事業所名

グリーン・プラネット尾﨑

所在地

岡山県岡山市

事業内容

ポット苗の製造、配達

従業員数

18名

うち障害者数

9名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	0
精神障害	9	ポット苗の製造、配達

目次

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯
2. 障害者の勤務状況
3. 障害者雇用の理念
4. 取り組みの内容
5. 障害のあるスタッフのコメント

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯

（1）概要

　ポット苗の製造、配達を業務としている当社の生産品目は、パンジー、ビオラ、アメリカンブルー、ペチュニア等である。

（2）障害者雇用の経緯

　尾﨑勝社長が、個人的に知っていた西大寺さつき共同作業所の指導員に頼まれ、忙しい時などに作業所の利用者を受け入れていたが、その後、保健所の保健師に精神障害者社会適応訓練事業の制度を勧められたことをきっかけに、障害者雇用を実施、現在職員の半数である9名の精神障害者を雇用している。

2. 障害者の勤務状況

（1）トレイの消毒

　種まき用のトレイを1枚ずつ、薬品に10秒から15秒つけ消毒をする。2人で担当する。

トレイの消毒

（2）トレイの運搬

　パートが定植をした後、軽トラックでトレイを各ビニールハウスへ運ぶ。そこからは手作業で2枚ずつ約4㎏のトレイを広いハウスの棚に一枚づつ並べていく。夏場はかなり大変な労働となる。
当然並べたポットには毎日の水やりが必要で、朝一番でやらなければいけない。
また、ポットに一粒ずつ肥料を入れる仕事もある。

（3）ポットさし

　トレイにポットを一つずつ入れていく工程である。隣の人と話しながら和やかに作業をしている。「本当なら1時間に何個といったように、ノルマをかけるのが普通だろうけど、自分のペースでやってもらっている」とのとおり、みな自分のスピードをきちんと守っている。

ポットさし

（4）ポッティング（土入れ）

　基本的なことはできるだけ機械化しており、土の配分は社長が行うが、作業は機械に入れる人、取り出す人2名で行う。30分で4，000ポット、一日14，000～15，000ポットの土を入れる。

機械を使用したポッティング

（5）種まき後の水通し

　ポットに一粒ずつ種をまく作業についても機械が行う。その後のベルトコンベア上で水を通す作業は、2人が担当する。

機械を使用した種まき作業

（6）配達

　週に2回、県北まで一日280㎞を、車で10時から18時ぐらいまでかけて配達をしている。
車は3トントラックとキャラバンを使い分けている。新しいキャラバンは、第一種作業施設設置等助成金を活用し購入した。運転手と助手の2人で配達するが、2人とも障害のあるスタッフである。特に助手は人気があり希望者が殺到する。

配達の準備

（7）その他

　ポットの草取り、ハウスの草取り、ハウスのビニール交換等行わなければならないことはいくらでもあり、社長を先頭にスタッフ全員で行っている。

3. 障害者雇用の理念

（1）「人間関係が苦手な人が多いので、物事感情を素直に話し合える環境にする」

　社長自身一緒に仕事をしながら、本人の気持ちになってなるべく話を聞くようにしている。

（2）「障害者スタッフが所属している機関との連携を密にする」

　病院のケースワーカーや保健所の保健師と常日頃から連絡をとり、健康・生活面の支援を一緒に行っている。

（3）「最低賃金を保証する」

　雇用している障害のあるスタッフに対しては、最低賃金を保証している。
社長の思いは仕事以外にも及んでいる。最近、女性の障害のあるスタッフが結婚したが、他のスタッフもぜひ続いて欲しい、できればそのための機会作りもしたいと思っている。
また、将来一人暮らしができるようなアパートや、就労訓練ができるような作業所を作りたいと構想は広がる。
その上、社長の理念は自社だけにとどまらず、岡山県精神保健職親会（精神障害者社会適応訓練事業の受け入れ事業所の会）の副理事長を務め、他事業所に精神障害者を受け入れるよう活動されている。その際、彼らがよく働くこと、健常者を1名雇えばすむ仕事でも障害者を2～3名雇ってその仕事をできる環境にすればよいこと、またできればきついノルマをかけないことなどについてアドバイスしている。
また、平成19年9月6日には職親の全国大会が岡山で開催され、自らフォーラムの発表者になり「職親の役割」について意見を述べた。

4. 取り組みの内容

（1）個々人の調子に合わせた自由な勤務形態

　勤務時間を設定せず、30分単位で自由に働けるような体制をとっている。
「今日は疲れたから退社」「眠れなかったので昼から出勤」といったこともOKである。
精神障害のある人は、月に1～2回の受診が必要となる。また、彼らの特性としてどうしても無理をして病状悪化につながってしまうこともある。柔軟な勤務形態を保障していることが、多数の精神障害者の雇用を続けられる大きな要因になっている。

（2）障害のあるスタッフのリーダー2名による作業運営

　朝、スタッフが出勤すると、障害のあるスタッフがそれぞれの体調、勤務時間なども考えながら人員配置、作業内容の指示等を行う。これには社長の、なるべく責任のある仕事もしてもらいたい思いがある。実際トラブルもなく安心して任せていると社長の信頼も厚い。

（3）精神障害者社会適応訓練における段階的な勤務時間の設定

　精神障害者社会適応訓練による受け入れにおいては、最初は週1時間勤務から始め、次に午前中で週3回、現在は毎日14時まで勤務時間が延びている。これも自己申告制で本人ができると思えば長く設定している。もちろん調子を崩した場合は、時間を短くしたり、休みを入れている。

（4）福利厚生

　年に2回旅行を計画している。昨年は忘年会としてシンガポールへ2泊3日の旅行をし、今年の6月には日帰り旅行をした。結婚した女性スタッフにみな続くよう。縁結びの神である出雲大社を訪ねた。

社員旅行

5. 障害のあるスタッフのコメント

　スタッフの吉本さんは、職親の全国大会で社長と共に登壇し、「私の歩んできた道のり」と題して退院後から就職に至るいきさつを堂々と発表した。
「自分が就職できたのは、自分の性格や性分を作業所にいるときから知っていてくれた信頼できる社長がいてくれたおかげ、また同期入社した人たちや自分をリードしてくれる仲間との声の掛け合いがあるから続いている。
しかし仕事はきびしい。夏はハウスの中の温度計が振り切れるぐらいで（50℃）、息をするのも苦しくなる。冬は手がかじかんで動かなくなる。重いポットの詰まったトレイを運ぶなどかなりつらい仕事が多い。
しかし魅力も多い。まず自由が利くこと。またアットホームでみんな仲がよい。それに障害のことを気にしないで働けるし、しんどいときは言って休める。」
現在、彼女の目標は月100時間働くことしており、障害のあるスタッフのリーダーの一人でもある吉本さんは、他のスタッフが大勢帰った時には自主的に残り仕事をすることも多い。
発表の最後で話した「もうちょっと頑張ってみようかなの気持ちが大事だと思います」という言葉は、精神障害のある人は頑張りすぎて病気になったのだから頑張れは禁句とよく言われるが、他人に言われるのでなく自分で、しかも「ちょっとだけ頑張る」は、心に不安のある人にとっていかにもふさわしい言葉である。

執筆者　：　地域生活支援センター「パレット」　所長　　片山　健