2006年度作成

事業所名

株式会社沖縄教育出版

所在地

沖縄県那覇市

事業内容

小売業

従業員数

134名

うち障害者数

7名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	1	企画デザイン
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	6	商品の箱詰め・発送
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯
2. 取り組みの内容
3. 今後の展望と課題

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯

（1）概要

　株式会社沖縄教育出版は、昭和53年に出版社としてスタートした。その後、川畑保夫社長が腎臓ガンを患い、その闘病の過程の中で、これまでの生き方や考え方を見直し、生としっかり向き合うことで健康や食べ物の大切さに気付き、このことをきっかけに、平成5年に薬草事業部「沖縄自然薬草センター」を設立した。なお、「沖縄自然薬草センター」が現在の当社の屋号となっている。
　現在は、健康食品や美容化粧品等をインターネットでの販売も行っており、県内外と確実にシェアを拡大している。
 

（2）障害者雇用の経緯

　障害者雇用への取り組みについては、社長の幼少時代に障害のある友達が身近にいたこともあり、元々障害者雇用について積極的な考えを社長自身が持っていたことや、その他役員の身内に障害のある人がいたこと等が背景にある。
　平成11年に京都において、障害者雇用に関する講演会を聞き、障害者雇用に取り組み始めた。また大分県の福祉工場での「障害者を受給者から納税者にしよう」、「自分たちは、ほとんど障害者だけでやっているが、本社が潰れても自分たちは大丈夫だと言えるぐらいの経営をしていこう」といった言葉も、当社が障害者雇用への強い理念を持つきっかけとなった。その翌年、障害のある社員を3人雇用した。
　当初は手探りで何も分からない状態でのスタートで、彼らが出勤してきてからほとんど砂場で一緒にいたことや、パニック状態になってしまったこと、気に留めてもらいたいために警報機の非常ベルを押してビル全体が大騒ぎしたことなどがあった。このような経験を積み重ね、現在の職場が形づくられている。
 

2. 取り組みの内容

（1）職場配置

　現在、折り込みチラシやパンフレットの準備や、商品の梱包・配送、総務の手伝い等に障害のある社員が従事している。

（2）サポート体制

　障害者職業生活指導員を中心に、社内全体に障害のある社員をサポートする体制をとっている。
　この体制の土壌として、職場全体の障害に対する理解の深さがある。これは管理職の障害に対する意識の強さが、全社員に確実に伝わっていることを示している。
　障害のある社員が大きな問題を起こした時に、社内から「重度障害者の雇用はやはり難しいのでは」との声が出たが、同じ部門で共に働く社員から、本人がいることで周囲が和むので辞めさせないで欲しいとの訴えがあり、雇用を継続することとなった。そこには障害を越えて同じ職場で働く社員としての想いがあり、自然なナチュラルサポートの体制が形成されている。

（3）啓発・教育・研修

　当社の啓発・教育の取り組みにおいては、採用時に力を入れている。職場のナチュラルサポートを支えているのは、障害に対して理解ある社員である。部署によって障害のある社員と関わる頻度は異なるが、パート採用においても、3～4回の面接と2週間のインターンシップを通じて当社を理解してもらい採用している。このような社員教育に基づき、障害の理解という社内意識が共有化されている。
　新規に採用した障害のある社員への研修については、配置された部署の採用一年目の障害のある社員が担当することとしている。失敗や間違いを恐れずに任せられるのは、社長の「10年で一流に、3年で一人前」という言葉に良く表れている。障害の有無に関係なく「会社にとって必要とされる人材を育てていこう」ということである。また、社長は「出来ることしかやらないということは、成長がない」とも話す。
 

（4）支援ツール

　用具や機械等にラベルを貼るほか、電話対応のマニュアルを作成するなど、視覚的に一目で分かる工夫をしている。このような工夫については、障害のある社員からの要望も取り入れながら取り組んでおり、共に働きやすいより良い環境づくりに日々努めている。
 

（5）新たな職務への取り組み

　経験を積むことで人はレベルアップしていくことは、もちろん障害のある社員にも言えることだと考え、最近では事務所等との電話対応も知的障害のある社員に業務として任せている。当初は慣れない業務に戸惑っている様子であったが、現在はほぼ的確にこなしている。日々新しい業務へ挑戦する機会を設けることが彼らの意欲の向上にも繋がり、職務レベルを高めている。そしてそのことが、「障害者にとってできないことはない」という想いを一層強くしている。
　また、毎日18時に勤務が終了してからの30分間は、彼らのためにパソコン実習を行っている。彼らがコンピュータに興味を持ち、周囲の人たちが自主的に教え始めたことから生まれたものである。当初は、アルファベットを教えることから始めたが、今ではブラインドタッチができるまでに成長し、新たな作業への期待も膨らんでいる。
 

（6）雇用支援機関・養護学校との連携

　新たに障害のある社員を雇用する際には、沖縄障害者職業センターのジョブコーチ支援を活用しているが、既に当社内でナチュラルサポートの体制が整っているため、最初の一日のみ直接的な支援を受けている。その他、社員から自立したい要望が出た際に、グループホームについて相談したこともあるが、仕事面に関しては、ほとんど職場で支援ができる体制になっている。
　しごと・せいかつ支援センター（障害者就業・生活支援センター）群星（むりぶし）とは、スタッフとの連携をこまめに取っている。またインターンシップ等で受け入れた人達も忘年会に招く等、良い関係性を築いている。
　また、養護学校に対し、良い人材を求めて積極的にインターンシップの受け入れについてはたらきかけており、一回のインターンシップで2～4人、トータルで年間20～30人を受け入れている。採用に至らなかった場合でも、応接室等で使用する机の製作を体験する機会を与えるなどの支援を行っている。養護学校とは、雇用後も進路担当や校長等と連絡を取り合い、良い相談体制を取り続けている。
 

（7）地域との交流

　障害のある社員と共に働いていくためには、地域との深い結び付きも非常に大事なことと考えており、社員全員で毎朝7時半から道路や小学校の周囲等を清掃しながら朝の挨拶をしている。これにより地域の治安や良い環境が保たれているとの声も聞こえ、県から表彰も受けている。こうした活動から生まれる地域の人達の深い理解もまた、障害者雇用を支える一つの大きな柱となっている。
 

3. 今後の展望と課題

（1）展望

　今後、より多くの障害のある社員が働く場をつくろうと計画している。理想ではあるが、彼らがメインの商品開発も視野に入れているが、利益をどのように追求していくかが、同時に検討すべき重要な課題としてある。
　障害の有無にかかわらず、一人暮らしをしたい、車を運転したい等、自立したいとの思いを、事業所として援助したいと考えている。その足がかりとして、当社が主体となりグループホームを整備することも考えている。また今後、朝礼の際に手話の講座を行っていきたい希望も持っている。

（2）課題

　今まで雇用の機会が無かった精神障害や身体障害等についての知識を習得するとともに、施設のバリアフリー化等を課題としてあげている。
　障害者を取り巻く厳しい現状を打開していくためにも、トライアル雇用を活用するなど、様々な企業が障害者を受け入れることが大事だと考えている。実際に雇用してみないと見えないところも数多くあるからである。また、企業はもっと授産施設や学校等とのつながりを強く持つべきであるとも考えている。行政に対しても障害者雇用に取り組む上での施設の整備や設備改善等に対する助成金についての情報を、積極的に提供すべきと考えている。

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