生だけでなく高校、中学の現役生向けの講座も開講するなどし、毎年全国の大学へ高い合格率で学生を送り続けている。
　直営寮では全国29都道府県から500人以上の生徒が受験に向けて共同生活を送っており、教師陣のみならず、事務担当者や寮長・寮母に至るまで、あらゆる角度から生徒の受験生活を支援している。

2. 障害者雇用の経緯・背景

（1）障害者雇用の経緯

　福岡県八女市にある知的障害者授産施設「蓮の実団地」の運営に理事長が携わったことがきっかけとなった。知的障害者が少しでも社会に出て、いろいろな職場で活躍できるよう、スタッフが一丸となって指導に当たっている「蓮の実団地」の現場に触れる機会もあり、当法人も社会福祉の面からも役立つことができると考え、約20年間、障害者雇用に真剣に取り組み、現在4人の知的障害のある社員が清掃業務に従事している。
　また、教師陣の中には身体障害者が在籍しているが、生徒を教えるという業務の中で障害がハンディキャップとなることはなく、熱心に指導に当たっている。

（2）「蓮の実団地」との連携

　「蓮の実団地」とは年間を通して交流を持ち、行事などには、理事長は来賓として招かれている。
　「蓮の実団地」は利用者が退所したらそれで終わりというスタンスは取っておらず、当法人だけで解決できない問題が生じた場合は、いつでも相談し、適切なアドバイスを受けることができる。福岡県という遠方から、いつでも当法人を訪問し、一緒になって考え、援助を行う「蓮の実団地」の取り組みが、当法人の障害者雇用の大きな支えともなっている。

3. 知的障害に対する取り組み

（1）業務面

1）職務設定
　知的障害のある4人の職員には、寮及び校舎教室の清掃を任せている。
　寮の清掃においては、廊下を掃除機やモップを使用し行い、トイレや水回りの清掃は、水滴一つないほどきれいに拭き、蛇口や便器をきれいに磨きあげる。また、晴れた日には、屋外の花壇や植え込み等の清掃も行う。寮生が学校にいる昼間の時間帯に行うため、寮では朝食と夕食のほか、寮は特別に昼食を準備している。夕方からは高松校舎にて、黒板拭きなど教室の清掃を行う。
 

清掃の終わった廊下

寮内の植え込み

水回りの清掃

清掃の終わったトイレ

校舎では教室の黒板を拭く

2）トライアル雇用を活用したきめ細かな指導
　当法人が正式雇用するまでの間は、彼ら4人の出身である「蓮の実団地」からトライアル雇用を活用し受け入れ、その期間中に能力等を見極め、正式採用した。
　なお、トライアル雇用期間中は、業務に対応できるかのみにとどまらず、共同生活を規律正しく送ることができるかなど生活面についても見守り確認し、また、新しい環境で仕事や生活に対応していけるよう、指導をきめ細かく行った。
　業務指導は、懇切丁寧を第一に心がけ、十分に身に付くまで何度でも繰り返し教える。なぜ良いのか、なぜ悪いのかなど、その理由も教えていくことで、十分に理解できるようにしている。また、失敗時には、まずは褒めて、それから注意する順序を大切にし、個々人の能力を伸ばしていくことができるよう心がけている。

3）職員一丸による支援体制
　理事長は障害のある社員の支援に多大な時間を割き尽力している。また、普段生活で接している寮の職員も協力している。
　寮長をはじめ、直接彼らと接する時間が長い職員は、障害者職業生活相談員資格認定講習を受講するなど、公的支援の機会を上手く利用し、彼らの生活支援に前向きに取り組んでいる。
　また、他の職員にも障害者福祉の経験者が多く、学校全体を上げての総員協力体制が敷かれており、彼らを公私にわたって支援している。
 

（2）生活面

　4人の職員は、直営寮の一つ「屋島寮」にて共同生活を送っている。
　職場に限定せず、生活全般においても理事長や寮長が中心となり、管理をしており、出勤及び退勤時には、寮と校舎間の往復に職員1人が付き添い、安全に注意を払いながら送迎しているほか、体調不良などによる通院や特別な買物など外出の際には、常に職員が付き添うようにしている。
　職員は多大な労力を費やすことにはなるが、自立支援を考えると、職場だけを管理し、後は放任では良くないと考えている。
　生活面では、給与などお金の管理も含め、寮長が責任をもって担当している。一人ひとりの現金・通帳・印鑑等は個々の金庫に各自で出し入れしているが、寮長はその金庫のカギを保管し、現金の引き出しや口座への入出金などは、本人と寮長の双方立会いにより行っている。
　買物の際も不用に多額の現金を渡すことはせず、無駄遣いすることのないよう配慮している。貯蓄も自立の大切な要素であるので、金銭管理は重要であると考えている。
 

生活の場である寮

4. さいごに

　当法人の障害者雇用の取り組みにおいては、「蓮の実団地」の支援に拠るところも大きいが、何よりも重要なのは理事長を筆頭とした各職員の、障害者雇用に対する理解と協力、そして熱い思いである。
　寮生活を送る知的障害のある社員に対しては、24時間体制の支援も欠くことができないが、「大変なことである」とか「すごいことである」という感覚ではいつか挫折してしまうことになる、と理事長は肌身をもって感じている。各職員もそれに呼応し、それぞれの持ち場で可能な限り支援を行っている。
　しかし、障害者雇用は大変な側面を持つだけではない。彼らの純粋な心に触れることが各職員の癒しともなっている。業務を離れ、小旅行などの生活面での楽しみは、障害の有無を問わず喜びを分かち合う大切な機会となっている。
　一人ひとりができることは小さいかもしれないが、皆が少しずつ手を貸すことで障害者福祉、また社会福祉行政がうまく行われていくことを、当法人は強く願っている。
 

理事長