事業所名

真野ガラス株式会社

所在地

富山県富山市

事業内容

ガラス製品製造販売

従業員数

88名

うち障害者数

7名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	6	切断、切削、検査
肢体不自由	0
内部障害	1	梱包
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯・考え
3. 取り組みの内容
4. 今後の展望

事業所外観

1. 事業所の概要

　1952年4月、富山市東田地方の地で真野ガラス店を個人創業し、1970年4月に当社を設立、本社を現在の所在地に置く。
当社は、ベルサイユ宮殿の「鏡の間」を手がけたサンゴバン社（フランス）の板ガラス販売会社で組織する「デュオライトクラブ」のメンバーシップに日本企業として第1号の加盟を果たし、機能ガラス「デュオライト」製品の製造・販売・施工を行っており、大手ホテルのビュッフェや植物園など公共民間向けを問わず、ガラス建築物の施工例も多い。
また、2003年にISO9001を認証取得し、品質保証体制も確立している。
事業内容は以下のとおり。

①複層ガラス、強化ガラス、合わせガラス、面取りガラス、ルーバーガラス、サンドブラストなどのガラス加工製品の製造
②ビル用および住宅用サッシ、エクステリアなどのアルミ建材販売施工
③ガラス工事業および建具工事
④一般ガラス修理

　当社のモットーは『大きな会社ではなく強い会社を目指し、お客様の満足度を高めて社会に貢献する。』である。
真野清治代表取締役社長は、小さかった頃、父が額に汗して一生懸命『家族の為、従業員の為、お客様の為』に働く姿を思い出すたびに、会社を存続させることがみんなの幸せ （社会に対する貢献）であると確信し、お客から「真野ガラスと取引してよかった。」と思っていただける事業所に近づくことが使命であると話す。

整理整頓された検査工場

2. 障害者雇用の経緯・考え

（1）経緯

　当社がはじめて障害者を雇用したのは38年前に遡る。個人経営の頃、店の近くに位置する富山県立富山ろう学校から聴覚障害者に係る採用の要請を受けていた。
ガラスの取り扱いは、常に危険を伴う仕事であり、当初は躊躇していたが、「地元のお役にたてるのであれば・・・」という気持ちで試用採用した。
当時の番頭さんが、手取り足取りしながらマンツーマンで仕事を教えていくうちに、彼らが障害のない従業員に負けない仕事振りを発揮できることがわかった。
主にOJTによる教育訓練や職場環境整備をすすめ、かつ相談員による継続的な指導によって職場適応を図っている。現在、障害のある従業員は7人であるが、今年度入社した1人を除く6人の平均勤続年数は34年である。

（2）障害者雇用のコンセプト～3つの基本（創業者の精神）

①意欲・能力があれば、健常者、障害者の区別なく雇用する。
②ガラス加工は危険と隣り合わせであり、取扱は十分に注意するよう安全管理・訓練を徹底する。
③教育訓練を行うことにより、障害者も健常者同様の雇用の場を提供できる。

3. 取り組みの内容

（1）障害者の主な担当職種の設定

①ガラスの切断・仕上げ（2人作業）

②ルーバー用ガラスへのシリコン塗布
③ガラス研削加工
④合わせガラスのひび・きずなどの検査
⑤製品の梱包

「切割」、「切断」工程

（2）障害者職業生活相談員による生活指導

　障害者を雇用した当初は、仕事上の失敗や周囲とのコミュニケーション不足などが重なって、人によっては無断欠勤が頻発するケースが発生し、その都度、労務担当が家族と連絡をとり、行く先を探して連れ戻すなど、職場定着のために地道な努力をしていた。
現在は資格認定講習を終了した障害者職業生活相談員を配置し、職場長と連携して彼らとのコミュニケーションを図っており、出勤率は100％となっている。

（3）徹底したOJT教育

　作業標準に基づく作業への習熟および安全について職長とマンツーマンで教育を受け、習熟後も定期的にチェックされている。口話、手話および実務指導によりコミュニケーションが図られている。

集中力が要求される検査工程

（4）適正配置

　「聴覚障害の方は、周囲の変化に敏感であり集中力が高く、異常音に対する識別能力などは健常者以上にすばらしい。」（某職長談）といわれる。
ガラスは「きず」や「ひび」が一点でもあると商品価値を失う。また、切断行程集中力が要求される検査工程や研削工程では、切粉や研削粉の飛沫あるいは破砕による受傷の恐れも伴うので、取り扱いには高い注意力を要求される（危険防止のため作業標準の遵守、手甲などの防具着用が義務付けられている）が、すばらしい感性を活かすような配置を行っている。

（5）目で見る管理および障害者に配慮した設備保全

　機械、装置および運搬具などには「稼動中」、「停止中」、「異常発生」等を遠方からも識別できるようパトライトを設置しており、また、作業指示の掲示板により随所に掲示するなど目で見る管理が徹底されている。

4. 今後の展望

　これまで障害のある従業員を雇用したことで特別苦労したとは思っていない。勤務が長い人は69歳になっているが、38年間も当社で勤務している。その方が両者にとって幸せである。
設備面の改善など物理的な配慮は別として、障害があるが故の特別扱いはしていない。ただ、他の従業員には彼らと同じ目線に立って話すよう伝えている。意欲と能力がある人であれば今後も障害者を雇用していく意向である。

真野社長

執筆者　：　社団法人富山県雇用開発協会　高年齢者雇用アドバイザー　　大代　武