事業所名

九州ダンボール株式会社

所在地

福岡県筑後市

事業内容

ダンボール製造・販売

従業員数

66名

うち障害者数

2名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	2	出荷事務、製造業務
内部障害	0
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯
2. 取り組みの内容
3. 取り組みの効果
4. 今後の課題と対策

事業所外観

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯

（1）概要

　昭和28年に福岡県久留米市にてダンボールの製造・販売業として設立した当社は、平成3年に福岡県筑後市に本社工場を移設した。環境に配慮し地域と共に発展することを目標とし、筑後市の緑化モデル事業所に指定されている。
　社員一人ひとりは企業にとっては、財（たから）であり、人間的成長を願いながら、日々安全操業に徹し、社長を中心に暖かい家庭的な社風の中で社会に貢献していくというのが基本的な理念である。
 

工場内風景

（2）障害者雇用の経緯

　当社の基本理念より、従来から障害者を雇用した経緯がある。
　糖尿病・慢性筋萎縮症により車いすを使用しながら15年間勤務した社員については、平成9年に退職、また、糖尿病となり透析中歩行困難となった勤務年数32年の社員は、平成17年に退職した。
　現在は、平成16年に作業中右腕を切断したAさんを製造部における製造機械操作業務に配置しているほか、上肢障害のあるBさんを輸送部における出荷事務として配置している。
 

出荷事務を行うBさん

2. 取り組みの内容

　平成16年に右上腕部切断を負ったAさんの職場復帰に係る取り組みは、以下のとおり。
 

（1）Aさんの受障と職場復帰への準備

　製造部に配置しているAさん（35歳）は、平成元年4月に雇用した。
　真面目で責任感の強い性格で、ダンボール大型製造器（コルゲーター）のオペレーターとして元気に明るく勤務していたが、平成16年、定期点検整備中に誤って利き腕の右腕を機械に挟まれ、右上腕部切断の事故となった。
　生命はとりとめたものの、結婚式を1カ月後にひかえた中での事故に、Aさんはもとより両親の落胆は大きく、今後の勤務や生活基盤、結婚問題等、厳しい現実に直面せざるを得なかった。
　Aさんの当社に対する帰属意識と仕事に対する強い復帰意欲、また婚約者の励ましにより、治療と左腕だけによる生活訓練・勤務のためのリハビリに耐え、約7カ月後に退院した。
 

（2）取り組みの内容

1）継続雇用と方策の検討
　当社としては、将来ある若者の右手を失わせたことに痛恨の思いを持ち、如何なることがあっても雇用を継続させること、未来に望みが持てるようにすべきと決意し、種々方策について検討した。受障前の職務は重量物の運搬が多く、片腕で長期的に継続して行うことは困難であることから、配置換えを検討した。

2）配置転換と作業設備の改善
　検討の結果、ダンボール製造過程で使用する糊製造の部署に配置換えを行った。作業内容は、約20kgの添加物を2階に運ぶ業務であることから、1階と2階に重量物運搬のためのターンテーブル付き台車を配置し、1階からは、かご型リフトによる電動リフトで重量物を上げることができるよう改善した。またパネル操作においては、両手でなければ操作できないボタン式パネルを、操作盤をはじめ各種内部機器・回路を変更し、片手のタッチで操作が可能となった。
 

片手で機械操作するAさん

3）障害者雇用助成金の活用
　作業設備の改善には、糊室リフト等設備が168万円、タッチパネル式関係が840万円で、合計1，000万円が必要であった。
　障害者雇用促進協会と相談した結果、障害者雇用継続助成金を活用しながら改善に向け取り組むこととなった。
 

3. 取り組みの効果

　重量物運搬・投入作業は、Aさんの訓練と努力もあり、左手だけで十分できるようになった。操作パネルも左指タッチで、定時に規程の粘度と量の糊が製造できるようになり、Aさんの勤務意欲も益々旺盛になり、ダンボール製造は順調に進行している。
　この度の事故に基づく改善のための当社の一連の対応については、仕事の受注が減少する環境の中で実施せざるを得ない状況であったが、このことが社員の当社に対する信頼感と安全操業に対する意識の向上と、さらには社員の団結に良い影響を及ぼしている。
　また、Aさんが受障による仕事と生活、結婚問題等を乗り越え、将来に生きる希望と力を得たことは、大きな喜びとして職場全体で受け止めている。

4. 今後の課題と対策

　危険性のある職場であるため、障害者雇用は現時点では困難と見なされているが、ジョブコーチ制度等を活用し業務を見直す等により、今後、障害者雇用に積極的に取り組んでいきたいと考えている。

　現在、近隣の養護学校や施設の知的障害者を体験実習生として、3～4名を1～10日間受け容れている。実習生も明るくなって帰っていき、良い体験をしてもらっていることから、当社も体験実習の意義は認めている。