事業所名

九州日本信販株式会社

所在地

福岡県北九州市

事業内容

クレジット業

従業員数

147名

うち障害者数

5名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	1	審査業務
肢体不自由	3	情報入力
内部障害	1	情報入力
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯
2. 取り組みの内容
3. 取り組みの効果
4. 今後の課題、展望

事業所外観

1. 事業所の概要・障害者雇用の経緯

（1）概要

　1957年に九州で初めての総合信販会社として設立し、地域経済の発展に貢献してきた。
2005年に八幡東区に顧客情報の管理やコールセンター機能を集約したカスタマーズセンターとして情報センターを開設した。小倉と福岡市内に分散していたオフィスを統合して、よりいっそう業務の効率化をはかろうという目的であったが、情報センターの開設は、さらに障害のある人を積極的に雇用し、地域社会に貢献するという企業理念を実現する機会となった。

（2）障害者雇用の経緯

　経営者は、以前から障害のある子どもたちへのボランティア活動に活発にかかわってきた。これまでも、カード会員の利用金額の一部を北九州障害者スポーツ協会などに寄付する「SFカード」の発行や、日本で初めて障害のある人のためにインターネット電子決算カードを発行するなど、信販会社としてさまざまな社会貢献活動を行ってきたが、移転を機に、障害者雇用を積極的に推進していくことになった。

2. 取り組みの内容

（1）施設・設備面

　障害者雇用を進めるにあたっては、環境づくりが重要になる。中心部の賃貸ビルでは、「段差がない、手すりがある、車いす用トイレがある」などの条件が整う物件を探すのが大変で、やっと見つかったと思っても、実際にはトイレのドアが狭くて車いすが入れないなど、希望どおりのオフィスにはなかなか出会えない。また、駐車場の確保も難しい。そのような現実の中で、理念はあっても、実際に障害のある人を雇用することが難しいという状況にあった。
そこで、自社ビルを建設して、ユニバーサルデザインのオフィスをつくることになった。
ユニバーサルデザインとは、「すべての人のためのデザイン」を意味し、年齢や障害の有無にかかわらず、できるだけ多くの人が利用可能であるようにデザインすることをいう。
八幡駅北口のメディアパークに土地を取得し、プロジェクトチームが結成された。新しいオフィスは、ハートビル法の基準に適合するように計画され、人にやさしいオフィスが誕生した。なお、このオフィスは、第19回日経ニューオフィス賞で九州ニューオフィス推進賞（九州経済産業局長賞）を受賞している。

　3階建ての建物はどのフロアも廊下の幅が広い。ハートビル法が定める1．8mを上回る広さである。職場内も、車いすですれ違うことができるように充分なスペースがとってある。特にスペースをあけておきたい箇所は、床にマークがあり、そこには物を置かないように注意がうながされている。
廊下や階段には手すりがあり、階段の手すりは身長に合わせて、低い位置と少し高い位置につけてある。ドアは全部引き戸で、少しの力で簡単に開くようになっている。床はすべりにくい素材となっている。

車いす対応の通路

障害者対応のドア、机、椅子

　職場内も無駄な動きがないように工夫されており、ロッカールームは各部署内にある。ロッカーは低い位置に置かれ、車いすの人にも使いやすいようになっている。
車いすで安全に避難できるスロープもある。スロープは車道までつながっていて、安全に移動できるように配慮されている。エレベーターは車いすが楽に出入りできるような広さを確保している。

屋外スロープ

車いす対応のエレベーター

　車いす用のトイレも広く快適である。
休憩室の自動販売機は、コインを入れる位置が低いところにあり、車いすの人でも充分に使用できる。

助成金活用によりトイレ改善

障害者用自動販売機

　車いすの人はもちろん車通勤だが、障害のある人の体調を考慮した通勤体制がとられており、駐車場はオフィス敷地内に用意されている。
このようにいたるところに気配りがあり、障害者にやさしく配慮した環境となっている。
実際に設備を利用する社員も「不便に思うことはない」という。また障害のない社員にも使いやすい設備は喜ばれている。
なお、障害者用トイレの設置などで助成金制度を活用した。

（2）面接・相談

　障害のある人を採用するにあたっては、本人の意欲や、目的意識を確認し、業務に対応できるかどうかに注意して面接を行っている。人事担当者や上司は、彼らに対し気配りを怠らない。健常者にはわからないこともある。本人が言えず、困っているかもしれない。そのまま悩みを抱えてしまわないように、困ったことがあればすぐに相談できるように、言いたいことが言えるような職場作りを心がけている。日ごろの声かけや、定期的なヒアリングで配慮し、必要があれば家庭とも連絡を取り、対応するようにしている。

3. 取り組みの効果

　このように新しいオフィスを作り、障害者雇用を積極的に進めたい方針のもと、様々な障害のある人を雇用するようになった。
現在、147名の従業員と派遣社員52名が働いている。そのうち5名が障害があるが、すべて正社員である。1日8時間。正確さが要求される情報入力の仕事を中心に、それぞれが自分の持ち場で力を発揮している。
もちろん、建物や設備だけを完備すればよいということではない。そこで働く「人」が、彼らを仕事の仲間としてどのように受け入れていくかである。社員全員の協力があってこそ、働きやすい職場となる。障害のある人も、働きがいを持って仕事に取り組めるように、社員一人一人が理解を示すことが大切である。
その結果、彼らばかりではなく社員全員が働きやすい職場となり、人に優しい職場となっている。
5名の社員もその障害はさまざま。同じ部署の社員たちは、障害があるということを特に意識はしない。働く仲間として自然にコミュニケーションが取れている。障害の有無には関係なく、仕事仲間として支え合うという職場の雰囲気が作られている。

障害者の勤務状況

4. 今後の課題、展望

　力のある社員にはその力を充分に発揮してほしいと考えている。現在、障害のある社員が担当する業務内容としては、顧客の情報を入力する仕事が中心だが、将来は、もっと他の部署でも仕事ができるように、自分の可能性を広げられるようになってほしいと願っている。そのためには、知識の習得も必要だ。それは他の社員と分け隔てはない。
今後の課題としては、担当業務を拡大し、さらに仕事へのやりがい、生きがいを見い出せる職場作りをしていくことである。それはすべての社員に共通する。障害者だからとか、健常者だからということではなく、同じフィールドで能力を発揮し企業を発展させていくことが課題である。
今後も、募集先の拡大、面談の充実、適性の判断及び見極めを徹底し、雇用後3ヵ月は定期的な面談を実施していきたいと考えている。
障害のある人も、その力を発揮できる職場作りをめざし、社会貢献につなげていきたいという経営者の理念が強く、また、社員もそのために力を惜しまないという雰囲気がある当社の障害者雇用への取り組みが今後とも期待される。

執筆者　：　社会保険労務士（ファイナンシャルプランナー）　　菅野　美和子