事業所名

広島精研工業株式会社

所在地

広島県東広島市

事業内容

自動車部品のプレス・溶接・表面処理加工・射出成形

従業員数

140名

うち障害者数

7名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	1	管理業務
内部障害	0
知的障害	6	金属プレス加工、ピッキング、吊りかけ、出荷
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯
2. 取り組みの内容
3. 今後の課題

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯

（1）概要

　昭和26年8月に広島市に設立、平成2年5月に現在の東広島市に移転した当社は、自動車部品の加工　溶接　塗装と、加工から仕上げまでの一貫生産を事業とし、平成15年には、ISO14001・9001を取得した。
主要製品は、フェールタンクストラップ、ボンネットステイ、バッテリークランプなど10数種類があり、特にボンネットステイとバッテリークランプは、マツダの全車種に供給している。
今年度より新社長の下、「和・誠実」を社是、「限りない改善に挑戦」を経営理念として、全社員が共に成長していく経営をさらに進めている。

（2）障害者雇用の経緯

　本社工場を現在の東広島市中核工業団地に移転し本格的に操業した平成2年に、同時期に移転してきた企業に障害者を雇用している事業所があり、また当社と特に関係の深かった企業にも複数名の障害者を雇用していた。
彼らの働く姿に感銘を受けた当時の社長が、企業の社会的責任を果たそうと、早速地元の福祉施設（知的障害者通勤寮）と連携し、平成6年から本格的に障害者雇用を進めていくこととなった。
さらに、関係の深かった企業が撤退する際、その企業で働いていた障害のある社員についても受け入れることとした。
このような取り組みから、平成17年には障害者雇用優良事業所として、県知事表彰を受賞した。

2. 取り組みの内容

（1）教育

　自動車のモデルチェンジが定期的に繰り返されるため、そのたび新しい部品、新しい作業工程になる職場環境において、ジョブコーチ支援制度を利用しながら対応を図る一方、社内の「教え名人」的な社員を障害者の働く部署に配置している。
なお、作業工程の変更や、中断後の作業指示は作業指示表示板で行っていたが、いま一つ徹底せず作業工程に支障が生ずる結果となった。
このため、単純な絵表示にすることで、作業切り替え時の使用製品を容易に判別することが可能となった。
また、なかなか切り出せなかった悩み事や相談を容易にするために、「手渡し相談カード」を活用、いつでも上司とコミュニケーションできるシステムを作ることで、事故やトラブルの予防を図るとともに、障害のある社員が安心して仕事に取り組めるよう配慮している。

分かりやすい絵表示を活用

相談カード

（2）得意分野の見極めと配置

　仕事に障害者をマッチングさせるのではなく、先ず彼らのできることを見極めるとともに、彼らの仕事の環境を整える配置を行い、「教え名人」の配置により仕事にマッチングさせていき、徐々に本来望んでいる内容の仕事に近づけている。

（3）機械・治具等の配置

　障害者雇用の有無に関わらず、特に製造業においては、納期の遵守、高い品質、不良品を出さないことは至上命題である。
知的障害者が従事するピッキング業務・出荷業務においては、種類が非常に多いことに加え似かよった形状の製品も多く、間違えてしまえば製品の品質に問題がなくとも不良品と評価される。
対策として、まずは当初は製品の形態を識別するために、製品の写真と名称を記入したパネルを掲示したが、間違いが頻発し、検品に多くの時間を費やしていた。また、現物の見本を全種類配置したが、依然、間違いは発生した。
そこで、現物見本を取り外せる出荷指示書を作成し、実際に製品同士をつき合わせて照合できるようにしたところ、間違いが激減した。他の社員に応用すると、他部門でも間違いが激減し大きなコストダウンにつながった。
さらに作業の中断や、急な欠勤に対応して再開できるように、絵表示番を作成し製品のワゴンに取り付けたところ、間違いと作業の停滞がなくなった。

似かよった形態の製品が多種ある

現物を取り外せる出荷指示書

（4）責任感の涵養

　障害のある社員に対して配慮や工夫はするが、特別扱いはしないで、一人の社員として全員が接している。
思いやりとコミュニケーションを図ることにより、彼らを含めて当社で働くことが楽しい、「この会社で働きたい」という気持ちが育てられ、自分の仕事に誇りを持つことが、責任感が養われている。
また、定年を迎えた障害のある社員を再雇用し、続いて責任を持って仕事に付いてもらっている。

（5）余暇と生活の安定

　コミュニケーションを図る観点から、新入社員歓迎会や納涼大会等の親睦行事に参加してもらっている。
また、障害のある社員に対しては、なるべく生活のリズムに変調をきたさないように休日を固定し、残業を基本的に求めない等配慮されている。
障害者雇用に取り組み始めた頃から、地元の通勤寮や障害者就業・生活支援センターと緊密に連携をとり、生活の安定を図っている。

3. 今後の課題

　障害者の実習を受け入れたり、社員としての教育をはじめ多くの努力と配慮が障害者雇用に向けられ、定着率も高く社員も生き生きとしている。
一方で、障害者に対する配慮の努力がなされている反面、職種を限定している傾向がある。
社内で働く場を広げること（職種を広げる、障害種別を広げる）等によって、一層の障害者雇用の進展を図ることが、社の内外から求められている。
使命感、あるいはコンプライアンスの面から、障害者雇用に取り組んできた当社の「障害者のために」は、全社員のためになり、結果的に品質の向上に寄与している事が示されている。障害者のための多くの配慮・工夫が継続されるよう、当社の発展が期待される。

執筆者　：　みどりの町障害者就業・生活支援センター　支援ワーカー　　森永　高治