事業所名

株式会社アヴェイル

所在地

熊本県上益城郡

事業内容

人材派遣、業務請負、有料職業紹介、紹介予定派遣

従業員数

約500名

うち障害者数

7名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	4	製造(3)、総務(1)
肢体不自由	1	派遣先事業所での自動車部品組立
内部障害	0
知的障害	2	派遣先事業所での自動車部品組立
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 取り組みの内容
3. さいごに

事業所外観

1. 事業所の概要

（1）沿革

　当社は、平成5年2月に熊本市にて、現在の事務センターを創業し、主に人材派遣業を営んでいる。請負業務の拡大や従業員の技術力向上に対応すべく工場設備を取得するため、平成16年11月に現在地のテクノリサーチパークへ本社機能を移転し、製造スペースを確保した。また、平成17年7月からは、この製造スペースを活用し製造業務の請負を開始した。

（2）事業内容

　製造から事務まで幅広い内容の人材派遣を行っているほか、自社内の製造作業スペースを活用した業務請負、有料職業紹介、紹介予約派遣などを業務としている。対象事業所は多岐に渡るが、製造業が大半を占めている。

（3）組織

　熊本県内に、上益城郡のテクノリサーチパークに製造スペースを持つ本社のほかに、熊本市内の事務センターおよび宇城市に熊本南営業所を有している。その他、九州を中心として、関西・関東方面まで15の営業所を展開している。

2. 取り組みの内容

（1）職場配置・職務

　障害のある従業員7人の配置は以下のとおり。
1）本社
　聴覚障害のある3人の女性従業員を、製造業務（請負）に配置している。なお、製造業務に携わっている従業員は、彼らを含め13人である。
　担当業務は、高級自動車のプラスチック部品および半導体のプラスチック部品などの組立が主である。検査機器を使用した検査作業や簡易な部品取り付けやラベル貼りといった軽作業に対してはまったく支障はなく、ノルマなども他の従業員と同等に設定している。
　3人の勤務時間は、1人が8：30～17：30、2人が9：00～16：00に設定している。

2）事務センター
　聴覚障害のある従業員1人を経理事務に配置している。

3）派遣従業員
　知的障害のある従業員2人と、肢体不自由のある従業員1人は、派遣従業員として福岡に在住している。現在は福岡の製造会社に派遣し、自動車部品の組立に従事している。

（2）聴覚障害に対する取り組み

1）業務指示
　業務指示については、ペーパーにより伝達するほか、社内に手話ができる従業員がいるので補足的に伝達を行う場合もある。3人は大体口話が理解できるので、口頭による指示でもあらかたの伝達は可能である。口元を読みやすい相手とそうでない相手がいるが、大きな声でゆっくり話すことにより、概ね理解できている。直属のリーダーである女性従業員の口元は読みやすく、彼女から伝達するケースが多い。
　製造現場での全体ミーティングにおいては、責任者が全員に向かって口頭で話し、3人が理解できなかった部分については、周りの同僚たちが補足している。
　また、担当する組立作業については、ラインや手順が大きく変更される頻度は少なく、取り扱っている高級車の売れ行きがよいことから、業務請負を開始した平成17年7月以降は、ほぼ固定されたラインで同じ部品が組み立てられている。そのため、業務指示も複雑ではなく、難易度の高い情報が含まれることもなく、現在のところ、業務指示がうまく伝わらないということはない。

2）教育・訓練
　業務に関する教育・訓練は、OJTによって行っている。現場には、女性のリーダー、男性の現場主任、その上司の所属長らが指導を行う体制をとっている。
　基本的には、まず業務手順の概要を説明した上で、簡単な作業を通して業務を憶えてもらう。分からないことは、周りの同僚やリーダーが教え、誤りに対しては責任者がチェックするスタイルである。
　聴覚障害があることは、教育・訓練面ではほとんど支障になっておらず、特別の工夫や、指導者が一人張り付く必要はない。

3）家族とのコミュニケーション
　聴覚障害のある3人のうち、最初の1人（Aさん）を平成17年10月に雇用した。
　職場の配慮や本人の性格の明るさからAさんが孤独に陥ることはない。またAさんを雇用した当初の10日間で、母と3回面談し、業務上の問題点や課題を伝えるとともに、Aさんの不安や不満を聞かせてもらった。このように、母を仲介したコミュニケーションが早い段階で仕事や人間関係における垣根を下げた。
　Aさんの後に雇用した2人についても、当初は家族とコミュニケーションを取っていた。現在は、彼女たちも職場に慣れ、他の従業員とのコミュニケーションに問題がなくなったので、家族とやりとりすることはなくなった。聴覚障害のコミュニケーション面への配慮として、初めのうちは家族を仲介し、本人の慣れを見ながら本人中心へと移行していくことが大切である。

4）家族からの指摘に対する対応
　「トイレに行きたくなった時にはどのようにまわりに知らせればよいか」、「昼休みに入るタイミングはどのように知ることができるのか」、「仕事中に分からないことなどが発生した時にはどうやってどのようなルートで確認すればよいのか」といったことについて、家族から課題提起を受けたことがある。
　これらの内容については、家族とも検討し、トイレについては「生理現象なので行きたくなったら自由に行ってよいことにしよう。『お手洗い中』という札を作り、空席にかけてもらうことによって、周りが分かるようにする」対応をとった。
　昼休みに入るタイミングについては、職場から本人に知らせることとし、「リーダーを1人決めて、リーダーが知らせる」ルールを作った。また、作業中の質問や相談については「手を挙げるなどして知らせる」ことで解決した。

5）グループでの配置
　3人を同じ職場に配置したことがよい影響を与えている。
　平成18年に2人を雇用した時、Aさんの表情が休憩時間に入ると、とてもにこやかになることがはっきりと分かった。
　同じ悩みを持ち、コミュニケーションが取れる仲間が周りにいることにより、精神的な支えとなり、不安を軽減し安心して業務に打ち込むことができる。

3. さいごに

　聴覚障害については、社内のルールを明確にして不安にさせない、仲間づくりができる環境を整え孤独にさせない、不安解消を早期に行うために家族との連絡・打ち合わせをまず行う、といったコミュニケーションに関する配慮が大切であり、これらがごく自然に実施されることで、仕事の上の聴覚障害というハンディは軽減され、障害者雇用の促進が図られる。