障害者が主役の職場で、驚異の雇用率を達成
- 事業所名
- 株式会社大滝 茨城工場
- 所在地
- 茨城県常総市
- 事業内容
- おしぼりを主とした、マット・モップ・タオルのレンタル
- 従業員数
- 17名
- うち障害者数
- 14名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 3 おしぼり洗い 内部障害 0 知的障害 11 おしぼり洗い 精神障害 0 - 目次

1. 事業所の概要・障害者雇用の状況
(1)概要
1966年10月に創立し、おしぼり、マット等のレンタルを業務としている当社の売上げの7割は、飲食店等で使用されている「おしぼり」の生産である。大滝全社(本社は東京都)では、毎日140万本~150万本、茨城工場では40万本生産している。
当工場の社員17名のうち障害者は14名、うち11名が知的障害者である。このほかに4時間勤務のパートタイマーが100名。障害者が主役となっている工場である。
(2)障害者数
茨城工場 14名(うち重度障害者 5名)
(全社 41名(うち重度障害者22名))
(3)障害者雇用率
茨城工場 111.8%
(全社 25.2%)
(4)内訳
種類 | 全社 | 茨城工場 |
---|---|---|
肢体 | 1( 1) | 3( 2) |
内部 | 3( 2) | 0( 0) |
知的 | 37(19) | 11( 3) |
合計 | 41(22) | 14( 5) |
(カッコ内は重度障害者で内数)
(5)茨城工場で現在雇用している障害者の年次別雇用数
No. | 採用年度 | 種類 | 採用経緯(すべてハローワーク経由) | 担当業務 |
---|---|---|---|---|
1 | 平成15年 | 肢体 | ハローワーク | おしぼり洗い場 |
2 | 知的(重度) | ハローワーク | カゴ詰め | |
3 | 平成16年 | 知的 | 授産施設紹介 | ロールタオル仕分け |
4 | 知的 | 授産施設紹介 | ロールタオル結束 | |
5 | 知的 | 授産施設紹介 | ロールタオル結束 | |
6 | 知的 | ハローワーク | マット洗い場 | |
7 | 知的(重度) | 就職面接会 | マット包装 | |
8 | 知的 | ハローワーク | おしぼり洗い場 | |
9 | 肢体(重度) | 就職面接会 | おしぼり洗い場 | |
10 | 肢体(重度) | 就職面接会 | おしぼり洗い場 | |
11 | 知的 | 南部障害者雇用支援センター | マット包装 | |
12 | 平成17年 | 知的 | ハローワーク | おしぼり洗い場 |
13 | 平成18年 | 知的(重度) | 養護学校生徒の実習 | おしぼり洗い場 |
14 | 知的 | ハローワーク | おしぼり洗い場 |
2. 障害者雇用の経緯
(1)障害者雇用のきっかけ
当工場における障害者雇用のきっかけは、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金の受給。助成金申請は認可され、機械・施設は問題なく準備完了したが、12名の障害者雇用が義務付けられた。
(2)5年で14名(うち重度4名)を雇用
雇用義務ではあるが障害者12名を短期間に雇用するのは並大抵のことではない。ハローワークや近隣の養護学校・福祉施設、茨城県の障害福祉課と、障害者雇用、定着に関係するすべての機関に声をかけ協力を仰いだ。もちろん障害者就職面接会にもすべて出席した。
しかし、家庭の事情というやむを得ない理由も一部にはあったが、一気に多くの障害者を採用したことや、受け入れた職場の準備不足もあり、定着までには大変な労力と時間がかかった。
工場立ち上げ時の平成15年には、3名(うち重度2名)を雇用したが、そのうち1名(重度)が退職し、2名(重度1名)が定着した。
平成16年は、16名(重度5名)を雇用し、7名(重度4名)が退職した。定着したのは9名(重度1名)のみであったが、この時点で雇用義務の12名を上回る13名(重度2名)を雇用することができた。
平成17年以降も毎年採用を続けているが、その後の退職者はゼロで4名(重度2名)が定着している。
工場全体での障害者雇用数は19名(実数15名、重度4名はダブルカウント)が定着し、雇用率は111.8%と100%を超えている。しかも現在も雇用義務、雇用率にとらわれないで、積極的に障害者雇用を継続している。
3. 取り組みの内容
(1)仕事はあらゆるエリアに及んでいる




(2)労働意欲や作業態度の向上
労働意欲、作業態度はまさに十人十色であるが、根気強くやっていくしかない。やはり、一緒に働く周囲の社員の協力が不可欠。採用を始めて5年を経過して、周囲の理解も深まり職場に落ち着きが出てきた。また、障害者自身が先輩となり、後輩を指導する気持ちの余裕も出てきている。
(3)ジョブコーチの活用
雇用開始当初からジョブコーチが頼りで、頻繁にアドバイスをお願いした。もし、ジョブコーチがいなかったら雇用義務の12名定着はもっと時間がかかっただろう。今でも採用したらかならずジョブコーチにアドバイスをお願いしている。
(4)「やってみせて、いってきかせて、させてみて、大いにほめる」
マニュアルによる教育は難しい。山本五十六の有名な言葉、「やってみせて、いってきかせて、させてみて、ほめてやらねば人は動かじ」が基本である。
「大いにほめて、決して怒らない」が合言葉。しかし、よいものはよい、悪いものは悪いと、はっきり注意することは大切であるし、任せられるものはどしどし任せる。いつまでも手取り足取りでは自立はできない。
(5)今日より明日、明日より明後日!
一般的には、知的障害者は変化を好まない人が多いので、できるかぎり作業場所、作業内容を変えないほうがよい。とくに仕事を変えるとポジションを奪われるような不安感をもつので、注意しなければならない。
しかし、同じ仕事を続けていると今日より明日、明日より明後日といった具合で着実に成長していく。上達スピードは遅いが、後退しないところが長所である。
(6)受け入れ職場の教育
5年という短期間に多くの人を採用したため、周囲の理解を得るのはなかなか大変であった。本人に対する教育ばかりでなく、受け入れる職場の社員に対する教育も彼らを配属する前にやっておいたほうが良い。
(7)設備の改善、安全対策
知的障害者を受け入れるにあたっては、「案ずるより産むが易し」でいろいろ心配したが、特別改善する必要はなく、特別な安全対策も講じていない。労働災害も発生していない。
しかし、今後コンベアを使用したおしぼり包装にトライすることになった場合は、機械の改善は必要ないが、動く機械の巻き込まれ防止には十分注意を払う必要がある。
障害者雇用の基本は、ハンディキャップ部分に手を貸すだけでよい。したがって知的障害者の場合、設備の改善、安全対策は健常者と同じでよいので、特別の改善は必要なかったわけである。
(8)通勤対策
知的障害者で一番心配するのは通勤方法。電車と自転車5名、バイク3名、自転車2名、バス1名、グループホームからの徒歩3名と、全員自力で通勤が可能である。しかし、今後さらに人員が増えた場合は、マイクロバスの購入を検討することも予想される。
(9)家族・支援機関との連携
健康問題が生じたら直接家族と連絡をとるが、基本的には家族との連携は出身施設を通して行っている。
出身施設のスタッフは長く本人と一緒に生活を共にしてきており、本人の性格もしっかり承知しているため、適切に指導、アドバイスができるので、目下のところは全く問題はない。
4. 将来の展望
(1)自立に向けて
賃金面も含め、いずれは自立する時がくる。それに備えることは必要で、現在でも最低賃金はクリアしており、健康でまじめに働く人は希望すれば63歳まで再雇用することも可能である。今後は65歳まで雇用されることは間違いないだろう。
もちろん厚生年金、健康保険等の社会保険にも加入しており、自己管理をしっかり行い健康であれば65歳までの雇用も可能となる。
今後の課題は、気力・体力の維持と生活資金等、老後に備えた準備といえる。
(2)新規業務に挑戦
現在、動く機械のところで働く障害者はいない。しかし、これからさらに多くの障害者を採用するためには、働く範囲を広げる必要がある。そのために平成18年11月、12月におしぼり包装ラインを1ライン提供して、授産施設から延べ18名の知的障害者を受け入れ、おしぼり包装作業の実習を行った。
結果は良好で、スタート時は健常者が1時間1,500本包装するところを300~400本(2~3割)しか包装できなかったが、2ヵ月後には1,000~1,200本と、合格ラインの7~8割にまで成績が伸びた。
これならおしぼり包装ラインを彼らにも任せることができると考え、今その準備をしているところである。これが可能になれば、さらに数名の障害者を雇用することになる。

毎日40万本という大量のおしぼりを生産している茨城工場。障害者雇用率は111.8%に達し、工場内のあらゆる職場で障害者が主役となって活躍している。
しかし、この状況に満足することなく、おしぼり包装ラインにも挑戦している。このあらゆる可能性にかけて、一人でも多くの障害者を雇用しようとする姿勢が見られる。
限りなく温厚で温かい人、という印象を与える執行役員経営企画室の入江俊男室長が「障害者のために未知の領域を切り開きたい」と語る時の目には、やはり何としても成功させたいという挑戦者の強い意志が溢れている。
非常に高い障害者雇用率を達成してもなお、障害者雇用をベースに企業規模の拡大をはかる株式会社大滝への期待は、ますます高まる。

執筆者 : ヒューマン・リソーシズ・コンサルタント 北村 卓也
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