事業所名

株式会社マルナカ　パワーシティ鳴門店

所在地

徳島県鳴門市

事業内容

チェーンストア総合小売業

従業員数

205名

うち障害者数

2名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	2	商品陳列等（店舗内）、青果袋詰（バックヤード）
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の現況と経緯
3. 取り組みの内容
4. さいごに

事業所外観

1. 事業所の概要

（1）株式会社マルナカ

　大正15年に商店として創業し、昭和35年にスーパーマーケットとしてスタートした当社は、40年を越える歴史の中、困難とされる時代にかえって業績を伸ばしてきた。それはひとえに「よりよいものをより安く」という商いの王道を地道に実践してきたことが、地域のお客に指示されたことによるものである。
マルナカ流通グループは総合的な生活提案型企業を目指し、時代が求めるさまざまな事業を展開している。核となるスーパーマーケットはもちろんのこと、生活に関連する部分の、あらゆる分野へと挑戦を続けている。
現在、グループ全体では170を越える店舗と8，200名を越える従業員を擁し、東四国ではトップのスーパーチェーンである。

（2）パワーシティ鳴門店

　当店は、生鮮食品やドライ食品等の食品全般を扱う「ザ・マイケル」と、住居関連品や衣料品を含む生活用品全般を扱う「ザ・ビッグ」を主軸に構成されている。それに、各種専門店を加えた総称が「パワーシティ」である。
四国の玄関口である鳴門市に、平成8年4月、マルナカ流通グループのショッピングストアーとしてオープンした。
部門構成については、日用品・雑貨・野菜・お菓子・ドライ・果実・精肉・鮮魚・総菜・塩干・パン和菓子・煙草・卵・デイリー・紳士・婦人トップ・婦人ボトム・婦人外装・靴下肌着・ナイティ・子供・服飾・寝具・米・花・ランファン・文具・靴　薬品・化粧品・書籍・酒の計33部門と専門店11店から成っている。

2. 障害者雇用の現況と経緯

（1）障害者雇用の状況

当店では、知的障害者2名を雇用している。
Aさん（男性）：ドライ食品部門にて、商品の陳列、前だしなどに従事。
勤務時間　8時～13時
Bさん（女性）：野菜部門にて、野菜の商品加工、袋詰めなどに従事。
勤務時間　8時30分～14時30分（お昼休憩1時間）

（2）障害者雇用の経緯

　本社から、障害者雇用を積極的に取り組むようにとの通達を受けたが、そのためのプロセスを知らなかった。ちょうどその頃、公共職業安定所や障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターから障害者雇用を勧められ、2人の雇用を考えた。
なお、手探りの中での障害者雇用であったため、2人を同時にではなく、時期を少しずらして雇用した。
先ず、Bさんをバックヤードでの野菜の袋詰め作業等を行う青果担当として、平成19年4月中旬にアルバイト雇用した。
その後、障害者就業・生活支援センターからAさんの紹介を受けた。
当初は2人ともバックヤードでの仕事を考えていた。しかし、Aさんは年齢が若いこともあり、店舗の雰囲気を感じ取り「お客様第一主義」という当社の基本理念を意識付けてもらうため、店舗に配置した。そのため、Aさんの雇用に際しては、障害者職業センターのジョブコーチ支援を利用することにした。

3. 取り組みの内容

（1）実習制度の活用

　Aさんの雇用に先立って、支援センターが実施する実習制度を活用した。
実際の仕事ぶりを見てから雇用したため、それまでの不安は軽減された。当初最も不安視したのはコミュニケーンがとり難いのではないか、ということであったが、実際に彼と接し見当違いであったと実感した。
また、採用するにあたり、今後の課題が明確になった。品だしにおける速さと確実さである。商品の原則、先入れ先出しの陳列方法の理解が不十分であった。また、作業中の店舗内での接客の対応の仕方であった。

（2）作業従事の工夫

　障害者雇用に際して、彼らに特別な職務を用意したわけではない。そのため、これまでの業務のなかで、いかに他の従業員と協力し分担して作業するかが問題になる。
品だしで最も忙しいのが開店前の数時間である。売り出し商品やお買い得商品は、ダンボールごと店内に運び入れ陳列する。そのダンボールの片付けはAさんの仕事として固定化した。また、定番商品の陳列もAさんに任せることとした。その結果、固定された仕事を任せられたAさんは責任感が芽生え、仕事へのモチベーションが高まった。
お客から商品の場所について尋ねられた際、わからない場合は他の従業員が対応することにしたが、その時に、Aさんも尋ねられた場所に一緒に行き、Aさん自身が覚えるようにしてもらっている。
決して、頼るだけの立場ではなく同等の立場になれるようにフォローする。お客にとってはベテランも新人も関係ないからである。

定番商品の入ったオリコンの品だしをするAさん

（3）支援機関やジョブコーチによる支援

　Aさんは、大人しく不特定多数のお客様の前では消極的になりやすい傾向にあり、店舗内での挨拶の適切な声の大きさ、タイミングについて助言を受けた。
またAさんは同時に、生活の場でも、春に全寮制の養護学校高等部を卒業したばかりで、とにかく生活のいろんなことに経験が不足していた。その中でも、スーパーマーケットでほとんど買い物をしたことがなかったため、接客は最も難しい課題となった。
支援センタースタッフとスーパーに買い物に出かけ、店員さんに買いたい商品のある場所を尋ねる逆体験を試みた。一般的にスーパーマーケットでは店舗に出ている店員は少なく、鮮魚や雑貨の陳列をしている店員にドライ商品の場所を尋ねると、みな親切に商品のある場所まで案内してくれる。買い物を終えて店員さんの対応について「大きな声で教えてくれました。」とAさん。自分のできていないところが実感できた。

（4）Aさんの今後の課題

　当店では、取り扱う商品が多岐に渡る。その分、お客から、商品のある場所について尋ねられることも内容はさまざまである。
現在、担当しているドライ商品だけに限っても、ポン酢のところで「おろしの入ったのないですか？」、シチューのところで「コーン味のシチューないですか？」、「乾燥したゆずないですか？」等。
大まかな配置場所は覚えてはいるが、細かな指定に対しての対応が難しい。そして、ドライ商品以外の配置を覚えるのは今後の課題である。
また、Aさんの動きの速さも問題となっている。Aさんが勤務している午前中は、年配のお客が多い。台車を押すときや、商品の案内をするときなど、周りの状況を見ながら、お客の速度にあわせることも今後の課題となっている。

4. さいごに

　井上店長は、「手探りの中での障害者雇用であり、配置については模索していた中での店内作業とした。勤務状況は至ってまじめであり、お客様とのトラブルもない。また、周りの従業員もAさんの仕事のフォローやAさんに声かけすることにより自らの仕事に対しての意識高揚に繋がっている。結果として、店舗内での作業配置は間違っていなかったと思える。」と話す。
徳島県内において、知的障害者がスーパーマーケット等でのバックヤードで作業する事例は数多くあるが、接客を必要とする店舗内で作業させているのは、当社が初めてである。
当社の取り組みが周知され、今後、県内の接客分野での障害者雇用が促進されることが期待される。

執筆者　：　愛育会地域総合支援センターどちらいか　生活・就業支援員　　奥野　紀子