事業所名

有限会社創栄産業

所在地

福井県三方上中郡若狭町

事業内容

介護保険指定事業（福祉用具販売・レンタル）、建設業（一般建築、福祉住環境整備業）

従業員数

7名

うち障害者数

1名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	1	福祉住環境コーディネーター・福祉用具相談員
内部障害	0
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 身体障害者雇用の経緯
3. 障害者雇用の状況と助成金の活用
4. 障害者の雇用の考え・今後の展望
5. 従業員の声

事業所外観

1. 事業所の概要

　当社は、平成5年に贈答品、インテリア商品販売業として創業し、社会に貢献できる企業を目指し事業を営んできた。
その後、建設業の事業資格免許を取得することにより、インテリア施工業から住宅設備、リホーム業を経て一般住宅及び障害者の住環境整備事業を展開している。
また、平成17年に建てた新社屋では介護保険指定事業の免許も取得したことから、福祉用具の体験ショールームと相談窓口を併設、社会福祉のお手伝いの一役を担い、社会一般に貢献できる企業として、更なる発展を目指している。

ショールーム

相談コーナー

2. 身体障害者雇用の経緯

　10年程前から近隣の社会福祉センターでボランティア活動に参加しているが、ある時、身体障害者の雇用の現状を知る機会があり、本人達は働きたいがその機会がなかなか無いとの説明を受けたことが江戸雅良代表取締役の心残りとなっていた。
そこで、平成17年に新社屋を建設するにあたり、障害者の雇い入れができる環境設備を整えるとともに、介護保険指定事業所の開業の計画を勧める中で、できれば最初から介護事業等に関ってもらえる人材を採用することを前提に、ハローワーク敦賀に相談し「体が不自由でもやる気のある人」なら採用したい旨を伝えた。
その結果、ハローワークから紹介を受けた、中途で頚椎損傷を負った重度の上下肢機能障害があるが、介護保険指定事業所の免許を取得している山崎さんを、2ヶ月のトライアル雇用を活用した上で、福祉用具相談員及び住環境コーディネーターを兼ねた正社員に採用した。

山崎さんと介助者

3. 障害者雇用の状況と助成金の活用

（1）雇用状況

　山崎さんは身体面で大きなハンディを背負っているが、周囲の従業員が彼の立場に立った考えを持つことにより、皆でカバーしながら仕事に従事している。
業務内容は、お客との福祉用具の相談や商品説明、障害者用住宅改修を福祉住環境コーディネーターの立場からアドバイスすること及びこれらの事業に関する行政とのやり取りに従事しているが、その傍らで時折、近隣の小学校・病院・大学等に出向き、自身の中途障害になった経緯を基に「今を生きる本人の人生体験」と題した講演も行っている。
また、訓練して身につけたパソコンの知識を駆使し、当社のホームページの制作や名刺、チラシ制作も積極的に行っている。
最初は就業の時間帯や体調の管理など戸惑うこともあったが、現在は介助者以外の従業員も常に気にかけるよう注意してお互いの業務を遂行しているので特別な問題はなく、他の従業員と変わりなく勤務している。

商品説明をする山崎さん

車いすの説明をする山崎さん

福井県立大学での講演

（2）助成金の活用

山崎さんの雇用にあたり活用した助成金は、以下のとおり。
①特定求職者雇用開発助成金（特定就職困難者雇用開発助成金）
②障害者介助等助成金
職場介助者の配置に活用。
③障害者作業施設設置等助成金
社屋におけるスロープ、玄関の自動ドア、身体障害者用トイレの設置、その他本人が移動しやすいよう全社屋にわたったバリアフリー化に活用。
作業現場における十分な作業スペースの確保等の環境整備に活用。
④障害者福祉施設等助成金
食堂・休憩室の設置に活用。

4. 障害者の雇用の考え・今後の展望

（1）障害者雇用の考え

　当社は、新しい分野での事業を行うにあたり、障害者の雇用を前提に取り組むこととし、全くの手探りの状態で採用職員の募集等を進めてきた。
何人かの応募者との面接をする中において、「不慮の事故で上下肢機能障害による重度の中途障害者となり、絶望のなかから新たに人生を切り開かんとする強い就労意欲と自力での社会生活を目指す勇気」を持つ山崎さんを見ることができた。
社会的に見ると、障害者の方はまだまだ雇用の機会が少ないことと思うが、障害のない人と比べると「それ以上に働くことに対する強い意志」を持っていることを痛感させられたところであり、今後においても障害者雇用機会の拡大を図っていく意向である。
また、時折、障害者を雇うメリットは何かと聞かれることがあるが、第一には、職場のなかで彼らが精一杯仕事をしている姿を通し、他の従業員が彼には負けられないとの意欲を示し、お互いに切磋琢磨し職務に従事してくれることは、将に企業の財産であると確信している。
第二には、彼らの働き易い環境整備が容易にでき、雇用の継続にも繋がっていくことである。彼らの作業を容易にするために配慮された施設または設備の設置・整備等が、雇用支援協会の相談・援助支援により各種助成金を活用することによって、環境整備が整えられている。

（2）今後の展望

　現在は既存の枠組みのなかで事業を行っているが、今後、障害のある従業員ならではの目線で新たに事業を展開していけるように進めていきたい。

地域社会に貢献できる企業を目指して

5. 従業員の声

（1）山崎さん

　私は大学卒業式当日、1998年3月のバイク事故で、第5頸髄損傷の重度身体障害者となりました。
当初は生きるか死ぬかの瀬戸際でしたが、医師をはじめ家族、友人など多くの方に支えていただき一命を取り留めました。
そんなあるとき、両親から「あんたしかおらんのや、老後は養ってもらわなあかのやで！」と自分の生きる目的を教えてくれました。「よし、働こうと！」と集中治療室からようやく出ることが出来た、両手両足、首すら動かせない身体で決意。1年半のリハビリ期間を終え、在宅生活が始まりました。目標は「働く」こと。
しかし、その手段がわかりません。訓練させて欲しいと様々な機関・施設に問い合わせをしましたが、自身の障害レベルと生活の現状を話しすると「受け入れは難しい」とのことで、「さてどうするか」と悩んでいました。ちょうどパソコンが一般的に普及し始め、私にもこれを使えば何とかなるのではと思い自前で勉強し始めました。だがそれも限界が…
そんなある日、障害者の就労支援をしている神戸のプロップステーションの存在を知り勉強させてもらうことに。両親親戚の協力のもと、毎週土曜日、神戸六甲アイランドまで通うこと2年。基本的なパソコンソフトの操作ができるようになり、アルバイト的な簡単な仕事を頂けるようになっていました。しかしながら思い描く収入にはほど遠い状態です。
さらなるスキルアップをと福祉住環境コーディネーター2級の資格を取りました。この資格は各自の障害特性に合わせて受験方法を考えてもらえるので非常に嬉しかったです。
その後、地元に福祉用具のレンタル販売とバリアフリー住宅改修の事業所“クリエフ”が出来ることを聞き、ハローワークに相談。障害者の雇用に積極的だと言うことで紹介して頂きました。面接の結果合格。重度の障害者である私を理解して頂いた上で社員として雇って頂けたことに感激の一言でした。
現在は介助員、社員のみなさまの理解とサポートのもと、チラシ・名刺作り、ホームページの作成、お客様の相談対応など多彩な業務に就いています。これからもお客様のため、会社のため、地域社会のために、さらななる自身の向上をめざしてがんばります！

山崎さん

（2）従業員　岡林さん

　入社当初は、私達に障害の知識があまりなく、どのような業務介助をすればいいのか戸惑いましたが、講演会への参加やコミュニケーションをとりながら徐々に理解と認識を得、今では障害者であることに特別な意識を持たずに一緒に就労しています。
新事業展開にあたり、介護保険指定事業所の免許取得などに貢献され、また、住宅改修や福祉用具販売・レンタルのお客様からは自分の経験を生かした適切なアドバイザーとして信頼されています。
PC技術がとても優れているのでいろいろな分野の業務に生かされています。仕事や自分の将来に目標を持って取り組んでいるのが見られ、今後の向上が期待できると思います。

執筆者　：　有限会社創栄産業　代表取締役　　江戸　雅良