事業所名

株式会社アイ電子工業

所在地

栃木県大田原市

事業内容

電気機械器具製造業

従業員数

196名

うち障害者数

5名

 

障害	人数	従事業務
視覚障害	0
聴覚障害	1	電子機器製造工
肢体不自由	4	電子機器製造工
内部障害	0
知的障害	0
精神障害	0

目次

1. 事業所の概要
2. 障害者雇用の経緯・背景・内容
3. さいごに

事業所外観（正面玄関）

事業所外観（全景）

1. 事業所の概要

〔社是〕  信頼・感謝・努力

・社員や仲間を「信頼」し、物造りを進める。そして一流の商品や技術を顧客に提供する。
・顧客の「信頼」を得れば、必ず適正な利潤が生まれる。
・これが基本で、仕事を支えてくれる家族・協力工場・地域に「感謝」をし、自ら幸せをかみしめる。
・その「感謝」の心を表すためには、自らが「努力」をしなければならぬ。
・即ち、ベースにはたゆまぬ「努力」が必要なのである。
・感謝の心があれば、慢心は生まれる余地がない。「努力」が他人を動かし、「信頼」を生む。

これがアイ電子工業のサイクルである。

〔社訓〕

・成長せよ！・・・企業も従業員も成長し続ける集団であれ。
・フェアであれ！・・・フェアな精神を以って社会に貢献せよ。
・足下に目をこらせ！・・今の今、限られた環境条件をいち早く判断し処置し、最善を尽くせ。
・視野を広めよ！・・・グローバルな理想像を描き、布石し、実現を目指せ。

上記のような理念の下に、障害を持つ人、高齢者等が、それぞれの条件に合わせた労働が出来るような職場作りを目指している。

2. 障害者雇用の経緯・背景・内容

私たちは企業人であるので利益の追求が大原則としてある。そのためには全ての従業員が効率よく労働をしてくれるのが一番なのである。

その面から言えば、障害者・高齢者等を契約社員としてでも雇用することは、単に〔雇用〕という以上に周りの負担にもなるので“ボランティア”ではない“企業”としてはマイナス要素といえる。

しかし、昨今の社会状況の中で仕事に就けない人が増加する一方、「雇用機会の均等」という企業の社会貢献的という面ではまだまだ企業が変わって行かなければならない。障害者雇用という点では1.8%の雇用率が義務づけられている。現在は2.5%の雇用率であるがそもそも障害者雇用ということを考えるようになったのは、特にそのことを意識してではない。

普段一緒に働いている仲間でも自分でも将来にわたって安心して働き、この地域で暮らして行ける職場作りをどうやって保障して行くか・・・と考えていたときに、「待てよ！もし我々が交通事故にあったり何かの災難で身体の自由を失うことがあれば、それって中途障害者になるということではないのか？障害を持ってもここで働いて行けるような職場作りを考えて行かねばいけないのではないか？」と思ったのである。つまり身の回りに障害を持つ人が一緒に働いて居られる職場、障害者を普通の存在として受け入れる職場が求められていると考えた。

“障害者”というと、とかく先天性の機能不全を考えがちだが、私もあなたも明日には障害者の仲間入りをする可能性は常にあるのだということである。

そのためには、企業の側が〔8時間フルタイム〕という雇用原則を考え直して（もともとはそんな決まりはどこにもないのですから・・・）、「通院があるので、週に4日ぐらいなら・・」「一日はきついので4時間ぐらい・・」あるいは「不安なので2時間ぐらいから・・・」等、採用段階でのマッチングをいろいろなパターンで設定するような柔軟性が必要であろう。企業が柔軟な姿勢に変わることによって、いろいろな条件を抱えながらも働きたい人たちへの扉が大きく開かれることになり、企業の社会貢献も可能になるのである。一方で、困難を抱えている人たちの姿勢も変わらなければならない。特に障害者の人たちには自らの障害を、隠そうとする傾向が強い。「自分は障害を持っているので、これが出来ない！」という考えが先行していて、「障害はあるけど、これなら出来る！」という方向に考えようとしてくれない。

これは大きなマイナス要因である。この背景には親が自分の子に対してどのような見方をしているのか、といった要素が大きく作用していると思うが、先日こんな例があった。養護学校からのインターンを受け入れたときのこと。右手に障害を持った子が来て、製品の点検作業をやってもらったが、初めのうちは右手を机の下に隠して左手だけで作業をしていた。やはり作業が遅々として進まない。「なぜ右手を使わないの？みんな障害をわかっているんだから。だから、ちゃんと両手をテーブルに載せてご覧！」といって両手を上げさせたところ、右手も使って自分なりに試しながら始めたのである。驚くほどペースが上がった。まさに倍々になっていったのだ。

後日、学校の先生から電話があり「全く別人のようになりました！自分の意見をハキハキ言うようになりましたし、親に言われても関心を示さなかった勉強に対しても『進学したい』と言うようになりました。」とのことであった。あの経験で自分に自信が持てたのだろう。意見をハキハキ言えるということはそういうことであろう。

工場内風景

作業風景

3. さいごに

企業が障害者を採用するときには、誰でもと言うわけにはいかない。一般の人と一緒である。「おやっ！」と目をひくような記述が履歴書にあるかないかはポイントである。県でやっている職能検定等を受けてみるとか、何かやれることを積極的に見つけさせることも親、教員の大事な役割である。

企業の柔軟性を持った勤務条件と、障害者、高齢者等の積極的な自己アピールがかみ合った時に将来へ向けての明るい展望が見える。

執筆者  ：  特定非営利活動法人とちぎボランティアネットワーク
ワーキングスクール事業部長  中野  謙作