事業所名

有限会社岩田工業

所在地

岐阜県羽島市

事業内容

鉄筋加工業

従業員数

18名

うち障害者数

5名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	5	鉄筋の加工作業（電気溶接）
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯
2. 障害者雇用の状況
3. 取り組みの内容
4. 今後の展望等

事業所外観（工場の一部）

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯

（1）事業所の概要

　日本全国の各地で実施された土地改良の際には、農業用水の整備も同時に行われ、その護岸工事として当社の製品もコンクリートの鉄筋として大量に使用されてきた。
この工法は従来の工法に比べ画期的な工法で、長年にわたり独占的に使用されてきた。しかし、日本全国の土地改良も峠を越えた。従来は大型の機械で大量に生産してきたが、現在は製品の規格も年々少しずつ変わるため「多品種少量生産」となってきた。
この様な生産方法の変遷の中で、逆に障害者にも出来る生産方法が確保された事にもなった。現在雇用している障害者は重度知的障害者が5人である。

（2）障害者雇用の経緯

　最初に障害者を雇用したのは昭和63年で、以降平成4年まで毎年1～2名採用し、ピーク時には知的障害者7名を雇用していた。
障害者との出会いは、大垣養護学校の生徒を体験実習として受け入れたのが始まりであるが、養護学校から、実習だけでなく採用についての要望も受け、昭和63年から採用が始まった。

2. 障害者雇用の状況

　5年前に私鉄の3線が廃線となり、通勤に支障のある2名をやむなく解雇する事となり、現在は重度知的障害者5名が就労中である。
就労中の5名は、全員が養護学校卒業と同時に採用、年齢は32才～36才と働き盛りで年齢も近い。
作業内容は、全員が電気溶接に従事しており、格子状に組まれた鉄筋の交差している部分を専用機器で電流を流し溶接している。
勤続年数14～18年の彼らに対して、大きな戦力と期待をかけている。

障害者の作業状況

溶接済の製品

3. 取り組みの内容

（1）職場配置と給与制度

　当社では障害のない日本人以外に、障害者と外国人も雇用しているが、トラブル防止の観点から作業は別々の工場で作業するよう配慮している。
なお、外国人等の社員への給与に導入している出来高制は、障害のある社員には導入していない。
製品の返品や苦情の面から見ると、彼らの作業した物には不良品や苦情がほとんど無い。その理由としては、出来高制を導入していない彼らの作業においては、指示された内容を忠実に実行していることがあげられる。その一方で、外国人等の社員には作業量が給与に反映されるため、スピードを優先してミスにつながっていることが考えられる。

（2）効果を焦らず、熟成の心で指導

　障害のある社員は、全員が重度の知的障害があり、また養護学校の新卒者である。彼らは社会経験が少ないため、最初から他の社員と同様の早期戦力化は求めず、気長に一人ひとりの能力・性格・家庭環境等を理解して2～3年かけてでも「じっくりと」指導・育成することを心がけている。
このような指導方針のもとで、現在の勤続年数14～18年に至っている。

（3）社長直々の送迎

　重度知的障害のある社員全員を14年以上継続雇用している大きな原因の一つには、朝晩の送迎のため、現在66才の社長が直々に車を運転していることがあげられる。
経営者の障害のある社員に対する接し方が彼らの心をつかみ、社長は「親父さん」と慕われている。

社長と送迎車

4. 今後の展望等

　当社の障害者雇用「第一期生」は、社長の愛情のもとで期待する人材に成長した。少子化の時代にあって、従業員18人の当社の今後を考えると、「第二期生」の障害者を4～5人採用し、育てることも検討課題である。
第二期生の仕事としては、現在外部委託している作業を自社生産に切り替える事で対応が可能と考えている。
当社のような障害者の雇用義務の無い事業所における障害者雇用においては、障害者雇用率には反映されず、また、報奨金支給申請」の条件も非常に高く、障害者雇用の努力がより充分に評価されることが望まれる。

執筆者　：　社団法人岐阜県雇用支援協会　障害者雇用アドバイザー　　福井　紳一