皆が働きやすい職場を目指して~在宅勤務を取り入れたフレキシブルな勤務形態への取り組み~
- 事業所名
- 医療法人社団淀さんせん会 金井病院
- 所在地
- 京都府京都市
- 事業内容
- 病院(診療・健診センター)
- 従業員数
- 164名
- うち障害者数
- 9名
障害 人数 従事業務 視覚障害 6 リハビリ、マッサージ業務 聴覚障害 0 肢体不自由 1 医療・福祉相談業務 内部障害 0 知的障害 2 事務、介護業務 精神障害 0 - 目次

1.事業所の概要・障害者雇用の経緯
(1)概要
当院は京都市南部に位置し、一般・障害者・療養病棟の計191床で運営、「私たちは地域住民の皆様に人間愛に根ざした良質な医療を提供します。」を基本理念とし、淀地域における中核病院として今年で創立30周年を迎えた。
当院は以前からリハビリテーション科において視覚障害者であるマッサージ師を雇用していたが、「地域病院」という性質から、地域の人が「誰でも受診できる病院」であるとともに、「誰もが勤務できる病院」づくりを目指して取り組んできた。
(2)障害者雇用の経緯
以前からマッサージ師の資格を持つ視覚障害者を雇用していたが、障害者雇用については決して進んでおらず、従前からの課題であった。
障害者雇用を妨げていた原因として、まず一点目は病院が医師をはじめとする有資格者の専門集団であること。二点目は給食・清掃・事務などの無資格でできる業務が委託にシフト化されているということであり、障害者にどこの部署でどのような業務を任せられることができるのかという点で、職員課の北岡久和係長は不安や問題を感じていた。
このような状況の中、京都市の人権研修会の一部に白河総合養護学校の見学会があり、喫茶店でホールスタッフをしている生徒や屋上で園芸をしている生徒、そしてパソコンを使用して名刺を作成している生徒たちの授業風景を見て、北岡係長が想像していた以上に真面目に勉強に取り組む姿と、先生の大変熱心な説明を受け、知的障害者に対するイメージが180度変わった。
そして数日後、学校の先生から職場体験実習依頼があり、まず先生と打ち合わせを行い、実際に病院で行われている業務を見学、分析してもらったうえで当院に適していると思われる2人の生徒の実習を行うこととなった。
彼らの姿を見ている北岡係長は問題ないであろうと快く了解し、各部署に受入の依頼をしたところ、知的障害ということだけで、「してもらう事がない」「難しい業務なので無理です」といったコメントが聞かれたが、「では一度みてみましょう」といった部署が何カ所か出てきて、早速実習を開始することとした。
2.取り組みの内容
(1)従事業務の設定、職場配置
1)Aさん
一人目のAさん(男性)は、事務職を希望していたため、医事課・健診センター・放射線科クラーク業務をしてもらい、その中でどの部署が一番適しているのか会議を行った。
医事課はカルテをはじめとして個人情報が蓄積している部署であり、間違いが絶対に許されないので不可であろうということになり、放射線科もレントゲンフィルムを診察室へ運び用件を伝えないといかず、難しいであろうと判断されたが、健診センターであれば利用者と直接接する事はなく、また万が一、間違いをしてもバックアップが可能な業務があるということで職場配置を決定した。
健診センターでのAさんの業務内容は、健診前の各種書類のゴム印押し、案内パンフレットの折りたたみ作業、個人受診録のセット、検査後の伝票整理、ファイリング、廃棄する書類のシュレッダー作業等、利用者と接することのない裏方の事務作業を任せることとした。内気で人と会話をするのが苦手である本人の希望があったからである。



2)Bさん
二人目のBさん(男性)は、ホームヘルパー2級の資格を持っており、介護の仕事がしたいとの希望があった。病棟の広いフロアで勤務するよりも通所リハビリテーション科ならワンフロアの中で勤務するので、他のスタッフが利用者と彼の行動を把握できるため安全なのではと判断し、配置を決定した。
通所リハビリテーション科では一日の流れが決まっており、何時にレクリエーションをして何時に昼食を食べる、と固定化していたが、認知症の利用者などは日々同じ態度や作業をしても、その日の気分や調子によって良かったり悪かったりと臨機応変に対応する必要があった。



(2)取り組みの内容(職場体験実習)
職場体験実習のスタイルについては、始めに一日体験を行い、続いて1週間体験、2週間体験、1ヶ月体験と徐々に増やしていき、合計半年間以上の実習を行う。
期間中は毎日日誌を作成し、その日の目標が達成できたかどうかを自己採点し、その結果を担当者が確認し、明日の目標を決定する、といった方針で行った。そして、その期間の実習終了時には、本人・保護者・先生・当院の4者で反省会を行った。
日々の内容としては「あいさつをしっかりする」「業務が終わったら報告し、次の業務の指示を受ける」等といった基本的な行動ですが、昨日はできていたのに今日はできなかった、前回の実習では元気良かったのに今回の方がテンションも業務の精度も下がっていたなどと、順調に日々成長していった訳でなく、前進と後退を繰り返しながら根気よく取り組んだ。
その中で、日々困っている事が言える人がいない、誰に言えば良いのかわからない、といったこともあり、専任の担当者を決めて、仕事だけでなくプライベートの内容まで相談に乗れる態勢をつくった。また、知的障害者が院内で実習していることを他のスタッフにも理解してもらうため、昼食時には最初は弁当持参で部屋の中で食べていたものを、他のスタッフと同じように職員食堂を利用してもらうことにより認知を図った。
実際の業務においては、やはり始めの頃は緊張や疲れもあったのか、午後からあくびをしたり集中力が欠けてきたことがあったが、無理に強制せずにゆっくりと慣れてもらう方針で、注意も特に行わなかったところ、本人も他のスタッフの姿を見て自覚してきたのか、だんだんなくなってきた。
また、担当者を決め、毎日日誌を書くことにより本人のモチベーションを常に高めていき、またそれが「安心感」と「やる気」に繋がり、実習を重ねるうちに自分なりに効率よく処理するにはどのようにすれば良いのか、と考えるようになり、Aさんは日々、スピードや正確さが増していった。
(3)配置転換
一方、Bさんは日を重ねる毎に落ち込んでいき、面談を行っても「やります。」という返事とは反対に、行動は覇気がなく、涙もこぼれるようになった。通所リハビリテーションという部署は、一日の流れは決まっていても、高齢者や介護保険適用の人が利用するため、その対応方法については瞬時の判断や、利用者のその日の気分によっても変わってくるため、臨機応変に対応することが要求される。
どうやらその点が難しかったようで、3月の卒業を間近にここで断念か…とも思われたが、思い切ってそれでは一度病棟でチャレンジしてみてはどうかと配置換えを行った。病棟の看護助手が毎回定期にしている業務をピックアップしてもらい、その業務を担当してもらった。
内容はオムツのセット・シーツ交換・配膳・配茶・利用者の送迎等で、業務の手順や方法については、他の看護助手とペアになって一緒に行い確実にこなすことをポイントにし、①方法については一度見本を見せて説明を行い実際に行ってもらう、②自分で業務内容と業務量から時間を組み立てて行う、という流れで行った。
利用者と接する事が多い病棟の中で、定期的に行う業務を主としてこなしてもらった結果、「できた」という自信の積み重ねが彼を大きく成長させ、次第に利用者とも会話をするようになり、利用者の名前を覚え、逆に利用者から可愛がられるようにもなった。今では縦横無尽に病棟を動き回り、男性ということで力もあるので病棟スタッフや利用者からも声がかかり信頼されるようになった。
3.取り組みの効果・今後の展望
知的障害者を雇用して行ってもらう業務が果たしてあるのだろうか、他の職員とのコミュニケーションをうまくとっていけるのだろうか、という不安はあった。しかし、一つの方法としてまず、今行っている業務の見直しを行った。例えばパートタイマーが行っている業務に固定的なものがないか、部署にこだわらず職場全体としてみる事も大切であり、意外とたくさんの量の業務が見つかった。
また、採用担当者及び所属の責任者の熱意も必要不可欠である。幸い当院では、学校の先生がかなりの時間で関わり、学生生活の中での性格や特徴など分析し取り組んできたのが成功したと考えられる。
現在では遅刻や欠勤もなく重要な職員の一人として、いなくてはならない存在となっており、他のスタッフからも「素直で真面目」「仕事もさぼる事なくコツコツしてくれて助かる。」などといった言葉をよく耳にする。
勤務日数も当初の週三日勤務を四日に増やしており、将来的には常勤としての勤務を考えている。
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