コンクリート製品製造業における知的障害者雇用～特例子会社を設置し雇用継続を図る～
1. 事業所の概要
（1）概要
明治8年に雑貨業として創業した当社は、現在はコンクリート製品、生コン、生SL材、セメント・骨材、石油、特殊法面工事、損害保険、車両整備、運輸を取り扱っている。
経営理念：環境美創造を志し 信頼される企業市民として 地域社会に貢献する
品質方針：「私たちは、常にプロセス改善に努め、顧客の求める安全で、高品質・ローコストな製品をタイムリーに提供します。」
現在も独自の技術展開による商品提供を軸に、自他共に生きるための社会貢献すなわち、人々が安心して暮らせる美しい未来環境創りを目指した事業を展開している。
（2）特例子会社ケイシー
平成2年にコンクリート事業部松山工場が、株式会社ケイシーとして設立し、平成10年に特例子会社して認定を受けた。
現在、特例子会社ケイシーにおいて、従業員数16名。現場10名のうち知的障害者を5名雇用しており、グループ全体（総人数320名）の障害者雇用率は5．56％である。
平成16年には、障害者雇用優良事業所として愛媛県知事表彰を受賞した。
（3）組織図
2. 障害者雇用の経緯
平成2年、前任の事業部長と知的障害者更正施設「久谷育成園」との繋がりの中で「障害者を雇って製品は作れないだろうか？」の一言により、平成5年から障害者の実習・研修を始めた。
また、平成7年にはグループホームとの連携で、卒園したら株式会社ケイシーで受け入れるシステムも始めた。同年4月に雇用した社員の中には現在も継続して雇用している社員が4名いる。
当時は人数が多かったため、配置する場所が決まっていた。しかし現在は人数も少なく、作業範囲が拡がってきているにもかかわらず、健常者とほぼ同じ作業ができるようになり、1人欠けたら仕事にならないというほど製造のメインになっている。リフトに乗れないといったデメリットもあるが、それ以上に真面目で根気よく休まず、仕事を続けている。
3. 取り組みの内容
（1）作業工程と障害者の配置
1）コンクリート製品製造ライン
（脱型作業：所定の初期養正を経て、必要なコンクリート強度が得られた後に行う作業）
2）型枠掃除、型組作業
型枠は内面やコーナー、特に組み合わせ面は製品の外観、形状、寸法に影響を及ぼすので、毎回入念な清掃をした上で組み立てなければならない、注意が必要な作業である。
障害者は主にこれらの作業に、二人ずつ従事している。一人欠けてしまうと作業が成り立たないほど、一人一人が大変重要な役割を担っている。
更に、JTSの検査による厳しいチェックの下、丁寧な作業が行われている。
（2）人的支援・社内体制
株式会社ケイシーにて、職業生活相談員、業務遂行援助者の配置だけでなく、障害者職業生活相談員資格認定講習会への積極的な参加など、企業としてのバックアップをしっかりと行っている。もちろん教育訓練も大切なことだが、信頼関係が出来てこそ仕事がうまくいく。
また、グループホームから職場まで、毎日のバスの送迎を社員が行っている。更に、お花見や懇親会などの行事にも全員が参加し、障害者だからという意識ではなく、社内全体が彼らを同じ仲間として信頼関係を重視し、彼らを理解し、支え合う体制をとっている。
（3）健康管理・安全衛生
毎日朝礼で、一日の作業の注意事項や不安全行動の注意など、声をかけあいながら安全管理を行っている。
健康管理の面でも、年一回の健康診断を実施し、体調の維持管理に努めている。また、バス送迎中の言葉のやりとりや朝礼時の様子で、毎日その日の体調を見るようにしている。
4. 今後の課題と展望
（1）課題と展望
コンクリート製品製造業の現場では生産量も雇用も厳しい状況にあるため、障害者の雇用も厳しいが、今後も雇用率を維持していく方針である。また、今まで築いてきたハローワーク等の公的機関、障害者支援施設との三位一体の支援を更に進展させていく意向である。
（2）さいごに
当社は、障害者の雇用が厳しい状況の中、彼らの定着率の良さからも、彼らにとって働きやすい環境がしっかり整えている。
「障害者が健常者と変わらないくらい自然になじんできた。」「あせらず急がず。」といった現場からの言葉は、障害者雇用が定着しているだけでなく、周囲の理解と支援が浸透していることを示している。
執筆者 ： 愛媛大学教育学研究科 特別支援教育専修特別支援学校教育専攻 大学院生
松原 利恵
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