事業所名

牛臥（うしぶせ）ファーム

所在地

鳥取県八頭郡智頭町

事業内容

畜産農業（和牛肉の生産販売）

従業員数

3名

うち障害者数

1名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	1	牛舎内の餌箱・通路・運動場の清掃
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯
2. 取組みの内容
3. 今後の課題と抱負

事業所外観

1.事業所の概要・障害者雇用の経緯

（1）概要

　鳥取県東部南側の岡山県境に接する位置にある智頭町は、従来から和牛の生産地として知られている。しかし、地元では他産地の牛肉消費も多いのが現状である。
そうした中、代表者である岸本真一郎さんは、自らが和牛の生産販売を行うことにより、地元での消費拡大、地元産牛肉の品質向上を図ることを目的に、昭和48年から畜産農業として事業を始め、平成8年から銘柄組織体制「牛臥ファーム」とした。
当事業所では、市場から肥育牛を購入せず、自らが生産した牛を飼養し肥育牛として出荷する一貫経営を行っている。また牛の飼料の穀物使用量を少なくするために、町内で生産した豆腐のオカラ、酒カスを使用している。

牛舎内の様子

運動場の様子

（2）障害者雇用の経緯

　岸本さんが役員を務める町内の自立支援の会で、障害者と巡り合ったことがきっかけである。和牛を肥育していくための畜産管理には人手が必要であったこと、岸本さんが障害者雇用に理解があったことから、知的障害のあるAさんの採用を検討した。そして、ジョブコーチの支援を活用し、グループホームのスタッフとの連携により、円滑な支援を行うようにした。

2.取組みの内容

（1）Aさんの採用

　Aさんは、重度知的障害のある50代の男性で、平成14年9月に雇用。本人の実家が牧場であったことから、Aさん自身も作業はある程度認識しており、牛舎での仕事についての不安は感じられなかったようである。
 

（2）勤務形態

　Aさんの勤務は、1日5時間、週30時間。仕事のピークは朝（午前7時30分から3時間）と夕方（午後3時から2時間）である。
一人での仕事が多いので、来客や見学に来た人たちと話したり、牛には「今日のご飯はおいしいかい」と話かけている。
 

（3）仕事の内容

　Aさんの仕事内容は、主に牛舎での補助作業であり、ほとんど手作業によるものである。
①牛舎内の餌箱、通路、運動場の清掃
②餌の配合作業
③餌やり作業
定量的な仕事はスムーズにこなすことができるが、応用が利かせることが困難である。また、牛の病気やケガへの気づきが遅れるなど、牛の観察面での理解不足が見られることがある。
牛舎内の清掃・配合・餌やり作業は、牛の成育状態・毎日の環境変化等に対応しなければならないため、その都度、岸本さんと家族がマンツーマンの声かけ指導をしている。
 

餌やり作業風景

（4）安全衛生管理

　Aさんは歩行がやや不自由なため、牛の反応によるケガが心配である。そのため牛の近くでの単独作業はさせないなど、安全面には留意している。
また、職場での定期健康診断の代わりに町の健康診断を受診させるなどの健康管理は行っている。
現在の仕事の中で、身体的負担のかかる内容は少ないが、ゆとりのもてる仕事を確保するなど、健康への配慮に努めている。
なお、Aさんは、指示に対して黙々と作業をするが、「無理」「できない」という本人からの言葉はない。無理を押して仕事をしていないか、また負担をかけてはいないかと心配をするときがある。意思表示の難しさを感じることもあるが、積極的に会話して健康面や精神面での気づきを心がけている。
 

（5）障害者支援機関との連携

　Aさんはグループホームを利用し自立を目指していることから、仕事面・生活面での情報交換は不可欠である。そのため、職場とグループホーム間とのサポート体制システムはおのずと充実している。
 

（6）地域とのふれあい

　通勤時は地域の人が「おはよう」と声をかけながら話しかけてくれたり、積雪時は滑って転ばないよう雪道をあけてくれたり怪我しないように見守ってくれている。Aさんは休日はグループホームに行き友達と交流をしている。
牛の排泄物を肥料として、希望者には無料で提供している。また肥料の中でカブトムシを飼育し、障害者施設に提供するなど、地域とのふれあいを大切にしている。
 

3.今後の課題と抱負

　岸本さんは、Aさんの雇用で、本人の「働くことへの喜び」を感じとることができたという。
「小さな町であるため、障害者の受け入れ事業場は少ないのが現状である。もっと民間で働いてもらいたいのだが、“障害者にとって難しい仕事だから無理だろう”といった、事業者の偏見・誤解を解消することが当面の課題である。地域交流会等で障害者雇用についての説明を積極的に行い、工夫次第で有効な活用ができるということを、他の事業者への理解に努め、障害者自身の活躍の場を提供していきたい。」と述べ、さらに「健常者の基準ではなく、障害者の気持ちに立って接することが大切。効率のよい仕事を求めることは大切なことだが、『働く喜びと生きがいを感じ取る』という職場づくりを目指すことも忘れてはならない。」と語った。
今後、地域が積極的な障害者雇用を行い、「働く喜び」を感じ取る事業所が増え、地域の活性化につながることが期待される。