事業所名

有限会社実松（さねまつ）製作所

所在地

佐賀県神埼市

事業内容

養鶏機材、建設用溶接金網、製缶製品等の製造・販売

従業員数

50名

うち障害者数

7名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	7	ゲージのスポット溶接、鉄線のカット、ゲージの仕上げ、塗装、製品梱包
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯
2. 取り組みの内容
3. 取り組みの効果
4. 今後の課題

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯

（1）概要

　昭和32年1月、当社は、養鶏ゲージ製作を目的として神埼市に工場を設立した。昭和39年に佐賀工場を建設、本社を佐賀市に移転し、メッキ加工や飼料タンク等の製造等業務を拡大した。その後も畜産器具機材の製造販売、鶏舎及び畜舎の建設・設計施工等業務拡大を行い、平成13年4月に現在地に本社工場を新築移転し、現在に至っている。
 

（2）障害者雇用の経緯

　障害者雇用は、昭和39年1月に佐賀工場を設立した頃からで、知的障害者施設からの雇用要請に応じたのが始まりである。
　当時は、養鶏ゲージを製造していた関係で、仕事上出入りが多かった養鶏場で真面目に働いていた知的障害者の勤務状況を見聞きし、人手不足の状況もあって雇用を開始した。
　雇用に取り組み始めた当初は、手作業が多く機械化があまり進んでいなかったため、一つの作業ごとに時間をかけて教え込んだ。このため、重度の知的障害があっても一定の作業工程であれば担うことができていた。
　また、仕事面に加えて生活面の指導も必要であったため、担当職員を配置し、買い物、洗濯、掃除、料理、余暇指導など、マンツーマンで職業・生活両面にわたって指導を行った。現在、知的障害のある従業員7人のうち、自宅通勤している4人については、担当職員が保護者等との連絡等にあたっている。
　自宅が遠方にある3人については、身の回りの対応は概ね確立していることから当社の敷地内にある社員寮を利用している。生活上トラブルが生じた場合には、同様に寮で生活している従業員1人が職場に連絡するなど対応できるようにしている。
　最近は、作業工程を顧客のニーズに応じて変化させ、柔軟に対応することが求められるようになってきたため、単純作業の工程が従来と比べて格段に少なくなった。このことから、一定の理解力がないと作業ができない状況となってきたため、最近の傾向としては、軽度の知的障害のある人を雇用するようになった。
 

社員寮

2. 取り組みの内容

　従業員50人のうち7人の知的障害のある従業員を雇用し、障害者雇用率は14％である。
　彼らに対しては、ゲージのスポット溶接、鉄線のカット、ケージの仕上げ作業、塗装作業、製品の梱包作業などの作業を設定している。
　彼らにとって作業内容を状況に応じて自在に変更することは難しく、幅広く仕事を分担することも困難である。対策としては、同じ仕事を繰り返し続けていくと少しずつ習熟していくので、作業工程ごとに責任者を配置し、根気強く指導を行っている。また、集中力がないと、一定の時間をかけて作業しても、作業量は他の従業員の半分程度ということもあるので、一人にさせず、できるだけグループで仕事が行えるよう配慮している。
　また、彼らと一緒に働く従業員については、永年、一緒に仕事をしてきた人が多く、障害特性に対する理解や対応に馴れているため、日常会話が不十分であったり、生活面でうまくできないところがあっても、適切な対応により特に大きな問題は生じることなく、職場内での人間関係は良好である。
 

ケージのスポット溶接

鉄線の伸線カット作業

ケージのつまえ作業

塗装作業

3. 取り組みの効果

　現在雇用している知的障害のある従業員は、全般的に真面目であり、指示したことはきちんと守る態度は、他の従業員にも良い影響を与えている。
　作業内容等を考慮すれば安定した労働力となり雇用効果は認められる。ただし、仕事の内容が変わったり、難しい仕事になれば逆効果になることもあるため、本人に適した作業内容や工程をよく検討して作業の配置を考える必要がある。
　現在、塗装を担当している16年目の従業員は、永年にわたって指導を受け、こつこつと作業を積み重ねた結果、現在では、納期の期日を伝えると自分自身で作業の段取りを組み立て、指示を受けなくてもほぼ一人で塗装作業ができるようになっている。

4. 今後の課題

（1）作業の確保

　当社は、永年、知的障害者を雇用してきた実績があり、社会生活面では常時支援が必要とされる部分が多い重度の知的障害があっても、担当職員を配置した結果、スポット溶接の技術では、他の従業員と変わらない水準まで能力を伸ばすなど、佐賀県下にあっては、知的障害者の雇用として先駆的な役割を果たしてきた。
　しかしながら、今後の障害者雇用の拡大は難しい情況である。4～5年前までは知的障害のある従業員を12人雇用していたが、業績が芳しくなくなり、彼らに任せる作業箇所がなくなったことから、4人を他の事業所に転職してもらったこともある。
　継続して単純作業があればよいが、工場の機械化や効率化が進んでいく中、新たな雇用は難しく、現在雇用している従業員の作業の確保で精一杯の状況であり、苦労しながらも障害者雇用が継続できるように配慮している。
 

（2）加齢への対応

　障害者福祉の施策は、障害者の地域生活をどう支えていくかという方向性に向かっているが、知的障害の場合、心身の老化が比較的早く進行する場合がある。今後、老化により就職が困難になってきた時、市町村等の行政機関や家族との連携を図りながら、グループホームや福祉ホームなど地域の社会資源や就労継続支援事業等を活用しながら、雇用の場の確保に対応していくことが必要である。
　また、当社の現実的な問題として、仕事を行うことが高齢等で難しくなった場合、自宅生活が家庭事情で難しい場合もある。このようなときスムーズに施設入所に移行できるのか。また、施困難な場合、他の生活環境についてどこに対応を依頼すればよいのか、検討しておくことも必要である。