2006年度作成

事業所名

ソニー・太陽株式会社（ソニー株式会社の特例子会社）

所在地

大分県速見郡

事業内容

電子電気機械器具の製造・サービス

従業員数

164名

うち障害者数

112名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	22	実装機オペレータ、製造庶務、電子機器組立、技術
肢体不自由	80	総務、経営管理、技術、電子機器組立、生産管理
内部障害	10	部品技術、製造リーダー、電子機器組立、資材管理
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要・設立の理念
2. 人材育成の基本的な考え
3. 取り組みの内容

1. 事業所の概要・設立の理念

（1）概要

　当社は、ソニー株式会社の特例子会社として、すべての部門に障害者を積極的に登用した独自の生産スタイルを確立し、ソニーグループにおける社会貢献を担い、独自の企業価値を創出している。
　障害をハンディとさせない独自開発の治工具とセル生産システムにより高品質と高生産を両立し、マイクロフォン、メモリースティック、ビデオカメラステーションの製造・サービスといった、ソニー株式会社の製造事業所として重要な役割を担っている。
 

（2）設立（障害者雇用）の理念

　当社設立の理念として、説明資料の冒頭に次の理念を掲げている。
　『ソニー・太陽（株）は、ソニー（株）を通じて「世に心身障がい者はあっても仕事に障がいはあり得ない。身障者に保護より働く機会を」（中村裕先生）と「障がい者だからという特権なしの厳しさで健常者の仕事よりも優れたものを」（井深大ファウンダー）という創設者の遺伝子を、ユニバーサルデザインの思想をベースに継承し、企業としての自立・障がい者の自律を具現化することで、働く障がい者のトップランナーを目指します』
　この理念のもとに昭和53年、当社が誕生、特例子会社としての認定を昭和56年に受けた。
 

2. 人材育成の基本的な考え

　能力開発にあたっての考え方について、人づくり推進室の国森紳義室長は次のように語る。
　「当社の最大の特徴は、マイクロホン生産において、設計に始まって試作、QA（品質保証）評価、デバイスの生産準備から製品完成までの一貫生産ができることにあると思います。
　過去は、部品を含めて治工具など必要なものを提供され、製品を組み立てるだけで、製品にあわせて設備や作り方を考えていましたが、現在は、個々人の障害にあわせた環境でモノづくりができるようになりました。
　…それは、生産革新活動やコンカレント（同時進行型）の考え方が従業員の間に定着し、創業以来の方針である自律化が促進され、より高度で生産性の高い一貫生産が可能となり、好環境が生まれたことによります。
　今後は世界中の働く障害者の工場のトップランナーを目指して、モノづくりで貢献していきたいと考えています。」

3. 取り組みの内容

（1）作業体制・作業設備の改善

1）ワンマンセルの構築
　当社は、障害者が生き生きとした生活ができるように、創業以来自律・自立を促進する活動を進めてきた。
　「社員一人ひとりが日々改善の意欲をもって行動しつづけ、生産革新活動を文化として育むようになれば、きっと素晴らしい成果が得られるはずだ。」との最終目標を信じて、地道な活動が平成7年頃から日々模索され、平成11年から本格的に開始した。その結論がワンマンセル（一人で製品を完成する方式）化活動であり、車いす作業者のワンマンセル化が実現した。

2）作業設備の改善
　ワンマンセル活動と併せて、簡易溶着ホッチキスなどの治工具の改善や、作業机の改善などを次々実現するなど、障害に合わせて能力を最大に発揮するための治工具や設備の開発に取り組んだ。現在では、すべての高度な製品のワンマンセル化に成功し、生産効率は25％アップした。
　また、スペースを活かす「活スペース」について、無駄な机を短くするなどの積み重ねで、1，865㎡のスペースを生み出すことに成功した。
　これらの地道な努力の結果、42人の増員、売上を3倍弱に増加させることができた。

①車いす作業者一人ひとりの高さに対応した作業台の設置
 

②作業員の高さに上下できる回転椅子の設置
 

③義手を装着している作業員用に、丸い作業台を圧縮空気を吹き出し浮かせるよう改造
 

④ワンマンセル方式により、一式陳列した部品を取り出しやすいよう作業台を改造
 

（2）コンカレント（同時進行型）の徹底

　自律化への努力を積み重ねた結果、ソニーグループ各社とのコンカレントな考え方に立って、設計から試作やQA評価まで一貫して行う体制が整ってきた。
　現在当社では、親会社との共同設計をはじめ、ものづくりに必要な多くの機能を自社で賄うことができるようになった。
　コンカレントを徹底し、製品の設計段階から障害者のものづくりに最適な環境を整えることで、あらゆる職場で彼らが中心的な役割を果たし、かつ、より生産効率の高い運営ができるようになっている。
 

（3）「人づくり推進室」によるコミュニケーションノートを活用した指導

　「人づくり推進室」の存在が、新人教育や専門職育成といった社員教育に貢献している。
　特に新人については、雇用後3ヶ月間は毎日、指導者が一人ひとりと「コミュニケーションノート」を通して情報交換を行っている。
　一例をあげると、「5／1（月）今日から製造ラインに入りました。私は、ハンディカムの付属品のクレードルのラインに配属されました。午前中はラインの説明を受け、部品のさし込みの練習を主にしました。最初は緊張とハンダ付け治具の使い方に慣れず苦戦しました。しかし、練習を重ねるうちに部品のさし込みは少し慣れました。午後からはハンダ付けを行いました。まだまだ作業に慣れておらず時間がかかりますが、品質重視に頑張っていきたいと思います。」と書かれたコミュニケーションノートに対して、指導者は朱書きで「今は、時間よりも品質第一でお願いします。一回で品質の良いハンダ付けができれば時間も短縮できます。よろしくお願いします。」とアドバイスしている。
　なお、コミュニケーションノートでは、必要な技能はもとより、社会性、思考方法、情報収集の仕方に至るまで細かな指導を行っている。内容は、①人間関係、②仕事上でうまくいかなかったこと、③工程・技術上の専門的なことに関する質問が大半である。仕事に対する安心感や安定が得られるシステムとして活用している。
 

（4）社員教育の充実

1）社内ホームページの活用
　社内ホームページとして、「私のアイデア使ってください」、「誠実に答えます」の2つのホームページを開設している。
　改善への提案等を含めて広く意見を求めているほか、一人ひとりの声に全員が注目しお互いに誠実に答えることができるシステムの定着は、様々な問題の解決や日々の改善活動に有効であると共に、社内コミュニケーション促進の面でも貢献している。

2）「人づくり推進室」による管理者、専門職の育成
　真の自律化を実現するには、仕事を実行するだけでは不十分であり、一人ひとりに問題意識と高い目標を持たせる必要があることから、作業者の将来の進むべき道として、管理者（総合職）への道とマイスター（専門職）への道の選択肢を提示し、将来希望する道に向けて自己研鑽できる制度を用意している。
 

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