事業所名

株式会社マルマツナーセリー

所在地

三重県鈴鹿市

事業内容

農業

従業員数

35名

うち障害者数

2名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	0
精神障害	2	園芸商品の鉢植え等の草取り、株分け、鉢の土の整理

目次

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯
2. 取り組みの内容
3. 今後の展望

事業所外観

1.事業所の概要・障害者雇用の経緯

　当社は、園芸業務を主たる業務としており、ホームセンター等に鉢植え等を卸している事業所である。また、商品生産・販売以外に公共施設や市役所、企業等に植栽工事用商品の卸売り等もしている。
当社においてもっとも注目をすべき取り組みとしては、精神障害者の雇用及び訓練を積極的に行っているところにあり、現在、2人を雇用、13人を精神障害者の社会復帰施設またはハローワークからの実習として受け入れている。
松葉谷代表取締役は、障害者雇用に取り組むことになったのは、周囲に障害のある子どものいる家族がいたことや、これからの労働力の確保、企業の社会貢献ということを挙げる。
障害者雇用のための募集は平成14年頃から始めていたのだが、最初の2年ぐらいは応募がまったくなかった。園芸業務の内容が伝わりにくく、どのような職務内容になるのかが想像しにくかったために、敬遠されたのではないかと推測している。
募集については、市役所や地元の求人誌、公共職業安定所にも求人を出し、保健所を通して職親のための手続きをとり、病院や福祉施設に足を運んで依頼をして回った。その結果、たまたま精神障害者の社会復帰施設から体験実習の受け入れ依頼があり、現在に至っている。
また、当社はこれまでハローワークから3日程度の実習を、年間10～20人程受け入れている。

2.取り組みの内容

（1）自由な作業時間

　当社は事務所と農場とが離れており、出勤管理は農場で勤務する障害者職業生活相談員が担当している。松葉谷代表自身も農場に出向いてタイムカードを確認し、仕事状況とあわせて確認をしている。
農場における障害のある従業員の主な仕事は3つ挙げられる。一つは商品となる鉢植え等の草取り、二つ目は商品として出せなかった鉢植えを鉢から出し、土を再利用できるように一箇所にまとめること、三つ目は株分けである。
実習においては、特にこれらの作業を通して作業能力を客観的に評価するようにしている。具体的には、特に株分けの作業において、一定の時間で株分けができた結果を、他の従業員の作業量と目視で比較し、事業所として把握するだけではなく、実習生本人にも自分の能力を客観的に見てもらい、納得をしてもらうように工夫している。
実習の結果、どうしても賃金を払う能力に見合わなければ断っているが、一定の能力があると判断すれば継続して受け入れている。

株分け作業

　作業時間は比較的自由に設定している。その日の体調により、数時間や午前だけ、午後だけという日もあれば、丸一日働くことも休むことも自由にできる。また屋外作業の関係で雨天では作業ができないため休みになる。
精神障害のある人にとっては、休みたいときに休むことのできる作業環境が職場定着に結びつくのではないかと考えている。賃金は出勤した時間数だけ時間給で支払うため、タイムカードによる管理ができていれば、それほど複雑ではないことが自由な勤務形態に繋がっている。また、作業環境が広大な敷地の中で働いている従業員は数名であり、それぞれが独立した職務を遂行しているため、精神障害のある従業員にとっては苦手な人間関係を考慮しなくてもよいという環境も、定着や実習の受け入れに関係している。

ポットの土の廃棄作業場

（2）他の従業員と同様の接し方

　当社におけるもう一つの職場環境の取り組みとして、作業においては他の従業員との区別が無く、同じような言葉で同じような接し方をしているという点がある。
草むしり作業は一面に敷き詰められたポッドの上で、ひたすら雑草をむしり、雑草をバケツに集める。障害者職業生活相談員も同じ場所で作業をしており、むしり残しがあれば指摘をする。実習生であってもその扱いは変わらない。
障害があるから特別扱いをするのではなく、障害があっても他の従業員と同じように作業ができるのであれば、同じように接するのが当然であるというのが松葉谷代表の考えである。
他の従業員の多くは年齢が高いため、比較的若い障害のある従業員に対しては親のように接することもあり、それもよい影響を与えている。
原則的には同じ接し方をしているが、これまでに他の従業員ではないような喧嘩の仲裁をしたことがあったり、何か困ったことがあれば相談に乗る等、若干の作業環境を調整するための取り組みも行っている。
雇用契約をしている障害のある従業員について、賃金は他の従業員と同じように、最低賃金以上を支払うこととしており、能力が一定以上であれば時間給で750円となっている。また精神障害者社会復帰施設から受けている体験実習者に対しては、実習費として300円を支払っている。
ただし、これについては一定の能力がある実習者に限られ、作業能力が水準を満たないと判断された場合については、実習費は支給していない。
なお、当社に実習を依頼する施設の担当者は、他事業所に実習や就職を依頼する際に、当社での職業評価があるため先方に状況を伝えやすい、というメリットがあると話している。

草取り作業風景

3.今後の展望

　現在のところ精神障害者の雇用に集中しているが、他の障害のある人にも拡大していきたい、という展望も持っている。今後は、農場の作業環境を整備して、車いすを利用している人でも作業できるようにしていきたい、と松葉谷代表は考えている。農場に様々な人が見学に来るため、農場内を車いす等でも移動がしやすいように整備することに併せ、そこで働く従業員にも働きやすい作業環境を整備していきたいとのことであった。また、そのために使うことのできる助成金についてもうまく活用していきたいと話す。
また、当社は、ハローワークから受け入れている実習を今後も継続して受け入れていく意向である。当社で実習した人の状態が改善し、他の事業所での一般雇用に移行したという事例もあり、雇用の場として、また実習の場として機能している事業所であるということができる。今後もこのような機能を拡充していくことが期待される。