事業所名

秋田水産株式会社

所在地

秋田県にかほ市

事業内容

飲食料品卸売業

従業員数

10名

うち障害者数

3名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	3	製氷の運搬・保管
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯
2. 障害者の従事業務・職場配置
3. 取り組みの内容
4. 今後の展望

事業所外観

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

　山形県境近くの鳥海山の麓にある象潟漁港に当社の設立は昭和63年5月、従業員は10人で、きわめて家庭的な雰囲気の職場である。
製氷部門と活魚部門があるが、販売の9割が製氷部門で占め、創業当初から製氷部門を中心に営業を展開し現在に至っている。
特に製氷部門においては、6月から9月に掛けての暑い時期は特に忙しく、パート従業員を増員して対応している。販売先は、夏場には市場や県内外のスーパー等が主で、冬場になるとハタハタ用として漁港等の納入が加わる。

（2）障害者雇用の経緯

　平成15年に、隣接の由利本荘市内にある「水林通勤寮」からの依頼を受け、知的障害のあるAさんの1ヶ月間の職場実習を行った。実習の終了にあたり、熱心な指導員の勧めもあったが、Aさんの素直で一生懸命働く姿を見て平成15年3月に雇用に踏み切ったことが障害者雇用の始まりである。
その後、同じ通勤寮から、さらに2人の知的障害のあるBさん、Cさんを実習生として受け入れ雇用した。彼らは同じ通勤寮の利用者ということもあり、チームワークはとても良く、また良い意味でのライバル意識が仕事をする上での能力向上につながって、覚えこみも早く能率も向上していった。
しかし、Aさんについては、仕事振りは順調と思っていたが、視力の低下が予想以上に進行していた。製造した氷を保管する冷凍庫内は一定温度を保つ必要があることから照明が無いため、常に薄暗い状態であり、そのことが保管場所を間違える原因となった。そうしたことが重なるうちに、度々欠勤するようになり、通勤寮の指導員を仲介に連絡を取り相談したが、仕事に対して自信がもてなくなったと言う理由で、Aさんは退社のやむなきに至った。
また、Bさんについても、採用後1年程頑張っていたが、どうしても体力の要る作業が主体となるため、高齢のBさんは体調不良を訴えることが多くなり、本人と通勤寮との3者相談の結果、退社のやむなきに至った。
初めての雇用と言うこともあり、指導の難しさや能力を引き出すための工夫にまだまだ問題点はあったものの、知的障害があっても十分作業をこなしていけることが分かったため、通勤寮の指導員には、「働きたい障害者がいれば雇用する」旨話していたところ、2年後の平成17年に2人の知的障害のあるDさん、Eさんを雇用した。
現在は、Cさん、Dさん、Eさんの3人について、ハローワークからの助言を受けながら雇用に取り組んでおり、彼らはいずれも、通勤寮から電車で通勤している。

2. 障害者の従事業務・職場配置

　活魚部門は生きた魚の状況を日々的確に判断する必要があり永年の経験と知識が特に要求されることから熟練者を配置しているが、製氷部門は比較的単純な作業が多いことから雇用している障害のある従業員全員がこの業務に従事している。
製氷部門での作業は、製氷室から氷を取り出し、冷凍庫に保管する。その後随時注文に応じて加工のための作業を行う。12種類ある氷の種類ごとに保管場所も異なり、障害のある従業員の通常の作業は、製氷缶より脱氷した1本氷を起氷し、貯氷室に運搬し保管する内容であるが、大きいものは135kgもの1本氷があり、体力を必要とする。

製氷した氷を保管庫に運ぶ

保管庫から氷の搬出作業

3. 取り組みの内容

（1）通勤寮との連携による作業指導

　知的障害のある人を初めて雇用するにあたって、実習時に受けた通勤寮の指導員からの助言や支援が大変参考になった。
知的障害と言っても個々に性格も違えば能力も異なる。しかし、素直で真面目という共通点があり、それを如何に伸ばしてやることができるかが重要である。それまでには様々な問題点や就労を継続するための難しさもあった。
最初に雇用したAさんは、体力は十分あり、仕事の手順を理解するまでは多少時間がかかるが、一旦覚えたことは間違いなくこなすことができるため、繰り返し繰り返し付きっきりで指導にあたるなど、一つ一つ課題を理解させてゆきながら一連の作業をやり遂げることができるようになっていった。
これまで知的障害者を雇用した経験から、ある程度忍耐を持って対応すること、かつ良いことは良い、悪いことは悪いとはっきり示すことが必要であることを理解した。仕事を急かすようなプレッシャーをかけることはあまり効果がない。より分かりやすく態度で示し、作業をしっかり見極めて、不具合のある点についてはその場で指摘し修正することが必要である。
Cさんにおいては、当初は体力があまりなかったが、作業に慣れさせながら徐々に氷運搬などの力仕事を覚えさせたところ、今では他の従業員と同じように作業ができるまでになっている。

運送トラックへの積み込み作業

（2）障害者助成金制度の活用

　またDさん、Eさんの2人においては、最も体力を使う135kgの氷を手動で反転させる作業を任せることにしたが、その際に、秋田県雇用開発協会のアドバイスを受け、障害者作業施設設置等助成金を活用し自動の氷反転機を導入した。
Dさん、Eさんに機器の使い方を作業しながら説明したところ、慣れるに従って、他の従業員と同じように使いこなせるようになり、今では職場の貴重な戦力となっている。

氷反転機への装填作業

（3）業務遂行援助者

　知的障害者を雇用して4年になるが、今では彼らに対し家族同様に接している。代表の奥さんが、業務遂行援助者として作業はもとより、職業生活面までも事細かい相談や時にはじっくりと話を聞くなどの配慮を行っていることも、継続雇用における大きなポイントである。

4. 今後の展望

　知的障害者の雇用を進めることができたのは、通勤寮の指導員の熱意もあるが、いつでも相談に応じてくれる人が身近にいてくれたことが大きい。関係する機関が適切に相談に応じてくれ、時宜、適した支援を受けられたことも雇用継続が図られた一つの大きな要因とも言える。
事業所の発展なくして雇用の拡大はありえないことであるが、幸いにも当社は、順調な販路拡大とともに新規事業の展開を考えることができるようになってきており、近々新規に2人ほど知的障害者の雇用を考えている。

執筆者　：　秋田水産株式会社　代表取締役　　平尾　安一