知的障害者の重機運転の資格取得に向けた能力開発
- 事業所名
- 株式会社マルキュウ
- 所在地
- 埼玉県越谷市
- 事業内容
- 空き容器リサイクル
- 従業員数
- 17名
- うち障害者数
- 9名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 0 肢体不自由 0 内部障害 0 知的障害 9 重機操作(1)、ライン手選別(8) 精神障害 0 - 目次
1.事業所の概要
当社は昭和49年に従業員5名でスタートし、廃棄物の再生を目的として創業して以来、廃棄物処理の専門会社として業務を遂行してきた。
飲料容器リサイクル加工・各種リサイクル加工・非鉄金属スクラップ売買・鉄スクラップ売買・産廃収集運搬、中間処分業・事業系一般廃棄物処理(越谷市認可)等の業務を行い、廃棄物の質・量ともに多種多様化するなかで、限りある資源の有効利用のため、再資源化を図っている。
従業員数17人のうち、障害者は全員が知的障害者9人。うち重度7人。

2.障害者雇用の経緯と現況
(1)経緯
飲料メーカーのある県西の支店で回収作業を行っている際、近隣の障害者施設の職員と知り合い、それがきっかけで知的障害者の選別作業に取り組み始めた。しかし、川越から越谷まで施設バスでの送迎で受け入れていたが、距離や通勤の時間・施設の行事等、また繁忙期の夏の時期など会社側と施設とのずれが生じてしまい、いったん終了となる。
その後、その経験を生かして、知的障害者の方が働ける場を提供するために雇用に取り組み、平成元年に養護学校からの要請で知的障害者を1人採用したのが最初であった。
ビンやカン、ペットボトルの選別作業の仕事が主であるが、ベルトコンベアでの流れ作業のためチームワークが大切であるとともに、色々な種類が入り混じっていることから一つ一つ分別していく集中力が必要である。共に作業する中で根気よく教えればプロ意識を持って取り組むことが分かり、毎年養護学校やハローワークからの紹介で雇用を増やしてきた。
(2)業務内容
当社では、選別ラインにおける空き容器の手選別が主な作業である。手選別により分けられた各々の容器類を圧縮機等により再資源物とする。また構内において、この選別作業のほかに、選別ラインへ空き容器類を供給する作業、再資源物を移動・保管する作業がある。これらの作業には、フォークリフト等の重機類が不可欠なものとなっている。


(3)組織構成
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3.能力開発・教育訓練の取り組みと効果
(1)取り組みの内容
障害のある人の中には、適した仕事に従事すると職人のような働きをすることがある。担当を決めて仕分けしている社員は、プロ意識を持ち生き生きと作業をしている。
その中でも当社では、選別ラインでの手選別のほかに、知的障害のある社員(Aさん)の能力開発として、重機資格取得に向けて取り組んだ。
重機に対して、本人の興味関心・集中力・器用さ・冷静さ等を見極め、構内作業開始前の毎朝1時間を利用し、オペレーター(社長)によるマンツーマンの実車指導を行う。なお、その際に『安全指導』も徹底的に行う。
①重機とはどんなものか ②重機にどれだけの力があるのか ③重機の間違った操作でどんな事故がおきるのか 徹底的に何度も繰り返して指導する。一度でも構内の器物損害を起こしてしまったら、乗れなくなることを約束し、Aさんも操縦する際360度の視野すべてに注意を払って取り組んだ。重機に乗り仕事をしたいという気持ちが周りに対する集中力を鋭くし、無事故という偉業を成し遂げることができた。
また、機械構造などの学科は、自宅で父親と市販の教材を使い、内容をどんどん吸収し覚えることができた。Aさん自身、大変であるとか、辛いといった気持ちを持つことなく、毎日毎日の実技及び自宅での教材による勉強に張り合いを持ち、更に仕事への意欲向上につながっている。
そして約1年間の指導の結果、Aさんは重機の免許を取得することができた。
なお、この事例は、平成19年度障害者雇用職場改善好事例に応募し奨励賞を受賞した。


(2)取り組みの効果
重機を操作できるAさんは、他の知的障害者のリーダー的な存在であり、頼られていることにより、更に仕事に責任感を持って取り組むという相乗効果が期待できる。
仕事を通じて各個人の優れた能力を引き出せたことは、個人はもちろん当社にとっても障害の有無を超えて素晴らしい能力を発揮させることができるという自信につながっている。
今後も興味を持って仕事を続けることができる知的障害のある人がいれば、彼らが従事する業務を更に増やし、配置換えをする等のステップアップに取り組んでいく意向である。
4.定着への配慮
(1)職場実習
障害者の職場実習を年1~2回受け入れている。職場実習を行い就職を希望する養護学校の生徒に対し、当社も実習期間中にその人の能力を見極めたうえで採用を検討している。
職場実習を受け入れることにより、障害のある社員に指導の担当を任せることで、自分に自信や可能性が持てるようになると、仕事に意欲が出てくるほか、実習生から良い意味でも悪い意味でも影響を受け成長していくことが期待できる。
(2)精神的な配慮
知的障害のある社員は、病気でない限り休むことはない。3ヶ月に1回位、仲間うちでいさかいやもめ事があるが、その都度、その場で指導し、家族との連携を密にしている。
家庭での生活習慣や体調管理を聞き取りながら、彼らの不安をとにかく受け入れ、聞いてくれる人がいるという職場にしている。
5.まとめ・今後の展望
(1)まとめ
当社の障害者雇用の取り組みについては、以下のとおりまとめることができる。
1)運営面の職場環境作り
すべての社員が前向きな意欲を持続しながらいつでも活き活き働けるようによりよい環境作りをしている。
2)精神的環境整備
無意識の差別や偏見を徹底的に排除している。
3)職能開発
一人ひとりの適材を考慮し専門性の高い人材として育成している
4)相互協力
障害のある社員もない社員も自分でできることを通してお互いに助けあう。
障害のある社員が働いているビン・カン・ペットボトルの選別作業現場では、選別作業を行う社員は、ベルトコンベアの速い流れを集中して見つめ選別している。重機を運転する社員は、ニコニコと楽しそうに仕事をしている。障害者の有無を感じさせず、彼らがみんなの中に溶け込んでいることがわかる。
カリスマ性を持って障害者雇用を進めてきた先代の社長が5年前に他界し、跡を継ぐ兄弟では、障害者雇用が進められるのかどうか不安であったと言う。
障害のある社員一人ひとりと話し合い「先代の社長は天国から見ている。君たちのおかげでこの会社は回っている」ことを伝え一緒に取り組んできたことが、皆の顔から伺うことができる。
(2)今後の展望
当社の業務内容・回収する品目に変化が現れている。今までは、アルミ缶やスチール缶の選別が主な仕事でやってきたが、現在はペットボトルが多くなってきている。
更に手作業の選別事業が拡大するので、障害者雇用を今後も検討していく意向である。
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