働き易い職場環境をつくり、雇用の安定に努める
- 事業所名
- 財団法人弘潤会
- 所在地
- 宮崎県宮崎市
- 事業内容
- 病院、老健施設、リネン洗濯
- 従業員数
- 662名
- うち障害者数
- 22名
障害 人数 従事業務 視覚障害 0 聴覚障害 2 シーツロール、プレス 肢体不自由 2 乾燥、縫製 内部障害 0 知的障害 18 シーツロール、オムツたたみ、病衣ロール、感想 精神障害 0 - 目次

1.事業所の概要
当法人は、故野崎正初代会長が、昭和37年11月宮崎市内に社会的弱者のために働く場を創設するという理念のもとに、高年齢者・母子家庭者・知的障害者等が従業員の半数以上を占める、財団法人弘潤会「友愛の里」として設立し、病院寝具貸付業を開始、リネン洗濯工場を設立したのが始まりである。
「友愛の里」設立後も、野崎会長は医療及び福祉事業によって社会的弱者や生活困窮者を救済することはできないものかと思考の末、昭和41年宮崎市に設立し、昭和50年に当法人に吸収合併した医療法人白十字会梅ヶ丘病院が、現在の当法人の主要事業所である野崎病院である。
その後も、会長は新規事業を精力的に展開、昭和59年逝去(享年72歳)後は、娘の野崎藤子医師・理事長が引き継ぎ、医療の質の向上、職場環境の充実に取り組み積極的に事業を展開している。
当法人の事業所別の内訳は下表のとおり。 (単位:人)
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うち障害者数 22人
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( )は、重度障害者数 実雇用率 7.41%
「友愛の里」の事業活動は、北は延岡市から南の鹿児島県志布志市まで広範囲にわたっている。取り扱うベッド数は3,500床で、得意先の中には毎日納品回収にいくところもあるが、今まで育てていただいたという感謝の気持ちで、経営面を超越して各地域を担当のドライバーが忙しく走り回っている。
「友愛の里」では、障害者、高年齢者、一般職員それぞれがしっかりと仕事に取り組み、協力して下記の標語を実践している。
職場環境作りの誓い
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2.障害者雇用の経緯
障害者雇用については、野崎正初代会長の理念である社会的弱者とりわけ障害者・高齢者・母子家庭等の救済を実践したことである。社会的弱者のために働く場を創設することは、生活の糧を得る手段を提供する事であり、個人を支えていく基本である。とりわけ障害のある人の雇用については、いつの時代でも厳しい状況の中、昭和37年から働く場を提供していることに大変な努力の跡が見られる。今日の当法人の障害者多数雇用は、「友愛の里」による障害者雇用の経緯・背景の原点であり、中心となっている。
障害者については、特別支援学校、福祉施設、障害者職業センター等からの職場実習を経て採用している。特に知的障害者の雇用については、採用後の職場定着は業務遂行援助者、障害者職業生活相談員がきめ細かな指導を行うとともに、紹介を受けたカウンセラーや先生と状況を話し合ったり、家族会の開催により職場定着を図っている。
なお、22人の障害者については、自宅通勤が14人(バス12人、自転車2人)、グループホームからの通勤8人(近郷の3施設から自転車7人、バス1人)となっている。
バス通勤の場合は定期券(バスカ)を使用するのでトラブルも無く安心して通勤している。
低成長時代の雇用環境は益々厳しさを増す中で、「友愛の里」は大きく飛躍はできないが、これからも機械化を進め、障害者、高年齢者の安定した雇用確保と安全で衛生的な職場環境の中で就業できるよう、小規模ながら業界のモデルとなるような職場を目指すべく決意を新たにしている。

3.障害者の従事業務、職場配置、労働条件
(1)作業配置
障害者は、白衣洗濯機を除く全部署に配置している。特に知的障害者の場合、健常者を十分補完する作業特性を有しているので、シーツロール・衣類・オムツたたみ等の比較的単純な反復作業の部署に配置している。
なお、障害者が作業している部署には、必ず業務遂行援助者をはじめとして、健常者が不測の事故防止という安全配慮義務を履行している。
表 : 障害者の職場配置 (単位:人)
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(2)労働条件
①就業時間
8:30~17:15 途中60分間の休憩
②休日
土曜日・日曜日
③社会保険・労働保険加入の有無
社会保険・労働保険ともに加入
④定年・再雇用制度
60歳・63歳までの雇用継続
⑤給与
最低賃金を基準として格付けしている
4.取り組みの内容
(1)工場長による指導
障害者の場合、疾病を有する場合や障害が重複している場合もあるので、直接の現場責任者である工場長が、様子を見ながら指導に当たっている。特に知的障害者の場合、勤務成績・協調性が季節的に変化することがあるので、その点を配慮している。
(2)機械操作に対する注意喚起
作業機械によってはタッチパネル操作もあるが、順序を誤ると重大な事故に繋がることもあるので、操作に誤りがあった場合は本人のみでなく他の従業員に対しても注意を喚起する意味で厳しく注意を行っている。
(3)褒めることにより就労意欲の向上を図る
障害者の作業を観察していると、作業に入る前の準備段取りを無駄なく進めることに対しては健常者よりも優れている場合がある。いわゆる「慣れ」であるが、障害者、特に知的障害者の場合、そのあたりの反応は敏感なものがあるので、そのような行為があった場合は、「褒める」ことも必要である。褒めることは本人をやる気にさせ、就労意欲向上に繋がるものであると工場長は話す。
(4)職場環境の配慮
「友愛の里」は、社会的弱者に対する良好な職場環境を整備するため、施設設備に関する配慮を随所に施している。特にリネン洗濯工場としての職場環境については、「熱さ」と「衛生」を強調している。
「熱さ」については、工場内の天井を高くし、職種ごとのスペースを広くとって機械の蒸気熱をできるだけ逃がすよう機械を配置し、外気が流入しやすいよう窓も多くとってある。
「衛生」に関しては、シャワー室を設け、手洗い場を作業場近くに設置し、洗濯前の物を扱った後の手洗い、作業場周りの清掃の励行など、清潔に対する意識の高揚を図っている。
(5)支援体制
①教育訓練・新人訓練
専任の指導員を配置し個別指導を行っている
②障害者職業生活相談員
所長・工場長
③職場定着推進チーム
所長・障害者職業生活相談員・現場指導員・障害者代表から構成
④人間関係管理
朝の挨拶励行
⑤助成金等
業務遂行援助者の配置助成金・調整金
⑥福利厚生・健康管理
年1回隣県旅行・忘年会・野崎東病院で健康診断を実施
⑦総合研修・研修の内容等
OJT研修・日常業務の基礎研修を行い、更に事故防止の徹底研修を行っている
5.さいごに
リネン洗濯工場は、季節に関わりなく受注があり、しかも顧客からのクレームに注意を払う義務がある。特に「職場環境作りの誓い」において、「私は日々健康管理に努め、病気で仕事を休まないよう心掛けます。」を実行することにより、スケジュール通りの作業を順調に進行して行く。
一方健康管理面では、近隣にグループの野崎東病院で栄養管理された昼食が従業員全員に提供される。従業員が一同に会し食事をすることで、相互のコミュニケーションの場にもなっていることを所長は話し、活気のある事業所であることがうかがわれる。

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