事業所名

社会福祉法人久寿会特別養護老人ホームハーモニー

所在地

栃木県鹿沼市

事業内容

高齢者複合施設

従業員数

167名

うち障害者数

2名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	0
肢体不自由	0
内部障害	0
知的障害	2	洗濯選別・清掃
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯・背景
3. 取り組みの内容
4. まとめ

事業所外観（正面玄関）

1. 事業所の概要

社会福祉法人久寿会は、高齢者施設を鹿沼市南部3地区で複合施設の運営をしている。特別養護老人ホームハーモニーは、平成6年5月に開設された。

施設サービス、在宅サービスを柱に村井町、樅山町、楡木町それぞれに地域に密着したサービスの提供をしている。隣接の村井保育園は昭和53年4月に開設し、29年の歴史を持つ保育園である。

≪介護方針≫

1. その人らしく楽しく、ご満足いただけるよう、ケアプランに基づいて、個別ケア、自立支援をすすめます。

2. 毎日毎日の生活行為が心身の良いリハビリとなるよう、残存機能を生かし、座って食事、排泄、入浴をすることを原則に、オムツはずしを起点とした生活リハビリの考え方に基づいた介護を行います。

3. 小規模で、ふるまいやすい生活の場を作り、家庭的な楽しい暮らしが創れるようユニットケアをすすめます。

4. 地域に出かけて生活が完結するよう、お一人おひとりの願いやニーズを大切に、個別ケア、自立支援をすすめます。

障害者雇用の理念としては、介護方針の中にあるように「その人らしく楽しく」働く場が提供できればと考えている。

2. 障害者雇用の経緯・背景

知的障害・自閉症傾向（男性20歳）の場合は彼が養護学校高等部2年生の時、職場体験実習で2週間、特別養護老人ホームに通った。養護学校からの実習受け入れというのは初めてのことだったので、多少の不安はあったが、素直で純粋な彼と接して不安はなくなった。彼は夏休みの期間中ホームヘルパー3級の資格を取得した。職場体験実習は2年から3年と受け入れを実施した。その時、養護学校高等部の先生方の熱心さと就労を目指す生徒たちがいるという現実を知った。平成17年4月、彼を雇用した。

平成19年5月、知的障害（男性26歳）をパート雇用した。ホームヘルパー2級を持つ彼は、デイサービスで実習を2か月行った。人とのコミュニケーションが苦手で気持ちが落ち込むと家に引きこもってしまうため、追い込むような時間体制ではなくパート雇用に変え、時間の余裕と仕事の確認をした。1日2時間勤務という体制で少しずつ仕事に慣れることを優先した。

平成19年2月、統合失調症（男性40代）をパート雇用した。対人関係による疲れが多く出始めたので、フルタイムの1日から半日へと時間調整も試みたが、残念なことに6月に退職した。彼から学ばせてもらった多くのことを今後の障害者雇用へ向けて実践していきたい。

3. 取り組みの内容

（1）「自閉症の方との関わり方を知りたい」現場からの声

平成17年5月、知的障害の彼を雇用するにあたり職員から「自閉症」の勉強会をしてほしいとの要望があがった。実習現場で関わった職員はわかっていても、職員全体で「自閉症」の認知が必要と感じ、彼の卒業した学校から先生に来ていただき「自閉症」についての講義を受け、最後に「愛情を持って接してほしい」との言葉を聞き、私たちの不安は解消された。

彼の仕事はバックヤードで利用者の方の洗濯、洗濯物たたみ、出来上がった洗濯物を利用者の方へ届けることだ。同じような洗濯物を選別することは、とても大変な作業であるので、デジタルカメラを使用して写真でのマニュアル作りを実施した。複雑な指示もできるだけ簡単にするようにした。2年たった現在、担当者が休みでも一人で仕事がこなせるようになった。自宅から自転車で通勤している彼は休みがなく、休憩は自分の時間として割り切ることができるし、職員旅行ではレクリエーション委員に自ら申し出て組織の一員としての自覚がでてきている。職員は仕事だけはなく、チームワークあっての職場なので人間関係作り、絆作りが重要である。

（2）やれる範囲で「その人らしさ」を確かめる

平成19年5月から勤務の彼は、職場に歩いて通える範囲に住んでいる。近距離から通えるということも障害者にとっては利点となる。

彼は、仕事の指示はきちんとこなせるが、多くの指示、突発的な対応は難しいものがある。現在の仕事は、鹿沼市委託事業みなみふれあいセンター内の清掃とデイサービスセンター内の清掃を主に行っている。時間帯も考慮して利用者の方が帰られた後にした。会話や仕事に慣れてもらうことを優先して、短時間勤務ではあるが休むこともなく順調に働いている。今後の目標として、仕事量を増やしていく方向だが家族の方の協力も必要とである。

当法人では複数の事業所があるので、その人にあった仕事をみつけることができれば雇用の可能性がでてくる。様々なタイプの人が定着してほしい、障害者の方とともに働くことで職員の倫理性が高まることになる。

洗濯仕分作業をするMさん

施設長及び職員の作業内容打合風景

利用者と作業風景

4. まとめ

今回調査で感じたことは、特別養護老人ホーム内は緑がいっぱい、もちろん施設の外も緑にあふれている。

施設長は、施設の隣にある畑だった土地を借り、保育園の子供たちの遊び場として開放し「思いきり土と遊んでほしい、自然の中で遊ぶ、土を掘り汗をかいてどろんこになる、そこからいろいろ学ぶんですね。思いきり遊べばお腹もすくし、よく眠れます。本来の子供の姿ですよね」と話す。施設内の庭には午後になると、学童保育の子供たちが遊びに来てはずんだ声が響き渡り、元気に動きまわる様子をお年寄りの方々が静かに見守っている。

関口施設長は「とちぎいやしの園芸研究会」という園芸療法の考えを取り入れながら、いやしの園芸を行う園芸ボランティアの事務局を担っている。高齢者施設や障害者施設に野菜や花作りの園芸ボランティアを派遣し、園芸の前後の準備や見守り、サポート等が中心の活動をしている。

ホームヘルプ養成講習会（知的障害対象）の現場実習先として多くの受講生を受けいれ、地元の中学生の体験実習先としても生徒たちを受け入れている。知的障害の受講生と利用者の方がペアになり、園芸療法士の指導を受け共に寄せ植えをする。受講生の世話をお年寄りがして、互いに笑顔で作業する姿はとても微笑ましい感じだ。

自然体を受け入れ、支援を受ける側も支援者も「その人らしさ」を大切にする姿勢におおいに感銘を受けた。

執筆者  ：  社会福祉法人せせらぎ会  相談支援専門員  渡辺  みゆき