事業所名

株式会社ニラク

所在地

福島県郡山市

事業内容

パチンコホール経営、ビジネスホテル・レストラン経営

従業員数

1，194名

うち障害者数

24名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	2	パチンコホール清掃
肢体不自由	3	人事事務、パチンコホール接客
内部障害	2	経理事務、機械メンテナンス
知的障害	13	パチンコホール清掃
精神障害	4	駐車場清掃及び植栽の手入れ、パチンコホール清掃

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯と現況
3. 取り組みの内容
4. 取り組みの効果・今後の展望

1. 事業所の概要

　昭和44年に東京都中野区で娯楽業（パチンコ店）を営む二楽商事として設立、昭和48年に福島県郡山市に本社を移転し、郡山と東京においてパチンコ店を順次開業していった。
昭和54年には郡山シティホテルを開業し、娯楽業以外のサービス業を展開するようになった。
平成10年には商号を現在の株式会社ニラクに変更し、現在に至っている。
現在は北関東から南東北を中心に1都6県でパチンコホール39店を展開しており、他にビジネスホテル・レストラン・喫茶店の経営を行っている。
経営理念は「明るく楽しく面白く」であり、これは「お客様がプレーしたくなる店」（オペレーション・ポリシー）と「従業員が働きたくなる職場」（チーム・スピリット）のかけ算の積としている。

2. 障害者雇用の経緯と現況

（1）障害者雇用の経緯
平成15年当時までは、15名の障害者雇用義務がある中で9名が不足している状況であった。
障害者を十分に雇用できなかった最大の理由は、職種の多くがパチンコホールの接客業務であり、前面に彼らを出しにくい部分があり、このため同年度には弁明機会付与通知、続いて障害者雇用命令を受ける状況となった。しかし、これを企業として消極的にとらえるのではなく、障害者雇用の機会であると積極的にとらえ、障害者雇用のためのタスクチームを結成したのが始まりである。
タスクチームの当初の活動は障害者の雇用創出のための情報収集・社内向け広報を行い、さらに社外に出ての各種セミナーや講習会への参加を行うことであった。

（2）障害者雇用の状況
平成19年6月現在で、従業員数1194名（常用雇用者）のうち24名が障害者であり、24名の中には重度の身体障害及び知的障害者がそれぞれ2名（計4名）いるため、障害者雇用率は2．4％となっている。さらに採用予定者も控えており、8月末には2．9％となる予定である。

（3）職場での労働環境
雇用している障害者の職場は大きく二つに分類できる。一つは本部での事務職。もう一つが各店舗の清掃・環境整備業務であり、こちらが多数を占める。
事務職の場合は身体障害（下肢障害）のある社員を配置しているため、ほぼ障害のない社員と同等の勤務条件である。
各店舗に配属している障害のある社員は、多くが知的障害あるいは精神障害があり、遊技台の清掃、施設の清掃、駐車場の管理を行っている。どちらも労働環境は雰囲気もよく全体的に良好である。

新潟県の店舗では知的障害者2名を雇用

3. 取り組みの内容

（1）職場の創出
障害者雇用にあたり、本部での事務職は少人数であり、店舗での接客業務が多数である業界なので、彼らが積極的に参加できる職種が不足していることが問題であった。
そこで清掃に着目し、清掃であれば彼らを雇用できるのでは、と考えたのが始まりである。店舗の清掃業務は専門の業者に外注しているため、外注業者と話し合い、仕事が重ならない「隙間」の業務を洗い出していった。例を挙げると社員が使用する事務所や休憩所の清掃などである。このことに対して外注業者からもユニフォームを提供するなどの協力を得られ、また障害のない社員が接客に専念できるなどのメリットが出てきている。
なお、清掃においては、社会福祉法人ほっと福祉記念会「からふる」における就労移行支援における実習の場として、当社の研修センターの机・椅子・窓ガラス・階段・通路の清掃を提供している。

研修センター

（2）労働条件
労働条件は、職種や本人の体調により複数の形態がある。前述したように、本部事務職の場合は、障害の有無による違いはほとんどないが、店舗の場合は、営業時間は9時から23時近くとなる。障害のある社員の場合は接客業務ではないので、勤務時間は受け入れ時に必要な仕事を決めた上で、本人やマネジャー、あるいは福島障害者職業センターの障害者職業カウンセラー等を含めた話し合いの上で決めている。 　なお、郡山市内の図景店では精神障害のある社員を配属しており、朝、営業前の遊技台の清掃から始まり、日常のホール周辺の清掃業務や植栽の管理（芝刈り、サツキの剪定）、駐車場管理を任せている。労働時間は休憩を除き7時間であり、毎日同じ時刻、週休2日で雇用している。他店舗の場合も同様の話し合いを持ち、本人に適した労働条件を組んでいる。

郡山図景店

（3）人的支援
店舗での業務の場合は知的障害や精神障害のある社員を多く配属している。直接彼らの指導に当たる各店舗の責任者（ストアマネジャー）は、障害者雇用に関して事前にレクチャーを受けている。
図景店に配属している精神障害のある社員は、コミュニケーションの能力が不足していることが課題の一つであった。このためマネジャーが積極的に声をかけること、また、本人の仕事を他の従業員に知ってもらうため、朝礼に参加させ発言してもらう等の試みを行っている。このため現在では接客の従業員と本人の間に良好な人間関係が築かれている。

（4）能力開発・教育訓練
各店舗において、障害のある社員の仕事においては、ストアマネジャーからトレーニングを受けている。仕事に関する評価には5円、10円といった刻みではあるが、半年ごとの時給考査システムを導入している。彼らがトレーニングで習得した知識と技術を常に発揮できているかどうかを本人にフィードバックし、不足する点の改善を努力目標として、納得できる評価のもと、やりがいのある職場にしてもらうことを目的として取り入れられている。
具体的にはチェックシートに勤務態度や仕事の達成度、身だしなみ等の項目を設け、ストアマネジャーが評価をしている。これはプラス評価をするものであり、降給のない昇給システムとなっている。

4. 取り組みの効果・今後の展望

（1）取り組みの効果
当社のようなパチンコ業界で積極的に障害者を雇用している企業は稀である。当社はもともとパチンコ業界を健全で楽しい娯楽にしようと意識改革に取り組んできている企業であり、各種の社会貢献も行ってきている。ここに積極的な障害者雇用が加わったことで、さらに社内の雰囲気がよくなった。
社員にとっては障害に対する理解が深まり、社員の気持ち自体も優しくなった。一般にオープンにすることは無いものの、各種講演会等ではこの取り組みを紹介し、徐々に企業イメージがあがっている。これが一般の新卒者募集にも好影響を与え、優秀な人材の確保につながっていること等が効果としてあげられる。
また須賀川店では、釈迦堂川の花火大会の時は、休業して駐車場を見物用に開放しているが、スタッフは、事前の準備と終了後のゴミ拾い等の後片付けを行っている。

花火大会終了後の後片付け後の打ち上げ

　なお、当社は、24時間テレビにおける募金活動にも携わっているが、当社が24時間テレビに協賛しているCMを見た障害者から、「障害者雇用をしているのか？」と質問を受け、「それぞれが能力を発揮してできる仕事をしていただいています」と答え、法定雇用率を達成していることを説明したところ、「今後も頑張ってください」との言葉をいただいた。

24時間テレビの募金の準備

（2）今後の展望
社内ポスターには「当社は障害を持つ方々にも自分の能力を発揮し生き生きと働いていける会社を目指します」とあり、これは障害者と働くことが特別なことではない企業を創っていきたいという、ノーマライゼーションの理念の表れである。
初期の目標は「社員2000名体制で50名安定雇用の仕組みつくり」であったが、他業界の大手で7．8％の雇用率を達成している企業もあることから、今後はこの数値を目標に、「ニラクで働くと楽しい」と言われる企業を目指していく意向である。

執筆者　：　郡山女子大学　専任講師　　佐藤　篤史